フューチャー技術ブログ

「TEAM GEEK」を読んでメンバー視点で良いチームについて考える

秋のブログ週間2023、11本目です。

ITコンサルタントになって2年目。自分のタスクだけでなく周りも見えるようになってきた中で、「個人の技術」だけでなく「チームとしての地力」がプロジェクトの成功にとって、大きな役割を占めていると改めて感じることが増えてきました。そのため今回は、ITの現場におけるチームワークについての本を読もうとアマゾンを開いて一番に出てきたTeam Geekを読んだ感想や自分の思考を共有します。

本を読む前に考えていたこと

実際にITの現場に参画するまでは、他の業界よりドライで対面のコミュニケーションは少なく、成果物がより多くのことをものがたる現場だと思っていましたが、いざ飛び込んでみるとむしろ他の業界よりもより強力なチームとしての力が求められているのではないかということをひしひしと感じています。

他業界に進んだ友人の話を聞いていると営業などでは個人としての成績が全てで、お客さんとのコミュニケーションは重要なものですが、それはサービスを購入してもらうために関係づくりの一環で、チームとしてのそれとは違うものです。

それに対して、ITの現場では一つの成果物を大勢で作るにあたっての協力体制としての性質を持ったコミュニケーションが必要になるため、チームワークとしてどのように人と関わるかが重要になってきます。
ではそこで、「1メンバーである自分がどのようにチームにいい影響を与えられるのか?」、そう言ったことを求めてこの本を手に取りました。

今回の目的

  • ITの現場における「いいチーム」を確認する
  • 理想のリーダー像からチームにとって優良なメンバーを逆算する

結論ファースト:いいチームの定義

いいチームとは『強い文化』があるチーム
その文化はHRT(Humility:謙虚、Respect:尊敬、Trust:信頼)がベースになっている必要がある

ITの現場における「いいチーム」とは何か?

誰がチームを作ってる?

多くの人がいいチームとは、高いスキルを持ち合わせたメンバーを、さらに優秀かつ統率力に長けたリーダーがまとめ上げることで、できると考えているかもしれません。(あるいは自分のタスクだけを考えていて、チームとしてのそもそも完成度は意識していないかも…)

個々のメンバーが与えられたタスクをミス無くこなし、最終段階で全員が作ったものを機械的に組み合わせることで良いプロダクトが完成するならそれで問題ないかもしれません。

しかし多くの人が経験しているように、メンバーはミスをするし、バグの修正、結合のゴタゴタなどで現実はそう甘くありません。

筆者は優秀なチームを作り上げるのは優秀なリーダーではなく、「強い文化」だと言います。

強い文化とは

本書で定義されている「強い文化」はHRT(Humility:謙虚、Respect:尊敬、Trust:信頼)が根付いている状態とされています。こうした文化はチームリーダーが作るわけではなくメンバー全員んが作るべきものであり、そのようにして作られた文化は、チームが同じミスを犯すことを防ぎ、チームにとって有害な人からチームの生産性を守ってくれます。さらには望ましい文化を持ったチームには似た性質を持つ優秀な人材が引き寄せられるため、より生産的で強固なチームが出来上がります。

上記に挙げられたHRTの3項目はごく当たり前のように聞こえます。大人として当然のことでしょうと。ただ、反例を探せと言われたら、身近にすぐに見つかるのではないでしょうか?(私はあります…)

問題にぶつかっても一人で抱え込んでしまうメンバーがいたり、コードへのレビューを自分への攻撃を思い込んで凹んでしまったり..。

それではどうのように対処し、「強い文化」を作ればいいのでしょうか?

強い文化を作るには

先に定義された「強い文化」をチームに根付かせるために意識必要なポイントについていくつか抜粋して紹介させていただきます。

  • エゴを捨てる
    わかりやすい例は、コードレビューの時に、指摘を建設的なものにするために自己主張を捨てる(技術の差を見せつけるようなマウントまがいのレビューはしない)、逆に指摘をもらう際に「自分は自分が書いたコードではない」と認識して、過剰に反応することなく、謙虚に受け入れる、といったことです。個人ではなくチームとしてのミッションにフォーカスすることが必要とされています 
  • 非同期のコミュニケーション
    ミーティングの参加人数を減らし、チャットや課題管理ツールを広く共有することで情報の風通しと効率が向上し、よりチームが集中すべきものに力を注げるようになります。ただ筆者は対面でのコミュニケーションをおろそかにすべきではないとも注意喚起しています。情報の共有を広げることはツールを利用することで可能になりますが、よりメンバー間に文化を染み込ませ強固にるために対面でのコミュニケーションは必要なものとされています。
  • 合意ベースでプロジェクトを進める
    意思決定プロセスでメンバーが責任を持てるようにすることで文化の根付きを強化することができます。トップダウン型のチームでは、優秀なリーダーがそうでないメンバーにオーダーする形になり、メンバーの自己選択機会が奪われてしまい、各メンバーが文化を作ることに役割を持てなくなるため、「強い文化」は育ちません。また、優秀なメンバーは裁量範囲の広いチームを好むため、チームのレベルがますます上がる傾向になります。

強い文化を作れるチームリーダーとメンバーとは?

ここまでいいチームの定義とその中核である「強い文化」について確認してきましたが、ここからさらに解像度を上げて、強い文化を作れるチームリーダーとはどのようなリーダなのかを掘り下げながら、そこから逆算して、リーダーと化学反応を起こし「強い文化」づくりに貢献できるメンバー像について考えていきたいと思います。

エゴを捨てる

エゴからの脱却は強い文化づくりの中で言及されていましたが、いいチームリーダーについて語る際にも再度登場します。それほどチームにとって大事なことであり、リーダーにとってはメンバーを信頼してマイクロマネジメントしないことがこれに当たります。

いいチームリーダーになるために、すべての事象を正しく把握して、ことごとく正していく必要はなく、メンバーへの「質問」を駆使することで、メンバーに責任感を芽生えさせろとあります。

  • 逆算される理想のメンバー像
    • 不安を抱かせず、やり切る力を持っているメンバー
  • 説明
    • リーダーが不安になりそうなポイントを先回りして解消し、いちいち確認されずとも何を行なっているかが伝わる透明性を保ち、自分でタスクを推進できる姿を見せることでリーダーは意思決定に集中でき、メンバーはより裁量を持って仕事ができるようになります

振る舞って欲しいように人を扱う

筆者はメンバーを信頼していないことを伝えたいのなら、メンバーを子供のように扱いなさい、と言っています。人は扱われたように振る舞ってしまう習性があるためです。

そのためリーダーが子供のように扱えば言われたことしかせず、自立性を持った人間として扱えば期待以上の成果を持ってくることもあるとされています。

  • 逆算される理想のメンバー像
    • 一段階上の働きを想像させられるメンバー
  • 説明
    • 逆に言えば、意識的に扱われたいように振る舞うことが重要になります。任せられたタスクを期待以上の成果で応えることができれば、自分の能力を示し、リーダーがより大きな裁量権を与えたときにそのメンバーがどのような働きをしてくれるか想像できるようになます。書籍の中でも、自分の責任範囲を広げようとすることで、自分とチームのレベルの底上げにつながるとされています

幸せを追い求める

「強い文化」を作るリーダーはメンバーの心理状態を良い状態で保つことが上手いアマチュアの心理学者であると本書では言われています。

定期的なレクリエーションや、すれ違った際の会話でメンバーのストレスやプレッシャーを解消することがリーダーには求められます。

  • 逆算される理想のメンバー像
    • 感情を発信するメンバー
  • 説明
    • メンタル面のケアをする側にとって難しいことは、ケアの手段が適切かどうかが受け取る人間によって変わる点です。メンバー側から現在の状態を発信することで、チームの中の適切なコミュニケションの形を双方から擦り合わせることができ、各個人の負担軽減やチームのパフォーマンス向上につながります

まとめ

「Team Geek」を通して理想のチームの姿とリーダー像を再確認し、そこから逆算してメンバーに求められるものについて考えてみました。

チームを題材にした書籍ではリーダーの責務やミッションステートメントのような大きなテーマについて主に語られることが多い気がしていて、読み終わった後に、「結局何からすればいいんだ?」となりがちでしたが、ITという領域に絞り、さらにチームの文化に焦点を当てられていたこの本はチームのレベルを上げるために1メンバーができることをイメージしやすかったです。

技術力を上げていくのはもちろんんですが、チームとして捉えた時に、貢献できる余白を明確に見つけることができたので、曖昧にながちなチーム力に対しての取り組みですが、一つずつ実践して効果があるか確かめていきたいと思います。