フューチャー技術ブログ

自作40%キーボードへの入門〜キーボードも断捨離の時代へ〜

春の入門連載の16記事目です。

はじめに

こんにちは。180度開脚に憧れてストレッチを続けている、HealthCare Innovation Group(HIG)所属の山本です。

以前から自作キーボード、分割キーボード、XX%キーボードといった単語には興味を惹かれていたのですが、電子工作初心者の自分としてはなかなか敷居を高く感じていました。

この度、自作キーボードに初めて挑戦し、40%分割キーボードを使いこなすに至ったので、その動機や経緯を含め、魅力をお伝えしていきたいです。

※自作キーボードについては既存記事も面白いものが多いのでぜひ御覧ください!

https://future-architect.github.io/tags/自作キーボード/

作成したもの

今回私が作成したキーボードは、以下のようなものです。

キーキャップに無刻印のものを使用しているためちょっと分かりづらいですが、通常のキーボードよりもキー数が少ないです。

ファンクションキーや数字キーもないので、かなりスッキリした見た目になる反面、初めて見る方にはどう入力するのかと困惑されるのではないでしょうか?

PXL_20240501_204920074.MP.jpg

製品としては、foostanさんが作成されているCorne Cherryシリーズのものを使わせていただきました。

日本で有数の自作キーボードの店舗&オンラインショップである、遊舎工房さんのサイトでもいくつかシリーズが販売されています。
https://shop.yushakobo.jp/search?type=product&options%5Bprefix%5D=last&options%5Bunavailable_products%5D=last&q=Corne+Cherry

作成までの経緯

このセクションでは、作成に至るまでの動機と経緯をポエミーに書きます。

動機編

はじめに、今回挑戦した動機について軽く触れておきます。

今までの多くをリモートワークで過ごしてきたわけですが、以下のような思いをモヤモヤと抱えていました。

  1. デスクに向かいすぎて、首肩こりが強くなってきた
  2. せっかくリモートワークをしているから、至高のデスク環境を極めたい
  3. 一般的なキーボードでタッチタイピング程度であればできるが、より高みを目指せるのではないか…?

1についての対応としては、「分割キーボード」を導入することがよいという一説があります。通常のキーボードではどうしても肩幅より小さい位置へ手を置くことになりますが、分割されていることにより各々の肩幅や手の位置似合わせて配置できるという利点ですね。

2, 3については、より高みを目指したいという心の奥底のコダワリ心ですね。つまり私的には自己満足と浪漫の世界です。そんな折、「40%キーボード」の魅力を先人が書いた記事を見かけました。いわく、ホームポジションからほとんど手を動かさずにすむためキー入力が効率的になるということです。これに強い魅力を感じました。

これらの思いから、自作40%キーボードの世界には強い興味を持っていました。

見学編

とはいえ、自作キーボードの作成経験もなく、電子工作の経験もあまりない私には右も左もわからない状態でした。

そのため、実際に国内でも有数の自作キーボードショップである、遊舎工房さんの実店舗(秋葉原にある)に行ってみました。

https://yushakobo.jp/shopinfo/

こちらの店舗では、様々な種類の自作キーボードが店内に展示されており、実際に触ることができます。キー入力の感触や外観、他にも形状など己のフィーリングを確かめることができるので、気分は伝説の聖剣を抜きにきた村人Aの気持ちになれます。

店員さんも親切で、各種部品やキットの販売なども行っているため、同じように入門される方は一度行ってみることをおすすめします。

作成編

残念なお知らせとして、このブログ記事の執筆時点ではすでにキーボードは完成してしまいました。(記録など取ること忘れてました。。)

そのため、組み立てやはんだ付けについては他の方の記事や動画などを参照ください。

日本で販売されている組み立てタイプの自作キーボード(自分ではんだ付けから行うもの)の多くは、ビルドガイドがGithub上で公開されていたりします。

(例:今回扱ったfoostanさんのビルドガイド)

自作キーボードに挑戦される方は、これらの事前情報があるタイプのキーボードかも確認されると良いかもしれません。

また、はんだ付けに不安がある方へはキーボードの組立サービスであったり、そもそもはんだ付けがされた状態で発売されている製品などもあるので挑まない選択肢もあるため安心できます。
(私はYoutubeのはんだ付け動画を繰り返しみつづけました)

使いこなすまでの試行錯誤

ここまでの経緯で、なんとか動作する自作40%キーボードについては作成できました。

しかしなんと、製作したから終わりではなく、まだまだ拘れるポイントがあるので紹介します。
(これがキーボード沼と呼ばれる理由かと思ってます。時間と金を無限に溶かすことができそうです)

1. キースイッチの試行錯誤

キーボードの打鍵感は非常に個人的なもので、それを自由にカスタマイズできるのが自作キーボードの強みの一つかと思っています。

キースイッチには、赤軸、青軸、茶軸、スピードシルバー軸などなどさまざまな種類があり、それぞれによって打鍵したときの感触や打鍵音が変わってきます。HHKBやKeychronなどを購入する際にも比較するような情報ですね。

今回のキーボードでは、軽めの打鍵感と感触の好みからスピードシルバー軸のものを購入しました。

2. キーキャップの試行錯誤

キーキャップの素材やデザインも打鍵感に意外なほど大きな影響を与えてきます。

このキーキャップの形状についてはProfile(プロファイル)と呼ばれており、高さやくぼみなどの形状が異なってきます。市販のメカニカルキーボードの多くはOEM Profileと呼ばれるものに該当するそうです。

image.png

(https://www.keycaps.info で作成した画像を引用)

上記の画像で見比べて見ると、多様性があることがわかるのではないでしょうか?

試行錯誤の末、私の個人的な好みとしては高めのProfileであるSA Profileが打ちやすいことがわかりました。

3. キーボード角度の試行錯誤

キーボードの水平方向の傾きもキー入力のしやすさや肩こりの解消に大きな影響を与えてきます。自分の手を前水平に伸ばしてみると感じることができますが、人間の手首は微妙に外向きに回転した状態が自然な除隊となることが多いです。

そのため、机と平行なフラットなキーボードで長時間入力することで、手首や肘への疲労が蓄積していまいます。

対策として、キーボードの角度を変える、「テンティング」という単語で呼ばれる試行錯誤があります。

結論として、水平方向ではこのくらいの角度が自分にはフィットしました。(人によっては60度くらいの角度を付けている人も見かけますね)

PXL_20240501_222151250.MP_(1).jpg

4. キーマップの試行錯誤

こちらは40%キーボードや60%キーボード特有の話となってきますが、キーマップの試行錯誤についても探求の余地があります。

そもそも、数字キーボードや一部記号キーがない40%キーボードでは、これらのキーをどうやって入力するのでしょうか?

ここで、「レイヤー」という概念が出てきます。通常のキーボードでもFnキーを押している間、他のキー入力の効果が変わるといったことがあると思います。これを自由にカスタマイズできるのが特徴です。

下画像での例としては、「G」キーを単体で入力したときにはGがそのまま入力され、右下の青い上矢印キー+「G」キーを入力したときには6が入力される、といった挙動としています。

PXL_20240501_204920074.MP.jpg

自作キーボードの多くは、以下のRemapのサイト上などでキー配置を自由に組み替えることができます。

https://remap-keys.app/configure

私のキーマップ例を示しますが、以下のようになっています。自分の入力しやすいようにカスタマイズできるのはもちろん、レイヤーキーとの組み合わせで入力できるキー数が3倍となっています。

40%キーボードでありながら、過不足なく、ホームポジションからほとんど手を動かさずに入力できるのは素晴らしい利点です。

image.png

これら以外にも、3Dプリンタでの筐体作成、バックライト、トラックボールの組み込みなどまだまだこだわれる要素はたくさんあります。

あまりに極めすぎると2度と通常のキーボードで入力できなくなる懸念はありますが、楽しみが多いのは良いことですね。

まとめ

これまでの記事で、自作40%キーボードに挑戦する道のり、そのさきの沼の深さの一端をご紹介しました。

肩こりを動機として挑んだ自作40%キーボードですが、試行錯誤の末かなり満足できる環境とできたと個人的には感じています。

ひとつひとつ自分の体の特徴やクセを見極め、相棒となる道具をアップデートして成長していける経験は人生でもそう多くないものと考えています。

個人的には、そのような機会に大人になってから挑戦できるという意味でも良い経験となりました。

肩こりに悩む方、キーボード沼にハマってみたい方、あるいは自分の相棒となるキーボードを探したい方、それ以外の全ての方にも、自作キーボードを探して・作って・試行錯誤して、といった経験はとても楽しいものですのでぜひ一度はやってみることをオススメしたいです。思ったより敷居は高くなかったです。