はじめに
2023年11月にフューチャーにキャリア入社した引網康暁です。前職の総合商社で物流ビジネスに従事した後、現在は、フューチャーアーキテクトの物流サービス事業部で、物流DXのコンサルティングやビジネス・ディベロップメントをしています。
現在51歳。人生100年時代のリスキリングとして、働きながら大学院で人工知能の研究をしている私が、2023年9月に開催された人工知能学会ビジネス・インフォマティクス研究会に登壇して、研究発表をしましたので、その体験記をご紹介します!
人工知能学会ビジネス・インフォマティクス研究会
人工知能学会ビジネス・インフォマティクス研究会とは、経営に関連する知能情報技術を表すビジネス・インフォマティクスをキーワードとして、経営に関わる基礎から応用までの幅広い研究課題を対象に、経営分野において人工知能で取り組むべき課題を発掘する課題発掘型研究を目的とした、人工知能学会が開催する研究会です。
2023年9月23日と24日の2日間にわたり、慶應義塾大学三田キャンパスとオンラインのハイブリッド形式で開催され、16件の研究が発表されました。ビジネス・インフォマティクスを主題としている研究会であるため、社会的な課題や経営戦略への人工知能の応用に関する研究が目立っていた印象があります。また、9月という季節柄、研究の中間報告をここで発表し、多くの知見をお持ちの聴講者からのフィードバックを取り入れて修士論文に仕上げていく、という発表者も多くいらっしゃいました。
私の発表内容
物流の2024年問題という言葉をお聞きになられたことはありますか? 2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働の960時間上限規制等が適用され、労働時間が短くなることで輸送能力の不足が懸念される社会的な問題です。実は、商品を出荷する側の倉庫でも、トラックドライバーをお待たせできませんので、出荷業務の効率化のため、倉庫ロボットの導入が始まっています。
https://www.gov-online.go.jp/pr/media/tv/miraino/movie/20230920.html
倉庫ロボットは、倉庫で働いてくださるヒトとの協調システムであり、作業員の方々には身体の屈伸や段取り替えなど、さまざまな付帯作業が発生します。人手不足が待ったなしの課題である中、作業員の方々の疲労の軽減も考慮した業務の効率化が求められます。そこで、私は「倉庫ロボットによる稼働時間の最小化」と「作業員による作業時間の最小化」で構成される多目的最適化問題をイジングモデルを用いて求解することで、出荷業務の効率化につながる、最適な商品配置計画を明らかにしました。
・最適化された商品配置計画を可視化した一例当日は緊張してしまい、うまく発表できませんでしたが、聴講者の皆さまからたくさんのフィードバックを頂き、とても励みとなる機会になりました。研究の内容もさることながら、学会発表を機に、論文をまとめたり、プレゼンテーション資料を作成したりすることで、自分の考えが整理できたことが貴重な経験となりました。
イジングモデルとは
私が研究で使用したイジングモデルについても触れておきたいと思います。イジングモデルとは、粒子の量子力学的な内部自由度の1つであるスピンが格子状に整列し、定められた向き及びその反対向きの2つの向きだけをとり、最近接のスピン同士だけに相互作用があるとするモデルです[1]。
一般的なイジングモデルは、以下の式で示されるエネルギー関数で表されます。
イジングマシンの一種であり、量子焼きなまし法の原理に基づいて動くマシンを量子アニーリングマシンと言い、カナダのD-Waveが有名です。量子アニーリングマシンやイジングマシンは、世の中に数多く存在する、さまざまな組合せ最適化問題を解くための特化型マシンであり、物流の最適化にも力を発揮していくと期待されています。
まとめ
いかがでしたか? 今回のブログでは、人工知能関連の研究会で登壇した経験を書いてみました。こんな形でブログで発表するのであれば、もっとピシッとした服装の方が良かったかなとすこし反省しています。次回は5月に開催される人工知能学会全国大会での発表を目指して、研究を続けていきます!
参考文献
[1]松下貢、物理学講座 統計力学入門、裳華房、2019
[2]株式会社Fixstars Amplifyホームページ