フューチャー技術ブログ

CHAdeMO vs コンボ EV充電規格を比較する

はじめに

こんにちは。TIG DXユニットの村上です。

大手自動車メーカーが続々とEVを発表したり、EUでは2035年にガソリン車の新車販売が禁止になったりと、近年電気自動車業界が盛り上がりを見せています。

EVといえば充電しなければならないのが特徴です。充電ステーションにはスマホのLightningやUSBなどのように、充電するための対応規格が存在します。今回はEVの充電規格について解説したいと思います。

充電ステーションの通信規格

充電ステーションとEVの通信規格は多数存在し、シェア争いが過熱しています。主要な規格をまとめると、以下のようになります。

項目 CHAdeMO GB/T テスラ CCS1 CCS2
規格制定国 日本 中国 アメリカ アメリカ ドイツ
デジタル通信規格 CAN CAN CAN PLC PLC

CCS1とCCS2は通称コンボと呼ばれています。
テスラは独自規格を採用していますが、専用の変換アダプタを使うことによってCHAdeMOで充電することができます。

CHAdeMO

上記で示したように、充電規格は多数存在しますが、現在はCHAdeMOへの統一化の動きがあります。

実際に2020年にCHAdeMO、GB/T、コンボに互換性のあるCHAdeMO3.0が完成しました。

チャデモ3.0

参考:https://www.chademo.com/ja/chademo3-0/

現在CHAdeMOの充電ステーションは欧州を中心に全世界で35600台以上普及しており、世界最大のカバレッジを誇っています。規格上の最大出力は900kWです。

CHAdeMOの充電シーケンス

CHAdeMOではEVとCANによってデジタル通信を行いながら充電を進めます。

充電の手続きをざっくりとまとめると以下のようになります。

  1. EVと充電ステーションを接続
  2. EVと充電ステーションの互換性を確認し、問題なければEVが準備完了状態に移行
  3. 車両コネクタロック
  4. 充電ステーションから給電開始
  5. EVから充電停止命令を送ることで充電終了
  6. 車両コネクタロック解除
  7. 充電ステーションで支払い手続きを行う

車両コネクタロックとは、充電コネクタがEVのプラグから離れないようにするための物理的なロックです。

安全面でのロックであることはもちろんですが、充電自体にしばらく時間がかかるため、充電を開始してからその場を離れることがあります。その際に風などで自然に外れたり、他人が勝手に外したりすることを防ぐ目的もあります。

また、このロックが解除された瞬間にEVとのデジタル通信が切断されます。

さらに給電が行われている最中は充電ステーションとEV間で以下のデータがやりとりされています。

充電ステーションから送信 EVから送信
充電シーケンス管理番号 充電シーケンス管理番号
出力可能電圧値 電池総容量
出力可能電流値 電池耐久上限値
電池不適合 最大充電時間
車両コネクタロック 充電電圧上限値
充電システム異常 車両充電可能
充電器状態 充電電流指令値
現在出力電圧値 充電システム異常
現在充電電流値 車両シフト位置
残り充電時間
充電器異常
充電システム故障

参考:https://kikakurui.com/d6/D61851-24-2014-01.html

これらのデータを用いてリアルタイムで充電状態を監視し、異常が発生した場合は安全にかつ素早く停止するようになっています。

CHAdeMOは物理的な安全面への配慮が徹底している規格です。

コンボ

コンボは欧州で生まれた規格で、デジタル通信はPLCを用いて行われます。

Wikipediaによると規格上の最大出力は350kWになることがアナウンスされています。

また、コンボは料金の支払い方法に大きな違いがあります。

コンボの充電シーケンス

コンボでは支払方法を予め設定しておくことができます。

支払方法によって充電手順が若干変わってきますが、以下で一例を示します。

  1. EVに支払方法や契約情報をセットしておく
    • 充電ステーションへの直接支払い
    • EVへの自動課金
  2. EVと充電ステーションを接続
  3. EVから指定の支払方法を送信(ここではEVへの自動課金を選択したと仮定)
  4. 充電ステーションで支払い契約情報の承認
  5. EVから充電許可信号を送信
  6. 充電ステーションから給電開始
  7. 充電終了
  8. 充電ステーションから課金額をEVに送信

このように、コンボではユーザの認証情報が充電コネクタを通して行われるケースがあるため、情報セキュリティ的な観点で安全性が高い設計となっています。

CHAdeMOとコンボの比較

CHAdeMOとコンボを比較した表が以下になります。

項目 CHAdeMO コンボ
普及地域 世界中 欧州
最大出力 900kW 350kW
認証情報の通信 なし あり
規格の設計思想 物理的な安全性重視 データのセキュリティ重視

スペックを比較すると現状はCHAdeMOが優勢と言えそうです。
しかしEV市場は今後さらに盛り上がっていくと思われるので、今後どうなっていくか注目していきたいですね。

おわりに

最後まで読んでいただいてありがとうございました!

2021年末にはトヨタがEVを大量に発表するなど、国内でもEVに対する盛り上がりが本格的になってきました。将来的には日本でもガソリン車に対する課税や販売制限などが設けられたりするのでしょうか?

EV市場の今後の動向には目が離せませんね。

参考資料