はじめに
HealthCare Innovation Group(HIG)所属の山本です。
2021年10月に新卒入社し、初のブログ投稿となります。
この記事は「秋のブログ週間」の7記事目です。
読書の秋ということで、ヘルスケアという部署に縁がある本を読んでみようと思いました。
読んでみたのはこちら、「AIファースト・ヘルスケア」です。
書籍の概要
書籍のタイトルを一見すると、画像認識や強化学習などなど昨今次々に新しい技術が開発され続けている機械学習を医療現場に活用した事例紹介や技術的課題が書いてあるのかと当初は思いました。
ですが、本書では「AIは機械学習以上のものである」ということを大きなコンセプトとしており、
機械学習に関する技術的な詳細を扱う内容ではなく、医療現場の課題を考慮し、実際に医療の現場の中心に幅広くAIを導入するための方法について議論するといった内容になってます。
本書が機械学習に焦点を当てるのではなく、あくまでAIとして扱っている思想については以下の引用で納得できる部分があります。
AIが機械学習と同じものだと見なしてしまうと、インテリジェントシステムを構築するために使用するソフトウェア郡のうち、機械学習出ない部分を無視したり否定してしまうことになります。さらに悪いことに、AIに何ができるかという私達の想像や知識は、機械学習によって実装可能な機能だけに限定されてしまいます。
章立てとしては以下のようになっており、興味がある章からでも比較的読みやすい構成になっています。
1章 AIの神話と現実 |
書籍の感想
「AIファースト・ヘルスケア」とは?
この書籍の3章以降では、AIを医療現場に現状活用できること、今後の課題について医師や患者、企業を始めとした様々な視点から議論しています。
- IoTデバイスを用いた血圧モニタリング、管理
- 処方薬のボトルキャップにセンサーをつけることでの服薬・治療管理
- 医師の業務効率化、治療補助
- 保険適応や診療報酬請求の自動化
実際に挙げられている例のいくつかは研究レベルでの実施、あるいは一部限定された現場での適応は事例としてあるものです。
ですが、これらのAIが世界中の医療現場全体へ適応されているか? という疑問については2022年時点では残念ながらNoと言わざるを得ないと思います。
以下書籍の引用ですが、実際にあらゆる面へのAIの適応性を考え、医療を再構築するという点において、「AIファースト・ヘルスケア」の視点は取り入れていく必要があると感じます。
AIファースト・ヘルスケアは、AIファースト企業と同義ではありません。AIファーストは技術的な声明ではありません。ヘルスケア分野の既存の企業がテクノロジー企業と競合することでもありません。AIをあらゆる面に適応することでペイシェント・ジャーニー、患者の体験、患者の治療に違いがでるかどうかを考えることです。あるいは、ICU(集中治療室)や家庭、その他のさまざまな場所の環境やインテリジェント・オブジェクトにAIを導入することで、医療を再構築することができます。
「個別化医療」について
書籍では主に3章で触れられていますが、”個別化医療”といったトピックはAIを医療に適応する上で今後大きなトピックになるのではないかと考えているため興味深かったです。
書評から外れていくためあまり深くは触れませんが、日本でも近年、「医師主体の医療」から「患者主体の医療」へと移り変わるような流れがあります。
例としては、「インフォームドコンセント」といった、医師から患者が病気と治療について説明を受け、同意した上で治療を行うことであったり、「セカンドオピニオン」といった、現在の主治医ではない他の医師から治療法の意見を聞く、といったことなどですね。
この時代の1歩先としては、「患者に個別化された医療」が実現される可能性も十分考えられます。
そのような時代では本書で触れられているように、AIの適応が大きなインパクトを発揮するのではないでしょうか。
まとめ
“医療にAIを導入する入門書”という観点で記載されている本書ですが、1章、2章ではAI・機械学習とはそもそもなんなのか? といった導入から始まり、各章のトピックでは様々な視点から”AI”をどのように医療現場に導入できるのかといったことが書かれており、興味深いです。
実際に医療現場やそのシステムに携わる方は自分が思うところがあるトピックを読んでも面白いとおもいますし、医療システムに関して初めて触れる方も最初から読めばわかりやすい構成となっています。
“AI×医療”というトピックが気になる方にはオススメしたい書籍です。