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OpenAPI Specification 3.0.3規約

フューチャー株式会社

本コーディング規約は、世の中のシステム開発プロジェクトのために無償で提供致します。
ただし、掲載内容および利用に際して発生した問題、それに伴う損害については、フューチャー株式会社は一切の責務を負わないものとします。
また、掲載している情報は予告なく変更することがございますので、あらかじめご了承下さい。

はじめに

本ドキュメントは OpenAPI Specification 3.0.3に則った API ドキュメントを記述する際のコーディング規約をまとめている。 旧バージョンであるOpenAPI Specification 2.0 の規約も存在するため、v2 を使用している場合はそちらを参照されたい。

本規約は前提条件に基づいて作成されており、ToC 向けの LSUDs(Large Set of Unknown Developers)向けの Web API には適合しない場合もあるのでご留意いただきたい。 Web API の設計自体はこの規約の範囲外であるが、API 設計標準 にステータスコード等の標準を記載しているため、必要に応じて参考にされたい。

有志で作成したドキュメントである

  • フューチャーアーキテクトには多様なプロジェクトが存在し、それぞれの状況に合わせた開発手法が採用されている。本規約はフューチャーアーキテクトの全ての部署/プロジェクトで利用されているわけではなく、有志が観点を持ち寄って新たに整理したものである。相容れない部分があればその領域を書き換えて利用することを想定している

ファイルフォーマット

ファイルフォーマット規約に従う。

OpenAPI ドキュメントの構成要素

OpenAPI ドキュメントを構成する要素はオブジェクトと呼ばれ、ルートオブジェクトは以下の要素で構成される。

各種規約を理解する上で、これらの要素を大まかに把握しておくことが重要である。

各オブジェクトの詳細については公式ドキュメントを参照されたい。

フィールド名必須説明
openapiOpenAPI ドキュメントが使用する OpenAPI 仕様のバージョン番号
infoAPI に関するメタデータ
serversAPI サーバへの接続情報
pathsAPI の利用可能なパスと操作方法
components複数の API における共通の定義
securityAPI 全体で利用可能なセキュリティ(認証)機構
tags各種 API をグルーピングするためのタグ
externalDocs追加の外部ドキュメント

要素規約

先述した OpenAPI ドキュメントを構成する要素別に具体的なコーディング規約を記載する。

openapi

OpenAPI ドキュメントが使用する OpenAPI 仕様のセマンティックバージョン番号を記載する。

本規約はバージョン3.0.3を対象としているため、3.0.3とする。

良い例:

yaml
openapi: 3.0.3

悪い例:

yaml
openapi: 3.0

info

infoオブジェクトには Web API に関するメタデータを記載する。

title, description, version を必須項目とする。

フィールド名必須記載内容
titleWeb API の総称
descriptionWeb API の簡単な説明
versionOpenAPI ドキュメントのバージョン
termsOfService利用規約の URL
contact連絡先情報
licenseライセンス情報

info > title

Web API の総称を記載する。

システム名やサービス名 + API のような命名を推奨する。

良い例:

yaml
info:
  title: X System API

info > description

Web API が提供する機能の概要・想定する利用者やユースケース・制約などを記載する。

info > version

この API 仕様のドキュメントのバージョンを記載する。

アプリケーションのバージョン(git tag やリリースで管理するようなバージョン)とは別である。

  • major.minor 形式を推奨する

    • 0.1 固定で開発を進め、サービスのリリース時に 1.0 とし、その後の項目やオプション、パスの追加ごとにマイナーバージョンをインクリメントしていく

    良い例:

    yaml
    info:
      version: 1.0
  • 他チームへの API ドキュメントの頻繁な共有が必要な場合は YYYY.MM.DD の日付形式も許容する

    良い例:

    yaml
    info:
      version: 2023.03.26

servers

Web API を提供するサーバの情報を記載する。

  • url, description を必須項目とする
  • ステージ(local, develop, staging など)が複数ある場合は各ステージ分の情報を記載する。
  • SSKDs 向けの Web API 開発においては本番環境の URL を不用意に公開したくないケースが多く、記載は避けるべきである

良い例:

yaml
servers:
  - url: http://localhost:8001/
    description: Localhost Server
  - url: https://dev.api.example.com/v1
    description: Development Server
  - url: https://staging.api.example.com/v1
    description: Staging Server

悪い例:

yaml
servers:
  - url: https://prod.api.example.com/v1
    description: Production Server

paths

API の利用可能なエンドポイントと操作方法を記載する。

  • API ごとに機能 ID を定義している場合、paths 配下の各パスは機能 ID の昇順に定義する

    良い例:

    yaml
    paths:
      /users:
        get:
          summary: API-101 ユーザ一覧取得
      /products:
        get:
          summary: API-201 商品一覧取得

    悪い例:

    yaml
    paths:
      /products:
        get:
          summary: API-201 商品一覧取得
      /users:
        get:
          summary: API-101 ユーザ一覧取得
  • URL パスが複数の単語からなる場合、ケバブケースで表現する

    良い例:

    yaml
    paths:
      /product-owners:
        get: ...

    悪い例:

    yaml
    paths:
      /productOwners:
        get: ...
  • HTTP メソッドは GET, POST, PUT, PATCH, DELETE の順に定義する

    良い例:

    yaml
    paths:
      /products:
        get: ...
        post: ...

    悪い例:

    yaml
    paths:
      /products:
        post: ...
        get: ...
  • HTTP メソッドの配下に定義されるオペレーションオブジェクトは、下記の項目を必須項目とする

フィールド名必須記載内容
tagsAPI の論理的なグループ
summaryAPI の操作概要
descriptionAPI の振る舞いの詳細や注意点
externalDocsAPI に関する追加の文書
operationIdAPI の利用可能なエンドポイントと操作方法
parametersAPI のリクエストパラメータ
requestBodyAPI のリクエストボディ
responsesAPI のレスポンス
callbacks
deprecatedAPI が非推奨であることの宣言
securityAPI のセキュリティ機構
serversAPI に対応する代替サーバ

paths > {path} > {method} > tags

API の論理的なグループを指定する。

  • タグオブジェクトとして事前定義したタグの中から選択する

    良い例:

    yaml
    paths:
      /users:
        get:
          tags:
            - users
          ...
    tags:
      - name: users

    悪い例:

    yaml
    paths:
      /users:
        get:
          tags:
            # タグオブジェクトとして定義されていないタグが指定されている
            - users
          ...
    tags: []
  • 1 API につき 1つのタグを指定する

    良い例:

    yaml
    paths:
      /users:
        get:
          tags:
            - users
          ...

    悪い例:

    yaml
    paths:
      /users:
        get:
          # 複数のタグが指定されている
          tags:
            - users
            - admin
          ...

paths > {path} > {method} > summary

API の操作概要を記載する。

  • API ごとに機能 ID や機能名があるのであれば記載する

    良い例:

    yaml
    paths:
      /users:
        get:
          summary: API-001 ユーザ一覧取得

paths > {path} > {method} > description

API の振る舞いの詳細や注意点を記載する。

別途参照させるべき設計書があるのであれば、設計書へのリンクを記載しても良い。

良い例:

yaml
paths:
  /users:
    get:
      description: [API詳細設計書(API-001)](https://example.com/API-001.md)

paths > {path} > {method} > operationId

API を識別するための一意な文字列を記載する。

  • HTTP メソッドと URL パスの組み合わせをキャメルケースで表現する

    良い例:

    yaml
    paths:
      /users:
        get:
          operationId: getUsers
          ...
      /products/{product_id}:
        put:
          operationId: putProductsProductId
          ...

    悪い例:

    yaml
    paths:
      /users:
        get:
          operationId: get_users
          ...
  • OpenAPI ドキュメントエディタとして広く使用される Stoplight が提供するLinterの定義としては、ケバブケースが標準になっているため、Stoplight を使用する場合はケバブケースで表現しても良い

paths > {path} > {method} > parameters

API のリクエストパラメータを記載する。

  • クエリパラメータはスネークケースで表現する

    良い例:

    yaml
    paths:
      /users:
        get:
          ...
          parameters:
            - name: account_type
              in: query

    悪い例:

    yaml
    paths:
      /users:
        get:
          ...
          parameters:
            - name: account-type
              in: query
  • クエリパラメータは HTTP メソッドが GET, DELETE の場合にのみ指定する

    良い例:

    yaml
    paths:
      /users:
        get:
          ...
          parameters:
            - name: account_type
              in: query

    悪い例:

    yaml
    paths:
      /users:
        post:
          ...
          parameters:
            - name: acaccount_type
              in: query
  • ヘッダはハイフンを区切り文字とするパスカルケースで表現する

    良い例:

    yaml
    paths:
      /users:
        post:
          ...
          parameters:
            - name: Content-Type
              in: header

    悪い例:

    yaml
    paths:
      /users:
        post:
          ...
          parameters:
            - name: ContentType
              in: header

paths > {path} > {method} > requestBody

API のリクエストボディを記載する。

  • 標準仕様の describing-request-body の章にも記載がある通り、リクエストボディは HTTP メソッドが POST, PUT, PATCH の場合のみ指定する

    良い例:

    yaml
    paths:
      /users:
        post:
          ...
          requestBody:
            required: true
            content:
              application/json:
                ...

    悪い例:

    yaml
    paths:
      /users:
        get:
          ...
          # HTTP メソッドが GET の場合にリクエストボディを指定
          requestBody:
            ...
  • リクエストボディそのものは通常複数の API を跨いで再利用されるものではないため、原則 components オブジェクトとして共通化(コンポーネント化)を行わない

    • openapi-generatorを使用する場合は、コンポーネント化をせず、title を指定することで名称の指定が可能となる
    • oapi-codegenを使用する場合は、名称を指定するためにコンポーネント化が必要となるが、極力コンポーネント化せずデフォルトの名称を使用することを推奨する

    良い例:

    yaml
    paths:
      /users:
        post:
          ...
          requestBody:
            required: true
            content:
              application/json:
                ...

    悪い例:

    yaml
    paths:
      /users:
        get:
          ...
          requestBody:
            # コンポーネント化したリクエストボディを参照
            $ref: '#/components/requestBodies/ReqPostProductsBody'
    
    components:
      requestBodies:
        ReqPostProductsBody:
          content:
            application/json:

paths > {path} > {method} > responses

API のレスポンスを記載する。

  • 正常系(2xx)のレスポンスは通常複数の API を跨いで再利用されるものではないため、原則 components オブジェクトとして共通化(コンポーネント化)を行わない

    • openapi-generatorを使用する場合は、コンポーネント化をせず、title を指定することで名称の指定が可能となる
    • oapi-codegenを使用する場合は、レスポンスの構造体を出力するために strict-server オプションを true に指定する必要がある。名称を指定するためにコンポーネント化が必要となるが、極力コンポーネント化せずデフォルトの名称を使用することを推奨する

    良い例:

    yaml
    paths:
      /products:
        post:
          responses:
            "200":
              description: 200 OK
              content:
                application/json: ...

    悪い例:

    yaml
    paths:
      /products:
        post:
          responses:
            "200":
              # コンポーネント化したレスポンスオブジェクトを参照
              $ref: "#/components/responses/RespPostProductsBody"
    
    components:
      responses:
        RespPostProductsBody:
          description: 200 OK
          content:
            application/json: ...
  • 異常系(4xx, 5xx)のレスポンスは個別に定義するのではなく、事前に components オブジェクトとして定義を行い $ref で参照する

    良い例:

    yaml
    paths:
      /products:
        post:
          responses:
            "400":
              # コンポーネント化したレスポンスオブジェクトを参照
              $ref: "#/components/responses/BadRequest"
    
    components:
      responses:
        BadRequest:
          description: 400 Bad Request
          content:
            application/json: ...

    悪い例:

    yaml
    paths:
      /products:
        post:
          responses:
            "400":
              # レスポンスオブジェクトを個別に定義
              description: 400 Bad Request
              content:
                application/json: ...

paths > {path} > {method} > security

API の認証方式を記載する。

  • 通常はルートレベルの security で API 共通的な認証方式を設定し、個々の API で個別に設定は行わない

  • ヘルスチェックのような認証を通す必要がない API のみ、上書きで定義する

    良い例:

    yaml
    paths:
      /session:
        post:
          ...
          # 認証しない場合のみ個別で定義
          security: []

components

API 定義で利用する共通のデータモデルを定義する。定義方針は下記の通りである。

フィールド名方針
schemasAPI 共通的なリソース(例. ユーザや商品など)やエラー等のドメインオブジェクトを定義する
responsesAPI 共通的なレスポンス(例. 異常系(4xx, 5xx)のレスポンス)を定義する
parametersAPI 共通的なリクエストパラメータ(HTTP ヘッダやクエリパラメータ等)を定義する
examples原則何も定義しない
requestBodies原則何も定義せず、リクエストボディは API 個別に定義する
headersAPI 共通的なレスポンスヘッダを定義する
securitySchemes標準で用いる API 認証のスキームを定義する
links原則何も定義しない
callbacks原則何も定義しない

※ リクエストボディやレスポンスボディにおいてオブジェクトがネストする場合、 API 固有のオブジェクトであっても schemas に定義する。 これは、定義するオブジェクトの properties 配下に更に type: object が定義される場合に、生成ツールによってはうまく型が生成されないためである。 生成ツール上問題ないのであれば、API 固有のオブジェクトを schemas に定義する必要はない。

components > schemas

API 共通的なリソースやエラー等のドメインオブジェクトを記載する。

  • 名称はアッパーキャメルケースで定義する
  • 名称は単数形で定義する
  • type に複数の型を定義しない
  • typenull は原則指定しない(null 値を用いる代わりに、キー自体を含めない)
  • allOf, anyOf, oneOf は利用しない

良い例:

yaml
components:
  schemas:
    # 共通で使用するリソースを表すオブジェクト
    Product:
      type: object
      properties: ...
    User:
      type: object
      properties:
    # 共通で使用するエラーを表すオブジェクト
    ProblemDetailError:
      type: object
      properties: ...

components > responses

API 共通的なレスポンスを記載する。主に異常系(4xx, 5xx)のレスポンスを定義する。

  • 名称はアッパーキャメルケースで定義する
  • 異常系(4xx, 5xx)のレスポンスの場合、名称にステータスコードの名称(例. BadRequest, Unauthorized)を用いる

良い例:

yaml
components:
  schemas:
    ProblemDetailError:
      type: object
      properties:
        ...
  responses:
    # HTTP ステータスコード 400 のレスポンスオブジェクト
    BadRequest:
      description: 400 Bad Request
      content:
        application/json:
          schema:
            "$ref": "#/components/schemas/ProblemDetailError"
    # HTTP ステータスコード 401 のレスポンスオブジェクト
    Unauthorized:
      description: 401 Unauthorized
      content:
        application/json:
          schema:
            "$ref": "#/components/schemas/ProblemDetailError"
    ...

正常系のレスポンスの例としてはファイルアップロード・ダウンロードのレスポンスなどが該当する。
個別のアプリケーション要件でブレが少なく、複数のエンドポイントで用いられる場合に定義する。オブジェクトのスキーマは、schemas に切り出して定義し、コード生成ツールのために型情報を付与させる。

良い例:

yaml
components:
  schemas:
    SignedURL:
      type: object
      properties:
        signed_url:
          type: string
          format: uri
        expired_at:
          type: string
          format: date-time
  responses:
    BlobUpload:
      description: BLOB(Binary Large Object) upload using presigned url
      content:
        application/json:
          schema:
            "$ref": "#/components/schemas/SignedURL"
    BlobDownload:
      description: BLOB(Binary Large Object) download using presigned url
      content:
        application/json:
          schema:
            "$ref": "#/components/schemas/SignedURL"
    ImageBinary:
      description: An image
      content:
        image/*:
          schema:
            type: string
            format: binary

components > parameters

API 共通的なリクエストパラメータ(パスパラメータ、クエリパラメータ、ヘッダ, Cookie)を記載する。

パスパラメータ
  • API 全体で利用されるパスパラメータが必要なケースが想定されないため、原則定義しない
    • 特定リソースの操作(例えば更新と削除)を行う際のリソース ID はパスパラメータとして再利用できるが、コンフリクトを避けるため原則共通化は行わない
クエリパラメータ
  • API 全体で利用可能な共通のクエリパラメータ(例: 検索数の limit, offset)を定義する
  • 命名はクエリパラメータ名に Query というプレフィックスを付与する形式を推奨する

良い例:

yaml
paths:
  get:
    /products:
      parameters:
        - $ref: "#/components/parameters/QueryLimit"

components:
  parameters:
    QueryLimit:
      name: limit
      in: query
      required: false
      schema:
        type: integer
      description: 検索数上限
ヘッダ
  • API 全体で利用可能な共通のリクエストヘッダを定義する
  • 命名はヘッダ名に Header というプレフィックスを付与する形式を推奨する

良い例:

yaml
paths:
  post:
    /products:
      parameters:
        - $ref: "#/components/parameters/HeaderContentType"

components:
  parameters:
    HeaderContentType:
      name: Content-Type
      in: header
      schema:
        type: string
      required: true
  • API 全体で利用可能な共通の Cookie(例: CSRF 用のトークン)を定義する
  • 命名は Cookie 名に Cookie というプレフィックスを付与する形式を推奨する
  • Cookie 認証を定義する場合は、APIKey を利用する

良い例:

yaml
paths:
  get:
    /products:
      parameters:
        - $ref: "#/components/parameters/CookieCSRFToken"

components:
  parameters:
    CookieCSRFToken:
      name: csrftoken
      in: cookie
      required: true
      schema:
        type: string
      description: CSRFトークン

components > requestBodies

原則何も定義せず、リクエストボディは API 個別に記載する。

components > headers

API 共通的なレスポンスヘッダを記載する。

  • 命名はヘッダ名からハイフンを除去した形式を推奨する

良い例:

yaml
paths:
  get:
    /products:
      responses:
        "200":
          headers:
            XCacheInfo:
              $ref: "#/components/headers/XCacheInfo"

components:
  headers:
    XCacheInfo:
      description: not cacheable; meta data too large
      schema:
        type: string

components > securitySchemes

標準で用いる API 認証の定義を行う。

良い例:

yaml
components:
  securitySchemes:
    # Bearer トークンによる認証
    Bearer:
      type: http
      scheme: bearer
      bearerFormat: JWT
      description: "Bearer トークン認証"

links は OpenAPI 3.0 の新機能の1つで、ある API レスポンスの値を用いて、別の API を呼び出す方法を明示できるセクションである。

興味深い機能であり、API のセマンティクスを伝えるのに有用であるが、本規約では記載しないことを推奨とする。

理由:

  • 業務システムでは、業務フローを抑えておけば、API 操作フローの理解はそこまで難しくないことが多い
    • 逆に、API 同士の関係だけを示すだけでは業務モデリング図とのダブルメンテナンスになったり、中途半端になりうる
  • OAS 3.0 Support Backlog にあるように、2023/12/15時点では Swagger-UI が対応していない
    • links を書いたと言って、API ドキュメントに影響しない

components > callbacks

callbacks は OpenAPI 3.0 の新機能の1つで、API サーバ側が指定されたコールバック URL を呼び出すという仕組みである。

仕様書には、EC ショップで購入のたびにマネージャーに通知を送るといった、何かしらの処理をトリガーにコールバック URL を呼び出す例が示されている。

利便性は高い仕様だが、本規約では記載しないことを推奨とする。

理由:

  • コールバック URL 呼び出しの、エラーハンドリングが難しい
  • 業務システムでは欠損が許されない、または将来的に許されなくなる可能性があり、その場合にこの機能に頼ると想定以上の追加作業が発生する

コールバックのような仕組みを実現するには、別途キューイングのメッセージサービスの利用などを検討する。

security

全 API に共通で適用されるセキュリティ設定を定義する。

業務システムの Web API において認証が全く存在しないケースは考えにくいため、本規約ではルートレベルで認証を設定し、個々の API への適応漏れを無くす。

良い例:

yaml
security:
  - Bearer: []

tags

API を論理的にグループ化するためのタグを定義する。

  • ドキュメントやツールにとって重要であるため 必須 で指定する
  • name, description を必須項目とする
  • 単数形 で、小文字かつ半角スペース区切りで記載する
    • 半角スペース区切りで記載する理由は HTML ドキュメントで参照する場合の可読性を上げるため
  • コード生成で利用される(Go においてはパッケージ、 TypeScript においてはクラスに相当する)ため、シンプルな命名にする

良い例:

yaml
tags:
  - name: product
    description: 製品
  - name: user account
    description: ユーザーアカウント

悪い例:

yaml
tags:
  - name: products
    description: 製品
  - name: user_account
    description: ユーザーアカウント

externalDocs

参照情報としての URL を記載できる。

ただし、description にて参考情報となる URL を記載する方が、複数リンクを指定可能であるなど自由度が高く使いやすいため externalDocs は利用せず description の利用を推奨する。

良い例:

yaml
info:
  description: |-
    Some useful links:
    - [The Pet Store repository](https://github.com/swagger-api/swagger-petstore)
    - [The source API definition for the Pet Store](https://github.com/swagger-api/swagger-petstore/blob/master/src/main/resources/openapi.yaml)

# 特別な場合を除き非推奨
externalDocs:
  description: Find out more about Swagger
  url: http://swagger.io

設計上のポイント

OpenAPI ドキュメントを作成する上での設計上ポイントをいくつか記載する。

ファイルアップロード

Web API におけるファイルアップロードのよく利用される実装手段は、大きく分けて以下の 3 手法に分類できる。

  1. ファイルのコンテンツを Base64 などにエンコードして、JSON の項目として設定し、リクエストボディで送る
    • メリット: 通常の JSON を扱うのとほぼ変わらないため楽。サムネイルなど限定されたユースケースの場合に向く
    • デメリット: 巨大なファイルを扱う場合などサーバリソース負荷が懸念。Base64 に変換する分 CPU 負荷は余計にかかる。ペイロードが膨れるためモバイルなどのクライアントでは帯域利用での懸念がある
  2. multipart/form-data ファイルを送信する
    • メリット: ファイルを Base64 に変換するといった作業が不要
    • デメリット: ブラウザ以外のクライアントにとって手間がかかる
  3. アップロード用に用いる、オブジェクトストレージの Signed URL を発行し、クライアントから直接ファイルをアップロードしてもらう

本規約でファイルアップロードについて上記の 3. Signed URL を推奨する。API 呼び出しとしては次のようなフローとする。

フローの ①、② はアプリケーション固有の紐づけルールにおいて Web API を設計すれば良いため、本規約で YAML の設定例は記載しない。フロー ② については Signed URL を用いたアップロードであり、アプリケーションの Web API 定義を書く必要はない。もし、監査ログなどのガバナンス上、直接オブジェクトストレージへの書き込みを許容されないケースは、B で Signed URL に相当する書き込み先を提供し、B を経由してファイルをアップロードする。

上記どちらのケースも OpenAPI 定義としてはシンプルであるため、記述例は割愛する。

ファイルダウンロード

ファイルアップロードと同様、オブジェクトストレージの Signed URL 経由を経由してのダウンロードさせる手法を推奨する。Web API としてはオブジェクトストレージにダウンロード用のファイルを書き込み、クライアントが取得するための Signed URL をレスポンスの JSON 項目に渡す方式である。

もし、サムネイルやアイコン画像など、ファイル容量がごく小さい場合は Base64 にエンコードして JSON に埋め込んで渡しても良い。線引をどこに設置するかは本規約で定義しない。

どちらのケースも OpenAPI 定義としてはシンプルであるため、記述例は割愛する。

CORS

CORS(Cross-Origin Resource Sharing)のために、options メソッドの追記は 原則不要 とする。

理由:

  • サーバ側
    • options メソッド対応は、API 仕様ではなく実装レベルの機能横断的な処理(Java における Servlet Filter や Spring の Interceptor、Go における Middleware など)で行うことが大半であり、コード生成が不要
  • クライアント側
    • options メソッドを用いるのはクライアントがブラウザであり、クライアントのアプリケーションコードが明示的にアクセスしないため、コード生成が不要
  • 使用面として
    • Access-Control-Allow-Origin がどのような値を返すか、呼び出し元によって動的な値を返したい場合があり、記載が困難なケースがある

ただし、Amazon API Gateway のようなサービスを利用する場合は、options メソッドの記載が必須である場合は除く[1]

OpenTelemetry Traceparent HTTP Header

OpenOpenTelemetry で用いるられるtraceparent のリクエストヘッダは OpenAPI で 原則不要 とする。

理由:

  • OpenTelemetry が定めるヘッダ類は、API 横断的に設定されるべきものであり、ミドルウェアやフレームワーク側などでの一律の制御を推奨するため
  • 記載することにより、OpenOpenTelemetry に対応していることを明記し開発者に周知できるメリットより、各アプリ開発者が生成されたコードで悩んだり、誤解されることを回避したいため

値が存在しないという状態の表現

原則 null を用いず、パラメータのキー自体を含めないこと(undefined)による表現を行う。

詳細はフューチャー技術ブログ記事を参照されたい

バリデーション

パラメータのバリデーションをどこまで厳密に定義すべきかという議論はしばしば行われる。

リクエストパラメータの各項目に対して、必須・型・桁・区分値・日付・正規表現のチェックが行える。レスポンスで用いるモデルについても同様に設定でき、enum, pattern 以外は API の利用者(クライアント)側の DB 設計などに必要な型桁情報を渡すのに有用であるため、できる限り詳しく指定する。

必須

必須パラメータのみ required: true を定義する

デフォルト値

パラメータにデフォルト値がある場合はdefault を定義する。

yaml
# ex. enum
name: limit
type: number
format: integer
minimum: 1
maximum: 100
default: 20
description: 検索結果の項目数上限(1~100が指定可能)

【注意】API 公開後に、default 値を変更してはならない(API の互換性が崩れるため)。もし変更する場合は、API のバージョンを上げること。

型・フォーマット

型(type)は string(文字列), number(数値), integer(整数値), boolean(真偽値) array(配列) のうちどれか指定する。

フォーマット(format)は以下の型の詳細情報を示すもので、可能な限り設定する。

  • integer(整数)
    • int32, int64
  • number(数値)
    • float, double
  • string(バイナリ)
    • byte: Base64 でエンコードされた文字列
    • binary: バイト配列
  • string(日付)
    • date: RFC3339 full-date(例: 2023-07-21)
      • 項目名は _on を接尾辞につけることを推奨とする
    • date-time: RFC3339 date-time(例: 2023-07-21T17:32:28Z)
      • 項目名は _at を接尾辞につけることを推奨とする
  • string(その他)
    • password: Swagger UI で入力が隠される
    • その他、 email, uuid など Open API 仕様に存在しない任意のフォーマットを独自のドキュメント生成などのために記載しても良い

OpenAPI 3.0 では 2.0 に存在した file type は存在しない。もし同等の指定をしたい場合は、以下の様に指定する。

yaml
type: string
format: binary # binary file contents

データ型によって、利用できる桁を指定する項目が異なる。可能な限り設定する。

  • 文字列
    • 最大桁数:maxLength
    • 最小桁数:minLength
  • 数値または整数値
    • 最小値(境界値を含む):minimum
    • 最大値(境界値を含む):maximum
    • 境界値を含まない場合のみexclusiveMinimum: trueまたはexclusiveMaximum: trueを定義する。minimum, maximum で代用できる場合は利用しない
  • 配列:
    • 最大要素数:maxItems
    • 最小要素数:minItems
    • required: trueの場合は原則としてminItems: 1を定義する
    • uniqueItems は必須で指定する(通常は一意であるべき)

【注意】API 公開後に、レスポンスの maxLength を以前より大きい値に変更してはならない。レスポンスの maxLength など API 利用者側システムの DB の ERD 定義のインプットになる事が多いため。もし行う場合は API のバージョンを上げることや、連携先に桁数変更の旨を調整するなどの考慮を行う。

区分値

区分値の場合は enum 属性を利用し、descriptionには区分値の論理名を記載する。

yaml
name: gender
type: string
enum: ["0", "1", "2", "9"]
description: |
  性別
    0: 不明
    1: 男
    2: 女
    9: 適用不能

OpenAPI 3.0 では区分値の再利用ができるため、横断的に用いる区分値は components 側で定義する。

yaml
paths:
  /products:
    get:
      parameters:
        - in: query
          name: gender
          required: true
          schema:
            $ref: "#/components/schemas/Gender"
components:
  schemas:
    Gender:
      type: string
      enum: ["0", "1", "2", "9"]

固定値

固定値 の場合も enum を 1 つだけ指定して表現する。この場合もレスポンスで利用する場合は指定しない

yaml
name: file_layout
type: string
enum: ["json"]
description: ファイルレイアウト

その他(正規表現)

正規表現で表現できる文字列はpatternを利用して定義する。桁や区分値で代替できる場合は、pattern を用いない

例:

yaml
remind_time:
  type: string
  description: リマインド時刻。(hh:mm)形式
  example: 23:59
  pattern: "^(2[0-3]|[01][0-9]):([0-5][0-9])$"

ファイル分割

OpenAPI ドキュメントは単一のファイルで構成することも複数の分割されたファイルで構成することもできるが、複数のファイルに分割することを推奨する。

理由:

  • API path ごとに担当者を分けて設計する場合などに、複数人による編集によって意図しないコンフリクトが発生することを防ぐ
  • ファイルの肥大化による、可読性の低下を防ぐ

分割方法の選定

開発方針や OpenAPI の使用用途に合わせて、都合の良いファイルの分割方法を採用する。例えば、以下のような方法がある。

  1. API path ごとに設計担当者を分けて、それぞれに OpenAPI を編集する場合は、path の単位で分割する。
  2. テストツールとして stoplightio/prismを使用する場合、テストケースごとにデータファイルを作成して、examples にファイルパスを指定する。

注意点:

サンプル説明

分割方法 1, 2 の両方に当てはまる場合のサンプルを用いて説明する。openapi.yaml とディレクトリ構成は下の通り。全量は sample_dividedを参照すること。

  • リソース単位にディレクトリを作成して、path ごとに定義ファイルを格納する。

  • components の schemas モデルの中身は別ファイルとして切り出すことが可能である。

    yaml
    # openapi.yaml(ファイル分割例)
    openapi: "3.0.3"
    info:
      version: 1.0.0
      title: Swagger Petstore
    security:
      - Bearer: []
    servers:
      - url: http://petstore.swagger.io/v1
    tags:
      - name: pets
        description: Everything about your Pets
    paths:
      /pets:
        $ref: "./pets/pets.yaml"
      /pets/{pet_id}:
        $ref: "./pets/pets_pet_id.yaml"
    
    components:
      securitySchemes:
        Bearer:
          type: http
          scheme: bearer
          bearerFormat: JWT
          description: "Authenthicaiton with bearer token"
    sh
    # ディレクトリ構成(ファイル分割例)
    
    ├─openapi.gen.yaml
    ├─openapi.yaml
    
    ├─examples
      ├─pets_get
        ├─test_case_001.yaml
        └─test_case_002.yaml
    
      ├─pets_pet_id_get
        └─test_case_003.yaml
    
      └─pets_post
           └─test_case_004.yaml
    
    └─pets
      ├─pets.yaml
      └─pets_pet_id.yaml
  • openapi.yamlpaths に記載した API ファイルは以下のように作成する(例: pets-pet-id.yaml)。

  • examples には、例えば各 API のテストケース ID をキーとして指定(TestCase003)し、該当するテストケースのデータファイルパスを参照させる。

    pets-pet-id.yamlを見る
    yaml
    # pets-pet-id.yaml(API path 別ファイルの記載例)
    get:
      summary: Get details of a pet
      description: Get details of a pet by specifying its pet ID.
      operationId: getPetsPetId
      tags:
        - pets
      parameters:
        - name: pet_id
          in: path
          description: The id of the pet to retrieve
          schema:
            type: string
          required: true
      responses:
        "200":
          description: Expected response to a valid request
          content:
            application/json:
              schema:
                type: object
                properties:
                  pet_detail:
                    type: object
                    properties:
                      breeder:
                        type: string
                      date_of_birth:
                        type: string
                        format: date
                      pedigree:
                        type: object
                        properties:
                          registration_no:
                            type: integer
                            format: int64
                          date_of_registration:
                            type: string
                            format: date
                          pedigree_image:
                            type: string
                        required:
                          - registration_no
                          - date_of_registration
                          - pedigree_image
                required:
                  - pet_detail
              examples:
                TestCase003:
                  $ref: "../examples/pets_pet_id_get/test_case_003.yaml"
        "404":
          $ref: "../common/responses.yaml#/components/responses/NotFound"
        "500":
          $ref: "../common/responses.yaml#/components/responses/InternalServerError"
  • OpenAPI の使用用途により、分割ファイルを1つのファイルにまとめる必要がある場合には、例えばRedocly CLIを使用して以下コマンドを実行する

  • まとめたファイルは、以下のようになる(例: openapi.gen.yaml)。

    bash
    redocly bundle openapi.yaml --output openapi.gen.yaml
    openapi.gen.yamlを見る
    yaml
    # openapi.gen.yaml(ファイルBundle後)
    openapi: 3.0.3
    info:
      version: 1.0.0
      title: Swagger Petstore
    servers:
      - url: http://petstore.swagger.io/v1
    security:
      - Bearer: []
    tags:
      - name: pets
        description: Everything about your Pets
    paths:
      /pets:
        get:
          summary: Search a pet list
          description: Search a list of registered pets up to 100.
          operationId: getPets
          tags:
            - pets
          parameters:
            - name: limit
              in: query
              description: How many items to return at one time (max 100)
              schema:
                type: integer
                maximum: 100
                format: int32
              required: false
          responses:
            "200":
              description: A paged array of pets
              headers:
                x-next:
                  description: A link to the next page of responses
                  schema:
                    type: string
              content:
                application/json:
                  schema:
                    type: object
                    properties:
                      pets:
                        type: array
                        maxItems: 100
                        items:
                          type: object
                          properties:
                            id:
                              type: integer
                              format: int64
                            name:
                              type: string
                              maxLength: 50
                            category:
                              type: string
                              maxLength: 10
                            sub_category:
                              type: string
                              maxLength: 50
                            age:
                              type: integer
                              format: int32
                            sex:
                              type: string
                              maxLength: 6
                            note:
                              type: string
                              maxLength: 200
                            tag:
                              type: string
                              maxLength: 20
                          required:
                            - id
                            - name
                            - category
                            - age
                            - sex
                  examples:
                    TestCase001:
                      $ref: "#/components/examples/test_case_001"
                    TestCase002:
                      $ref: "#/components/examples/test_case_002"
            "404":
              $ref: "#/components/responses/NotFound"
            "500":
              $ref: "#/components/responses/InternalServerError"
        post:
          summary: Register a pet
          description: Reginster basic information of new pet.
          operationId: postPets
          tags:
            - pets
          requestBody:
            content:
              application/json:
                schema:
                  type: object
                  properties:
                    pet:
                      type: object
                      properties:
                        id:
                          type: integer
                          format: int64
                        name:
                          type: string
                          maxLength: 50
                        category:
                          type: string
                          maxLength: 10
                        sub_category:
                          type: string
                          maxLength: 50
                        age:
                          type: integer
                          format: int32
                        sex:
                          type: string
                          maxLength: 6
                        note:
                          type: string
                          maxLength: 200
                        tag:
                          type: string
                          maxLength: 20
                      required:
                        - id
                        - name
                        - category
                        - age
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          description: Get details of a pet by specifying its pet ID.
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License

CC-By-4.0


  1. https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/apigateway/latest/developerguide/enable-cors-for-resource-using-swagger-importer-tool.html ↩︎