秋のブログ週間2023の6本目です。
導入
小学校を卒業して云十年。
この年になって100マス計算のドリルを毎日1問解いているTIGの原木です。
念のため、100マス計算を知らない方に説明すると、
100マス計算とは、下記のように縦横にランダムに数字を並べて、
四則演算(足し算、引き算、掛け算、割り算)のどれか1つにしたがって、
縦と横の数字を計算した答えを(一般的には)左上から順番に空白へ埋めていくものだ。
100マス計算をするために必要なのは、以下の3つ。
100マス計算の白紙、シャーペン、そしてストップウォッチ。
100マス計算をやるのにストップウォッチは欠かせない。
時間という制限に追われて初めて真価を発揮するからだ。
スマホの時計アプリで開始ボタンを押した瞬間、自分は小学二年生だったころの自分と接続する。教室の片隅でクラスメイトと教室の時計を見つめながら呪文のように九九を唱えていたあの頃に。
何代目かもう忘れてしまったグラフギア500が走る音だけがこだまする。7,8あたりが来た時にかすかに脳裏から訴える不調音に耳をそばだてる時間などない。
考える間もなく次の問題へ移る。書き損じに消しゴムを使う余裕などない。とっさに6を伸ばして4に書き換える。0と1が左にあればそれはもうボーナスステージだ。計算すらやめて必死に書き写す。あと、3行。あと、2行。ラスト!
…そして、スプラトゥーンの鮭狩り1ゲームにも満たない時間が終わりを告げる。
調子がいい時で1分20秒、悪い時で1分30秒、そこから上がる気配はない。
情けないがそれが今の自分だ。
右手の外側を鉛筆カスで真っ黒にしながら中学受験の勉強をしていた当時の自分ならもっと早かっただろう。栄光学園だけに過去の栄光だけどね、HAHAHA1
計算ドリルの魅力
私はドリルに飢えていた。いや、正確にいえば、何も考えずに一心不乱に書きこむという経験に飢えていた。
そのことに気づかされたのは、とある若手社員に質問を受けたことがきっかけだった。会社のチームメンバーに質問されたことから流れで「ソフトウェアテスト技法練習帳」をやることになり、はっと思ったのだ。
https://gihyo.jp/book/2020/978-4-297-11061-1
昭和生まれのアラサーでも公文式はやるのは楽しい、と。5
公文式の要領は、ちょっと引っかかりを感じるが、深く考え込むまでもない問題を、パターンを変えて何回も何回も繰り返すことだ。
この体験に当てはまる仕事は残念ながらインフラエンジニアには少ない。
ソフトウェアを書く機会はそれなりにあるが、ちょっとでも似た作業が続けば怠惰の登場だ。それどころか、最近では社内用のAzure OpenAI Serviceを利用して、ちょっとでも楽をすることが増えてしまった。
そもそも、仕事で解答を問われる仕事は大体次の3パターンに分かれる。
- 今までやったことがない新規性が非常に問われる問題
- 深く考えぬき、悩んでも、正解がはっきりしないが回答は求められる問題
- 過去にどこかで解決した問題、その解答の繰り返し
そのどれでもない体験が計算ドリルには秘められている。
正解はあらかじめ与えられている。そこにブレはない。
人の顔をした新規の案件が反転して正解がない泥沼案件へと変わる恐れ、そこから必死に脱出しようとするストレス地獄もここにはないのだ。
ちょっと考えられれば解ける問題というのも重要だ。1分ですら長すぎる。深入りも不要だ。AIじゃないし、思考の連鎖は1回でいい。
もちろん、後から振り返ればいくらでも課題は見えてくる。1+1=2であることにすら考察が求められる世界もあることはある。だが、少なくともここでは深く考えなくていいのだ。ちいかわである。
そしてゴールが明確なのもいい。
短い時間の中で、思考の100m走に追われる中でいつの間にか後味よく終わる。計算ドリルたーのしーという後味とともに、忘れていた四十肩が返却されてくる。
それらすべてが、自分が長く続けられる理由だろう。
この計算ドリルの体験を横展できないか?
計算ドリルの魅力を踏まえると次のように分析できるだろう。
これらの美点を抑えたうえで、IT業界の仕事に役立つ書籍や問題集はないかと探してみた。
ソフトウェアテスト技法練習帳 ~知識を経験に変える40問~
「同値分割法と境界値分析」「デシジョンテーブル」「状態遷移テスト」「組み合わせテスト」の4観点による、ソフトウェアテスト技法の練習問題集。
計算ドリルの魅力に嵌まるきっかけとなった書籍。
構成が非常にわかりやすく工夫されており、左のページに設問、右のページにジャポニカ学習帳のようなメモ欄、そしてページをめくると答えという風になっているので、実本を購入した方が良い。
100マス計算と同じで、とりあえずシャーペンを動かしてる間に思考がまとまるという懐かしい追体験もできる。
Python初学者のためのPandas100本ノック
Pandasの基本的な使い方について100ケースの問題をjupyter notebookでひたすらコーディングしながら学べる。
去年、BIサービスのシステム構築に関するプロジェクトにいた時に、上物のアプリケーションで何をしているのか知りたいなと思って初めてPandasに手を出した時に、一番最初にお世話になった。ありがたい。
10ケースぐらいに分割して、写経->解答というパターンでかならず2回踏むことで、考える前に入力できるようになったら、圧倒的に徳を積み重ねることができた。
応用情報技術者試験ドットコム
応用情報技術者試験の試験問題をひたすら解くことができる。
お勧めの使い方は「過去問道場」-> 「分野を指定して出題」-> 「出題ジャンルを一点に絞り込み/計算問題を出題しない」を選択して、計100問ぐらいをわからなくていいので毎日解くことだ。
もちろん、これは最初から計算ドリルという使い方はできない。スルメ化により計算ドリルと化すまでには相応の時間がかかる。だが、中身の把握より先に「問題」と「解答」が分かった状態に至るころには、無味乾燥な解説に理解も追いつくはずだ。
最後に
以上が計算ドリルの魅力と、それを体験できる書籍の紹介である。
もし他に計算ドリルのような体験ができる書籍があれば、教えていただきたい。
次は高瀬さんの土地勘に頼らずに地の利がある場所をみつける方法です。
- 1.神奈川にある高校の名前。おじさんとなったOBの1割が必ず言うはず(個人調べ)。 ↩
- 2.ゼルダの伝説のBotW->TotKで試練の祠の周回はやめてしまった。1つで充分ですよ。 ↩
- 3.たとえば、大河ドラマを見ながら手慰みでやる無限プチプチと、時計で測りながらつぶしていく競技プチプチは圧倒的に異なる。 ↩
- 4.最近、クラウドベンダー系の資格試験で、100%完全に解答した!といえることが少なくなってしまった。実質80%ぐらい解答できて残りは正直あやふやだけど、その分野はチームで詳しい○○さんがいるからいっか...みたいなことが続いて、まずいのでは? と内心思っている。 ↩
- 5.同時に昭和生まれのアラサーは2025年に絶滅することにも気づいてしまった。自分も数少ない生き残りである。 ↩