はじめに
フューチャーアーキテクト物流サービス事業部の引網康暁です。現在、お客様の物流DXのご支援や、物流関連法改正に伴うCLO(Chief Logistics Officer:物流統括管理者)ご支援のコンサルティングを行っています。
物流DXの実践のためには、サプライチェーン上のデータの「可視化」やAIも活用した「最適化」が不可欠と考えており、コンサルタントとして自らの知識を高めておく必要があります。その一環として、2024年8月に行われたE資格2024#2を受験して合格しましたので、その体験記を綴ってみたいと思います!
E資格とは
E資格とは、日本ディープラーニング協会(JDLA)が認定するAI人材に関する資格のうち、エンジニアを対象とした資格で、ディープラーニングの理論を理解し、適切な手法を選択して実装する能力や知識を認定する資格となっています。
試験範囲(シラバス)は、機械学習のベースとなる数学から、機械学習・深層学習のモデルや手法、モデルを実装するための環境構築に至るまで、とても幅広い内容が問われます。さらに、理論のみならず、PyTorchまたはTensorFlowを利用した実装も含まれますので、Pythonの基礎的なコーディングスキルも求められます。
- 数学的基礎(確率・統計、情報理論)
- 機械学習(機械学習の基礎)
- 深層学習の基礎(順伝播型ネットワーク、深層モデルのための最適化、深層モデルのための正則化、畳み込みニューラルネットワーク、リカレントニューラルネットワーク、Transformer、汎化性能向上のためのテクニック)
- 深層学習の応用(画像認識、物体検出、セマンティックセグメンテーション、自然言語処理、生成モデル、深層強化学習、様々な学習方法、深層学習の説明性)
- 開発・運用環境(エッジコンピューティング、分散処理、アクセラレータ、環境構築)
E資格受験の「資格」を取得する必要があります
E資格受験のハードルが高い理由の一つでもあるのですが、E資格を受験するにあたっては、事前にJDLAの認定プログラムを過去2年以内に履修し、修了試験に合格しておく必要があります。つまり、E資格受験のための「資格」を事前に取得しなければなりません。私はコストパフォーマンスの良さげな認定プログラムを選択し(G検定合格者割引が受けられました)、2024年3月から受講を開始しました(すなわち、受験勉強期間は6か月でした)。
プログラムによって内容は異なるようですが、私が選択した認定プログラムは、オンラインでの動画講義(約25時間)を受講した上で、テスト(約400問)のクリアとコーディング課題(4問)の提出が修了の要件でした。
まず、オンラインでの動画講義ですが、いわゆる予備校みたいな感じの「ココが試験に出ますよ!」とか「ココは暗記しましょう!」のようなノリを勝手に期待していたのですが、全く違いました(自分の勘違い)。。。講義は試験範囲の基礎的な知識を一通り、均して説明するという内容でしたので、私の場合、単に講義を受講するだけでは、E資格本番の合格は難しかったと思います。なお、テストとコーディング課題は、ネットを漁ったり、ChatGPTも駆使したりして、なんとか6月に認定プログラムを修了することができました。正直なところ、この認定プログラムの修了だけでも「やりきった感」が出てしまったほどです。
受験勉強本番
さて、認定プログラムを修了し、E資格の受験資格を得て、ようやくスタート地点に立てました。ここからが受験勉強の本番となります。私は、以下の4つをバイブルとして勉強を進めました。
- ゼロから作るDeep Learning
「赤本」と呼ばれる、受験生必須の参考書です。この本は、フレームワークを一切使わずにディープラーニング(特に画像認識)をゼロから実装する!という、言わずと知れた名著です。私の場合、この本を精読しながら、そして、ただ単に読み込むだけでなく、コーディング(写経)して実際に手を動かしながら、2回転しました。 - ゼロから作るDeep Learning2(自然言語処理編)
こちらも同じく「赤本」と呼ばれる参考書で、word2vec、RNN、LTSMから、ChatGPTを生み出したTransformerの基盤技術であるAttentionまでが本当に分かりやすく解説されています。私はこの本の精読を2回転しました(写経はしていない) - ディープラーニングE資格エンジニア問題集
こちらは「黒本」と呼ばれる問題集で、私が勉強していた時期では唯一の問題集でした(E資格は過去問が公表されていません)。この「黒本」も受験生必須アイテムの一つで、「やらない」という選択肢はありません。私の場合、それこそ過学習を覚悟に7回転しました。実装問題はコードを写経したり、計算問題は式を自分で展開したりすることで、ようやく血肉になりました。何より手を動かすことが重要でした。
- JDLA公式例題
上記の「黒本」は発刊された時期がちょっと古いところが難点で、最新の試験範囲(シラバス)に対応できていない箇所があります(シラバスはしばしば更改されます)。そこで、認定プログラムを修了したタイミングで修了者に共有されたJDLA公式例題を何度か解き、問題演習の足りない箇所を補いました。
受験日当日から合格発表まで
受験にあたって、試験問題に関する守秘義務について誓約をしましたので、今回のブログでも、当日の試験問題については一切触れることができないこと、ご了承ください。試験はCBT(Computer Based Test)方式で、120分間で多肢選択式の約100問を解きます。見直し時間を考えると、1問をだいたい1分間で解いていかないといけないので、かなり時間にシビアな試験です。また、テストセンターの入場にあたっては、参考書や問題集は一切持ち込めませんし、ズボンのポケットの中身やメガネの裏までチェックされたセキュリティ面もとても印象的でした。
当日の自分の感触としては、「できた!」という問題が5割くらい、「ちんぷんかんぷん」という問題が2割くらい、「多分こっちだと思うけど。。。」という問題が3割くらいで、あまり手応えが無かったというのが実感です。その分、3週間後に無事に合格のメールを受け取ったときは本当にうれしかったです!結果的に、各分野ともに7~8割くらいが正答だったようで一安心しましたが、問題数の多くを占める深層学習の出来が合否を決める試験であるように思いました。
おわりに
私の場合、E資格受験を考え始めて、実際に「黒本」を目にした時の感想は「とっても難しい。。。(絶句)」というものでした。それでも、認定プログラムを修了し、問題集や参考書を手を動かしながら解き進めることで、なんとか合格することができました。この合格体験記がE資格取得に関心のある方に参考になれば幸いです。
お読みいただいてありがとうございました。