フューチャー技術ブログ

マネージャーがうれしいRedmineデータのEVM表示方法を公開します!!

はじめに

こんにちは。近藤です。

前回はRedmileのデータをKibanaで表示してみました。

今回はRedmineデータをEVMグラフとして表示します。

例えば、Kibana+Timelionを使うと、RedmineデータからEVMグラフを表示することができるのです。

◆EVMグラフ例

では早速、Kibana+Timelionを使ってみましょう。

なお、下記を前提としています。

  • Windows環境で構築する。
  • Redmineのデータベース(MySQL)に直接接続する。

EVMとは?

EVM(Earned Value Management:アーンド・バリュー・マネジメント)はPMBOKでも説明されている有名なプロジェクト管理技法です。

今回は下記の値を計測します。

計測値 説明 略称
Planned Value 計画価値 PV
Actual Cost 実コスト AC
Earned Value 出来高 EV

それぞれの計測値をITプロジェクトにおける数値に置き換えると、下記のように言えます。

  • 画面開発に必要な工数(Planned Value:PV
  • メンバーが稼働した時間(Actual Cost:AC
  • 開発が完了した作業量(Earned Value:EV

これらの数値を別々に把握できると、下記が別々に管理できそうです。

  • ①.画面開発の進捗(EV ÷ PV)
  • ②.メンバーの生産性(EV ÷ AC)

①の値をSPI(Schedule Performance Index)、②の値をCPI(Cost Performance Index)と呼びます。

いずれも標準値が”1.00”。それを下回る場合は、課題があると考えられます。

RedmineのデータをEVM表示するとどうなる?

例えば、下記のような4件のチケットがRedmineに登録されているプロジェクトがあったとします。

チケット番号#4の進捗が50%の状況ですね。

この場合、PVの累計は”32h“、EVの累計は”28h“。PVに対してEVが”4h“足りていないことが分かります。

また、SPIは”0.875“。進捗が”0.125“つまり、**12.5%**遅延していることが分かります。

作業時間を付記した場合のEVMの例

今度は作業時間を付記してみました。

この場合、ACの累計は”28h“です。

また、CPIは”1.00“。つまり、生産性は標準であることがわかります。

つまり、遅延はしているが、メンバーの生産性は標準。
メンバーの作業時間を確保することで、進捗が向上する事が検討出来そうです。

EVMを使うことで多角的にプロジェクトを把握する事ができますね。

今回は、このEVMをグラフで表示します。

大まかな流れ

下記の手順でグラフを表示します。

  1. 環境構築
  2. データ投入
  3. EVM 表示

1.環境構築

環境構成図

今回もELK+Timelionを利用して、Redmineデータの可視化環境を構築します。

(a)ELKをダウンロード

  • Elastic Search Download URL
  • →前回の構築時から最新版が出ているため(2017/1/19時点)私の場合は、「elasticsearch-5.1.2.zip」をダウンロードしました。

(b) Kibanaをダウンロード

  • Kibana Download URL
    • →私の場合は、「kibana-5.1.2-windows-x86.zip」をダウンロードしました。

(c) Logstashをダウンロード

  • Logstash Download URL
    • →私の場合は、「logstash-5.1.2.zip」をダウンロードしました。

(d) 「c:\elastic」というフォルダを作成

(e) 先ほどダウンロードしたそれぞれの圧縮ファイルを解凍し、「c:\elastic」へ配置します。

最終的には下記のようなフォルダ構成になります。

C:\elastic
└elasticsearch-5.1.2
└kibana-5.1.2-windows-x86
└logstash-5.1.2

2.RedmineデータをELKに取り込む

次に、JDBCドライバを用意します。

前回ダウンロードした「mysql-connector-java-5.1.39-bin.jar」というファイルを、
「C:\elastic\logstash-5.1.2\bin」以下に配置します。

次に、「redmine.txt」というファイルを作成。中身は下記のようにします。(★を含む箇所は皆様の環境に合わせた値へ変えて下さい。)

input {
jdbc {
jdbc_connection_string => "jdbc:mysql://★IP★:3306/★サービス名★"
jdbc_user => "★ユーザ名★"
jdbc_password => "★パスワード★"
jdbc_driver_library =>"mysql-connector-java-5.1.39-bin.jar"
jdbc_driver_class => "com.mysql.jdbc.Driver"
statement => "
select
iss.due_date due_date
, iss.updated_on updated_on
, iss.estimated_hours pv
, iss.estimated_hours * iss.done_ratio / 100 ev
, tim.hours ac
from
issues iss
left join (
select
issue_id
, sum(hours) hours
from
time_entries
group by
issue_id
) tim
on iss.id = tim.issue_id
"
}
}
output {
elasticsearch {
}
}

中に記載されているSQLでは、下記5つの値を取得します。

SQL上の項目名 Redmine上の項目名
due_date 「期日」
updated_on 「更新日」
pv 「予定工数」
ev 「予定工数」×「進捗率」
ac 「作業時間の記録」

この「redmine.txt」も「C:\elastic\logstash-5.1.2\bin」に配置。

結果的に、下記のようなフォルダ構成になります。

C:\elastic
└elasticsearch-5.1.2
└kibana-5.1.2-windows-x86
└logstash-5.1.2
└bin
└mysql-connector-java-5.1.39-bin.jar
└redmine.txt

では、ElasticSearchを実行します。
「C:\elasticsearch-5.1.2\bin」フォルダで下記のコマンドを実行。

elasticsearch.bat

コマンドプロンプトの右下に”started”と表示されたら起動完了です。

次にLogstashを使って、RedmineのデータをElasticSearchへ取り込みます。
「C:\elastic\logstash-5.1.2\bin」フォルダで下記コマンドを実行。

logstash.bat -f redmine.txt

取り込みが完了しました。

次に、Kibanaを起動します。
「C:\elastic\kibana-5.1.2-windows-x86\bin」フォルダで下記コマンドを実行。

kibana.bat

Kibanaが起動しました。

では、Kibanaを表示します。ブラウザで http://localhost:5601を開く。

[Configure an index pattern]という画面が開くので、[Time-field name]に”due_date”を指定します。

そして、[Create]をクリック。

そして、左側の[Timelion]をクリックすると、Timelionの画面が開きます。

グラフが出ましたね!

次は、少し見やすくするために、グラフエリアを最大化します。
グラフにカーソルを当てると[Full screen]ボタンが表示されるのでクリック。

するとグラフが最大化されます。
そして、次は表示期間を変更します。右上[Last 15 minutes]ををクリック。

すると日付が選べます。今回は[Last 1 Year]をクリック。

次に、画面右上あたりの[Last 1 Year]をクリック。

グラフが大きく見やすくなりましたね。

3.EVM 表示

では、.es(*)という記載を
.es(metric='sum:pv', timefield='due_date').cusum().label('[累積]pv')
に変更します。

PVの累計が期日別に表示されました。

記載の意味は下記の通りです。

  • .es(metric):表示する項目を指定する。今回はPVの合計を指定。
  • .es(timefield):X軸の項目名を指定する。今回は期日(due_date)を指定。
  • .cusum():累積表示するという意味。

次は、.es(metric='sum:pv', timefield='due_date').cusum().label('[累積]pv')という記載を

.es(metric='sum:pv', timefield='due_date').cusum().label('[累積]pv'),.es(metric='sum:ev', timefield='updated_on').cusum().label('[累積]ev')
に変更します。

すると、EVの累計が更新日別に表示されます。

記載の意味は下記の通りです。

  • .es(metric):表示する項目を指定する。今回はEVの合計を指定。
  • .es(timefield):X軸の項目名を指定する。今回は更新日(updated_on)を指定。
  • .cusum():累積表示するという意味。

次は、.es(metric='sum:pv', timefield='due_date').cusum().label('[累積]pv'),.es(metric='sum:ev', timefield='updated_on').cusum().label('[累積]ev')という記載を

.es(metric='sum:pv', timefield='due_date').cusum().label('[累積]pv'),.es(metric='sum:ev', timefield='updated_on').cusum().label('[累積]ev'),.es(metric='sum:ac', timefield='updated_on').cusum().label('[累積]ac')
に変更します。

すると、ACの累計が更新日別に表示されます。

これで、PVとEV、ACが表示されましたね。

さらに、CPIも併記させます。

左下の[Exit full screen]をクリックし、グラフの大きさを元に戻します。

そして、右上の[Add]をクリック。

グラフが追加されました。

そして、.es(*)という記載を
.es(metric='sum:ev', timefield='updated_on').cusum().divide(.es(metric='sum:ac', timefield='updated_on').cusum()).label('cpi').yaxis(min=0.75, max=1.25)
に変更すると。

CPIが表示されました。

記載の意味は下記の通りです。

  • .divide():割り算するという意味。今回は、EV÷ACを指定。
  • .yaxis():Y軸の表示範囲を指定する。今回は、0.75~1.25を指定。

これでTimelionの左側に、PVとEVとAC。右側にCPIが併記されました。

最後に

今回は、EVMグラフを表示しました。

いかがでしたでしょうか?
RedmineをKibana+Timelionと組み合わせることで、グラフ表示が可能になり、結果的にプロジェクト状況の把握が容易になります。

本記事が、皆様のプロジェクトマネジメントに役に立てば幸いです。

なお、次回以降私がブログを執筆する際は、グラフのドリルダウン、プロジェクトダッシュボードの構築、ダッシュボード画像のメール配信に関する方法を記載していく予定。

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今後ともよろしくお願い致します。

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