フューチャー技術ブログ

CircleCIでPullRequest作成時の負荷を軽減する

はじめに

こんにちは。
フューチャーアーキテクト株式会社、TIG/EXユニット所属の宮永です。

※TIG(Technology Innovation Group)はテクノロジーカットでお客様の課題解決を行う部門です。
中でもEX(Energy Transformation)ユニットは2022年に新設されたエネルギー業界特化型のコンサルティング集団で、「エネルギー×テクノロジー」をコンセプトにエネルギーサプライチェーン全体での需給の最適化やレジリエンス強化を図り、地域の活性化やビジネスモデルを変革することで透明性の高いフェアなマーケット形成を目指します。

本記事ではCircleCIでGitHubのPR作成時の負荷を軽減するために、PR作成者の自動アサインおよびラベルの付与を自動化した話をご紹介します。

経緯

CircleCIでGitHubのPullRequest作成時の負荷を軽減したいと思った経緯について説明します。

私が所属するチームのブランチモデルは簡易的なgit-flowモデルに則っており、maindevelopfeatureの3つのブランチで運用しています。

デフォルトブランチをdevelopとして、改修する時はdevelopブランチからfeatureブランチを切ります。改修が完了したらfeaturedevelopブランチにマージして、リリースするタイミングでdevelopmainブランチにマージします。

最近まで、リリースするときにはdevelopmainへのPullRequestを手動作成する運用を行っていましたが機械的な作業なのでgit-pr-releaseを使って自動化しました。

git-pr-releaseの導入はこちらのSongmuさんの記事が非常に参考になりました。

余談にはなりますが、弊チームはSongmu/flextimeのヘビーユーザーであり、非常にお世話になっております。時刻操作系のGoのテストをする時はflextimeが欠かせません!

git-pr-releaseの導入に合わせてGitHubの標準機能であるリリースノート自動生成も導入しました。

以下のymlファイルをリポジトリの.github配下に格納するだけでリリースノートを自動生成できます。

release.yml
# .github/release.yml

changelog:
exclude:
labels:
- ignore-for-release
authors:
- octocat
categories:
- title: Breaking Changes 🛠
labels:
- Semver-Major
- breaking-change
- title: Exciting New Features 🎉
labels:
- Semver-Minor
- enhancement
- title: Other Changes
labels:
- "*"

release.ymlについて少し説明します。-title-labelタグが必須項目であり、-titleにはリリースノートのセクションを、-labelにはそのセクションに記載するPullRequestのラベルを記載します。

例えば、前回リリース時から今回のリリースまでにmainにとりこまれたenhancementラベルをもつPullRequestはすべてExciteing New Featuresのセクションに記載されるようになります。

release.ymlを作成したらリリース時にGenerate release noteを押下するだけでリリースノートが自動生成されます。

image.png

GitHub標準機能を用いずにtagのPUSHをトリガーにCircleCIで自動化する場合は当技術ブログの過去記事が参考になると思います。

今回、「CircleCIでPullRequest作成時の負荷を軽減したい」と思った経緯ですが、このリリースノートの自動生成が背景にあります。

既に記載したように自動生成したChangeLogはPullRequestのラベルに依存しているため、きちんと運用をまわすには、メンバー全員にラベルの付与を徹底させる必要があります。

この「きちんとラベルを付与する」というのは簡単な作業に思えますが案外忘れてしまいがちです。せっかくリリースノートの自動生成まで行ったのですから、ラベルの付与も自動化してしまいたいと思い、CircleCIベースでラベルの付与を自動化しました。

ラベルの振り分け方

さて、ラベルの振り分け方ですがいくつか方法が考えられます。例えば特定のディレクトリの変更に依存してラベルを付与する方法です。

これを実現するにはactions/labelerを利用するのが最も導入コストが低いと思います。

他にはブランチ名に依存してラベルを振り分ける方法なども考えられます。今回私が採用したのはブランチ名に依存してラベルの振り分けを行う方法です。

ブランチ名ベースでラベルを振り分ける方法を採用したのは、弊チームのリポジトリが複数サービスが含まれたモノリポ構成であることが大きな理由です。

一部機能は同じ階層のファイルを共有していたりするため、果たして改修部分がservice Aの改修なのか、service Bの改修なのかはコードを見ないと判断できません。ブランチ名ベースでラベルの振り分けを行えば正確にラベルを付与できます。

そこで、「actions/labelerにそんな機能搭載されていないかな?」と思い、確認しましたが2020年にIssue#54が起票されてから2023年現在もOpenのままで、簡単に導入とはいかないようです。

加えて、諸事情がありGitHub ActionsではなくCircleCI上に導入したかったので、actions/labelerの導入は見送りました。

GitHub CLIの利用

どうやら、自前でGitHubAPIを操作する必要が出てきそうでしたので、まずはGitHub CLIでラベルの付与操作などがサポートされていないかを調査したところ、それらしい機能がサポートされていることがわかりました。

GitHub CLI gh pr edit

GitHub CLIをインストールして、以下コマンドを実行することでPullRequestを操作できます。

gh pr edit [<number> | <url> | <branch>] [flags]

[<number> | <url> | <branch>]を空のまま実行した場合、現在チェックアウトしているブランチに対して実行されます。

flagsには以下オプションがサポートされています。

--add-assignee <login>
Add assigned users by their login. Use "@me" to assign yourself.
--add-label <name>
Add labels by name
--add-project <name>
Add the pull request to projects by name
--add-reviewer <login>
Add reviewers by their login.
-B, --base <branch>
Change the base branch for this pull request
-b, --body <string>
Set the new body.
-F, --body-file <file>
Read body text from file (use "-" to read from standard input)
-m, --milestone <name>
Edit the milestone the pull request belongs to by name
--remove-assignee <login>
Remove assigned users by their login. Use "@me" to unassign yourself.
--remove-label <name>
Remove labels by name
--remove-project <name>
Remove the pull request from projects by name
--remove-reviewer <login>
Remove reviewers by their login.
-t, --title <string>
Set the new title.

今回利用するのは--add-labelです。

CircleCIの設定

GitHub CLIでなんとかなりそうなことが判明しましたので、あとはCircleCIでの実行環境です。

利用者の多そうなツールなのでOrbsで環境が提供されていないかなと思い探してみたところ、最適な環境を見つけました。circleci/github-cli

あとは、このOrbsを利用してGitHub CLIコマンドを実行するだけです。

以下、設定ファイルです。

Orbsとは
OrbsはCircleCI 2.1で追加された機能で、CircleCIの設定を再利用可能なパッケージとして提供したものです。
Slack連携などは利用している方も多いのではないでしょうか。Slack連携のOrbs

config.yml
# .cicleci/config.yml

version: 2.1

orbs:
gh: circleci/github-cli@2.2.0

executors:
base:
docker:
- image: "cimg/base:stable"

jobs:
add-label:
executor: base
working_directory: ~/repo
steps:
- gh/setup:
version: 2.23.0
- checkout
- run:
name: Add-Label
command: |
bash add_label.sh
workflows:
version: 2
add-label:
jobs:
- add-label

-gh/setupでGitHub CLIの初期設定を行います。この際のCicleCIの環境変数にGITHUB_TOKENの設定が必要です。

GITHUB_TOKENの権限
GITHUB_TOKENの権限はPullRequestに対して操作を行うためrepoの権限が必要です。GITHUB_TOKENのアクセス許可

GitHub CLIのセットアップ完了後ブランチにチェックアウトします。
その後GitHub CLIのコマンドを記載したShellスクリプトを実行しています。

以下、実行対象のShellスクリプトです。

add_label.sh
#!/bin/bash
set -euxo pipefail
prinfo=$(gh pr view --json author,headRefName --jq .author.login,.headRefName)
assignees=$(gh pr view --json assignees --jq .assignees[].login)
labels=$(gh pr view --json labels --jq .labels[].name)

# 取得した情報を配列に変換して変数に格納
mapfile -t infoarray <<< "$prinfo"
author="${infoarray[0]}"
branch="${infoarray[1]}"

# PR作成者を自動アサイン
if [[ $assignees == "" ]]; then
echo "assigne" "$author"
gh pr edit --add-assignee "$author"
fi

set "${labels}"
attachlabels=("bug" "docs" "refactoring" "enhancement" "fix")
# ブランチ名にそってラベル付与
for name in "${attachlabels[@]}"
do
if [[ $branch == *$name* ]]; then
if printf '%s\n' "${labels[@]}" | grep -qx "$name"; then
echo "$name" "label is already attached"
else
echo "attach" "$name" "label"
gh pr edit --add-label "$name"
fi
fi
done

exit 0

GitHub CLIを利用することで複雑なスクリプトを書かずにすみました。

ラベルの自動付与のついでにAssigneesにPullRequest作成者の付与も自動化しています。

ブランチ名やPullRequest作成者の情報はgh pr viewコマンドで取得します。とても便利なことに--jqオプションでフィルタリングできます。

-c, --comments
View pull request comments
-q, --jq <expression>
Filter JSON output using a jq expression
--json <fields>
Output JSON with the specified fields
-t, --template <string>
Format JSON output using a Go template; see "gh help formatting"
-w, --web
Open a pull request in the browser

試しに、gh pr view --json authorを実行してみると、以下のレスポンスを取得できます。

❯❯❯ gh pr view --json author
{
"author": {
"id": "XXXXXXXXXX",
"is_bot": false,
"login": "XXXXX",
"name": "XXXXX"
}
}

これをjqをつかってフィルタリングしてauthor変数に代入するには以下のようにします。

author=$(gh pr view --json author --jq .author.login)

--jsonオプションはカンマ区切りで複数指定ができますので以下のようにして1回のリクエストにまとめることができます。

prinfo=$(gh pr view --json author,headRefName --jq .author.login,.headRefName)

あとは事前に設定してあるラベル名にブランチ名が合致しているかを確認して文字列一致していればPullRequestにラベルを付与していきます。

Shellスクリプト初心者のため、こちらの記事を参考にさせていただきました。

set "${labels}"
attachlabels=("bug" "docs" "refactoring" "enhancement" "fix")
# ブランチ名にそってラベル付与
for name in "${attachlabels[@]}"
do
if [[ $branch == *$name* ]]; then
if printf '%s\n' "${labels[@]}" | grep -qx "$name"; then
echo "$name" "label is already attached"
else
echo "attach" "$name" "label"
gh pr edit --add-label "$name"
fi
fi
done

動作確認

CircleCIのOnly build pull requests
今回CircleCIの発火はPullRequestが作成されている状態を想定しています。そのためリリースフローに支障がない場合はこちらに記載のOnly build pull requestの設定をONにすることをおすすめします

▼成功すると以下のようにPR作成時にブランチ名にしたがってラベルの付与とPR作成者の自動アサインができます

image.png

GitHubアカウントのユーザー名
add_label.shでは、author.nameがスペースで区切られていないことを想定しています。
アカウント名にスペースが含まれる場合は、author.nameを別にリクエストして変数に格納するなどしてください。

少しハマったところ

circleci/github-cli- gh/setupは何も指定しないとGitHub CLIのデフォルトバージョンは2.3.0です。
記事執筆時の2023年2月18日にローカルにインストールされていたGitHub CLIは2.23.0でした。

❯❯❯ gh --version
gh version 2.23.0 (2023-02-08)
https://github.com/cli/cli/releases/tag/v2.23.0

どうやらバージョン2.3.0ではgh pr view --json authorのレスポンスにnameという属性はなかったようで、ローカルのバージョンとの差分に気づかずにPullRequest作成者の情報の取得ができずに悩んでいました。(スクリプトではnameではなく、loginで取得しています)
バージョン情報を事前に確認しておくことは大事ですね。
- gh/setupにはversionを指定できるので、最新のバージョンを確認しつつ指定してください。

- gh/setup:
version: 2.23.0

おわりに

今回、諸事情がありGitHubActionsではなくCircleCIで実装しましたが、GitHubActionsであればGitHub CLIはプリインストールされているので本記事よりも簡単に導入できます。

まだ自動化の運用を初めて日が浅く、今後運用を続けていく中で改善点などでてくるかと思いますが、現状では満足しています。

開発体験の向上は生産性の向上に直結すると思っていますので、今後も機械的な作業は積極的に自動化していきたいです。