フューチャー技術ブログ

人工知能学会 (JSAI2026) 参加報告

はじめに

AI戦略推進グループ(AIXG)の松岡です。

2026年6月8日(月)〜12日(金)、群馬県高崎市のGメッセ群馬にて人工知能学会全国大会(JSAI2026)が開催されました。フューチャーからもメンバが現地参加しましたので、その様子をレポートします。

一昨年のJSAI2024参加レポートに続き、今年もゴールドスポンサーとして現地参加してきました。

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人工知能学会全国大会とは

人工知能学会全国大会(JSAI)は、日本最大規模のAI関連学会の一つで、研究者・技術者・ビジネスパーソンが一堂に会するイベントです。

今年のJSAI2026は、2026年6月8日(月)〜12日(金)の5日間、Gメッセ群馬(群馬県高崎市)にてハイブリッド形式(現地+オンライン)で開催されました。学会設立40周年の大会となります。

参加者数は集計の結果5,278名(現地4,296名、遠隔982名)、発表件数は1,397件で、いずれも過去最多を記録しました。

プログラムは口頭発表・ポスター発表・企画セッション・チュートリアルなど多岐にわたり、40周年という節目にふさわしく、AI研究の歩みを振り返るとともに、社会実装・Physical AI・AI倫理など多様な領域へと広がる現在のAI研究の全体像を俯瞰できる大会でした。

スポンサーブース

フューチャーは今年もスポンサーブースへ出展しました。ブースではポスターを掲示し、AIXGが手がけるAIの社会実装案件を紹介しました。

研究の最先端を追うだけでなく、実ビジネスの現場にAIをどう組み込んでいくかというフューチャーならではの取り組みを来場者に伝えることができました。

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グッズとしてペットボトルホルダーとトートバッグを配布しました。トートバッグは特にデザインのセンスが良いと好評で、多くの方に喜んでいただけました。

ブースには人工知能学会で初めてフューチャーを知った人たちから社名は聞いたことがある、社員に知り合いがいるといった人たち、インターンの選考を受けている学生に内定者と幅広くたくさんの方にお越しいただきました。

セッション聴講

ここからは、特に印象に残ったセッション・発表について各メンバからご紹介します。

全論文のJ-Stageへの掲載は2026年7月17日に予定されています。それまでの間は参加登録者のみ閲覧が可能で、「ログイン」から、参加登録サイトに登録されたメールアドレスとパスワードで認証が必要です。

[4H1-OS-4a-04]ツンデレな心的状態理解を促すロボットの視線モデルの提案

日常空間で普及しつつある対話ロボットにおいて、視線の動きは相手の感情や意図を推測する非言語情報として、円滑なコミュニケーション領域で重要視されています。

円滑なサービス提供に向けて対話の流れや意図に合わせて視線制御をすることでスムーズに伝達できることが理想ですが、実際には顔追従や発話権に合わせた注視切替などに偏ってしまい、ロボット自身の「心境変化」といった内的状態を十分に表出するには至っていません。

本研究では、先行研究で提案されている相手の視線を入力としてエネルギーを逐次最小化する視線モデルに対して「ツンデレ(最初は照れ隠しで視線を回避するが、心を開くとアイコンタクトが増える状態遷移)」の概念を導入し、会話に応じて視線の動きを段階的に変化させる視線モデルを提案しました。

提案の視線モデルの有効性を検証するために、常時対話相手を注視する条件と先行研究の視線モデルに基づいて対話相手を注視する条件と比較した結果、提案モデルによって視線変化の理由理解と心境変化の知覚を有意に向上させることが明らかになりました。

対話ロボットが普及する中で、「ツンデレ」というサブカルチャーの概念を状態遷移モデルとして真面目に実装し、視線一つでロボットの「心」を表現するに至った点が面白くこちらの発表を取り上げました。(加藤)

[2E5-GS-10o-02] 時系列データ解釈のためのマルチモーダルLLM設計と自動車の運転挙動説明への応用

トヨタ自動車とNABLASによる発表をご紹介します。

車速・加速度・操舵角といった車載の時系列データは、可視化やタスクごとの個別モデル構築に人手を要し、解釈にも専門知識が必要でした。本研究はこの課題に対し、時系列エンコーダと射影(プロジェクション)層を組み合わせ、抽出した時系列特徴を直接LLMへ入力する新アーキテクチャ Time-Series Language Model(TSLM) を提案しています。

構成は画像分野のVLM(LLaVA)に着想を得ており、時系列基盤モデル MOMENT で走行データから特徴量を抽出し、2層のMLP(射影層) でLLMの埋め込み空間へ写像、LLM(Qwen3-4B-Instruct-2507)へテキスト指示とともに入力して運転挙動の説明文を生成します。特に、エンコーダとLLMの重みは凍結し、学習するのは射影層のMLPのみ という点が特徴で、少ない計算資源で学習でき、モデルの置き換えも容易という利点があります。

データセットは実車走行データ(カムリ・クラウンで一般道・高速道路を走行)から構築し、8系列を0.1秒周期で記録して10秒ごとに区切っています。教師となる説明文はグラフ画像をVLMに読ませて生成させ、約2万件の時系列⇔テキストのペアを自動的に用意したとのことです。

評価では、時系列を折れ線グラフの画像に変換してVLMで処理するベースラインと比較し、LLM as a Judge(1〜10点)で説明文の質を測定。提案手法TSLMは平均 6.82点 とベースラインの 4.86点 を上回り、時系列を画像化せず直接LLMへ取り込むアプローチの有効性が示されました。

時系列を「画像化してから読ませる」のではなく専用エンコーダで特徴量化して直接渡す発想が新鮮で、学習対象を射影層だけに絞った軽量・転用性の高い設計も実務的でした。センサーやログなど時系列を扱う社会実装案件への応用可能性を感じる発表でした。(岩城)

[4G1-OS-23-04] ReMIND:大規模言語モデルのモジュラー統合によるセレンディピティ創発

新しいアイデア創発にLLMを利用することは昨今珍しい話ではありませんが、新規性と、アイデアの論理的整合性を両立させることは簡単ではありません。

本研究ではリアルの人間がレム睡眠の際にアイデアを創発することに着想を得たLLMフレームワークReMINDの提案をしています。

人間はレム睡眠の間に、記憶や知識をランダムに組み合わせて「ひらめき」を生み出し、起きている間にそれを「整合性のあるアイデア」へと収束させています。

本フレームワークはこの仕組みを着想源としており、wake、dream、judge、re-wake の4ステップで構成されています。

  • wake(覚醒状態):Temperature を低く設定し、ベースラインとなる堅実で安定した応答を生成します。
  • dream(睡眠状態):Temperature を高く設定し、普段は結びつかない概念同士を掛け合わせた、自由で意外性のある応答を生成します。
  • judge(評価):生成されたアイデアに対して粗い評価を行い、有望な候補を抽出します。
  • re-wake(再覚醒・収束):抽出した候補を再度 wake(低Temperature)に入力し、最終的なアイデアとして綺麗に再構成した上で出力します。

複数のプロンプト条件、モデル、およびパラメータを対象に、LLM as a judgeによる評価を行いました。その結果、新規性のあるアイデアの出現自体は確率的なものにとどまる側面はあるものの、本フレームワークのように「構造化された探索」と「選択的な統合」を組み合わせることで、限られた試行回数の中でもその出現確率を向上させられることが示されました。

深層学習という手法に起因する、現在のAIにおける『純粋な創造性』の構造的ジレンマに対抗するアプローチとして非常に面白い研究でした。

また、本研究を発表された佐藤純先生は、神経科学をはじめとする生物科学をご専門とされており、その知見を彷彿とさせるフレームワークの着想は、大変興味深いものでした。

[3N1-GS-8a-03]実会話の雰囲気を伝えるロボット行動生成

人間の会話にある「言葉には表れない全体の雰囲気」を、2台のコミュニケーションロボットで再現しようと試みた非常に興味深い発表でした。

本セッションでは、会話の雰囲気は「発話内容」「音声韻律」「ジェスチャ」の統合的な制御によって作られるという仮説に基づいて研究が進められています。

最新のLLMに漫才の会話データを読み込ませて発話の役割ごとの声の制御や、絶妙な「発話間の間」の取り方を推定させているそうです。

さらに、テキストの指示からロボットの関節の動きまで生成して連動させています。一見無機質に思われがちなロボットとのやりとりですが、提案された生成システムを用いて人間の漫才を再現したところ、間の取り方や身振りが統合され、人間同士のやり取りにかなり近い雰囲気が醸し出されていました。

この研究が進めば、将来的にロボットとのやり取りが人間にとってごく自然なものになるのではないかと、大きな期待が膨らむセッションでした。(松岡)

さいごに

基盤モデル・生成AI研究の盛況は今年も続いていましたが、様々な業界におけるRAGやAIエージェントの活用など「実務への適用」を重視した発表が増え、研究コミュニティ全体が社会実装フェーズへ移行しつつある印象でした。

マルチモーダルAIの広がりや、発表・企業ブースでのロボットに関する出展の増加からはPhysical AIへの関心の高まりも感じられ、AIが現実世界に根ざした技術として進化していることを改めて実感しました。

AIXGではAIの社会実装に一緒に取り組む仲間を募集しています。新卒・キャリアともに採用中ですので、ご興味のある方はぜひご覧ください。