秋のブログ週間20244本目です。
はじめに
2023年10月にキャリア入社した西野です。
前職のメーカーでシステム開発に従事した後、現在は製造・エネルギーサービス事業部で、PLMの開発・導入に携わっています。フューチャーアーキテクトは「ロケーションフリー制度」が導入されており、私が所属する事業部は関東、中部、九州のメンバーが在籍しています。
先日、メンバーから「ふりかえり方法」について相談を受けたこともあり、多拠点のメンバーがフルリモートで働くチームにて実施した、チームビルディングを意識した「ふりかえりの方法」について書きます。
チームビルディングとは
まず、チームビルディングとは何かを確認します。
チームビルディングとは?具体的な手法・タックマンモデルについて解説 (日本能率協会マネジメントセンター)を引用すると以下のように解説されています。
チームビルディングとは、個人とチームの能力やスキルを最大限発揮することに重点を置き、チーム作りを行う方法です。
チームの目標を効果的・効率的に達成していくためにも、適切なチームビルディングが行われる必要があります。
チームビルディングはメンバー同士のパフォーマンスをUPするための取り組みであり、適切にチームビルディングをするには、いくつかのポイントがあります。
個人・チームの目標を決める
メンバー 一人ひとりの役割を決定する
メンバー同士で協力しあって問題を解決する
価値観を認めあう
リモートワーク環境下では、出社時と比べて物理的な距離があるため、これらのポイントを押さえながらチームビルディングをするのが難しく感じます。
- 「個人・チームの目標を決める」
- 「メンバー 一人ひとりの役割を決定する」
…については、普段の会議やリーダーとメンバーで実施する1on1でカバーができると思います。
しかし、
- 「メンバー同士で協力しあって問題を解決する」
- 「価値観を認めあう」
…については、メンバー同士で お互いの「持ち味」「行動の背景」 を知れるような機会が無いと難しいのではないでしょうか。
そこで、今回はチームで定期的に実施するふりかえりを利用して、お互いの「持ち味」「行動の背景」を知れるような活動ができないか考えてみました。
何をテーマにしてふりかえりをするか?
チームで実施するふりかえりにおいて、何をテーマにしてふりかえりができるか考えてみました。
①改善をテーマとしたふりかえり
ふりかえりのフレームワーク「KPT」を使って改善のためのふりかえりができると思います。「KPT」では「Keep(継続すること)」「Problem(問題)」を洗い出し、議論をすることで結論として「Try(次に取り組むこと)」を導くという流れで行われます。この方法では、次に取り組むことが明確になり、チームとしての改善策を考えられるメリットがあります。
しかし、メンバー同士の「持ち味」「行動の背景」については知ることは難しいのではないでしょうか。
②思ったこと、考えたことの共有をテーマとしたふりかえり
仕事中にふと思ったこと、考えたことをふりかえってもらうことで、メンバー同士で「持ち味」「行動の背景」の理解を深められないかと考えました。
例えば、ふりかえりで以下のようなことを挙げてもらいます。
- 自分に対して思ったこと
- 「あの業務は○○を意識してやったからうまくいった」
- 「あの業務は○○を意識すれば、もっとよくできたかも」
- 他の人に対して思ったこと
- 「Aさんのおかげでタスクが遅延なく完了できた」
- 「Aさんの業務のやりかた、○○でとてもよかったと思う」
ざっくばらんに自分の「持ち味」「行動の背景」を語ること、他者から自分の「持ち味」を教えてもらうこと、他者の「行動の背景」を知ることで、フルリモートで物理的な距離がある中でも、メンバー同士の相互理解が深まり、下記のポイントが押さえられるのではないかと思います。
メンバー同士で協力しあって問題を解決する
価値観を認めあう
ちなみに、このふりかえり方法は、以下書籍の内容を参考にしました。最後に、感想も交えて要点を書きます。
勅使川原 真衣著『働くということ 「能力主義」を超えて』
チームビルディングのためのふりかえり方法
実際にどのようにふりかえりを実施したかをまとめます。
前提
私が所属するチームは10人前後のチームです。
ふりかえりは2週間に1回実施しました。
フレームワーク
KPT+TGMでふりかえりを行います。
①改善を目的としたふりかえりは「KPT」の方法を踏襲します。
②思ったこと、考えたことの共有を目的としたふりかえりは、「TGM」(Thanks、Good、More)という項目でふりかえりを行います。
▼ふりかえりで使用する表
進行の仕方
- 最初に5分ほど時間を取り、参加者にふりかえりを書いてもらう。
- ファシリテーターが記載者を指名する。
- 記載者が「ふりかえり」を言う。
- 参加者は「ふりかえり」を傾聴する。
- 分類によって話し合いのモードを切り替える。
Keep,Problemの場合
議論モードで話し合いを行う。(結論が求められる)
Keep,Problemで出た意見に対して、次のアクション(Try)を考える。
Thanks,Good,Moreの場合
対話モードで話し合いを行う。(結論は求められない)
Thanks,Good,Moreで出た意見に対して、自分の価値観を話す。
記載者にどうしてそう思ったのか質問する。
書き方の例
自分に対して思ったこと:
- 過去の自分が○○を用意してくれていたから、今回はうまくいった ⇒Thanks
- あの業務は○○を意識してやったからうまくいった ⇒Keep、Good
- あの業務は○○を意識すれば、もっとうまくできたかも ⇒More
- あの業務は○○の思い込みで進めたから失敗した ⇒Problem
他の人に対して思ったこと:
- Aさんのおかげでタスクが遅延なく完了できた ⇒Thanks
- Aさんの業務のやりかた、○○でとてもよかったと思う ⇒Keep、Good
チームに対して思ったこと:
- あの業務のやりかた、○○でとてもよかったと思う ⇒Keep、Good
- あの業務は○○の方法でやったほうが良いと思う ⇒More、Problem
※Keepで書くかGoodで書くか、Moreで書くかProblemで書くかは温度感で判断する。
運用ルール
分類:
- [Thanks、Good、More]
- ふと思ったこと、考えたことを記載する。なんでも書いてOK。
- [Keep]
- 個人のKeepをチームメンバーのKeepにできるか考えて記載する。
- [Problem]
- 自責、他責はNG。
- [Try]
- 「〇〇に気を付ける」「〇〇を頑張る」と抽象的なものではなく、具体的にどういった行動をするかを考えて、議論する。
注意事項:
- ふりかえり会は反省会ではないので、ポジティブな思いで参加する
- Problemに対して、責任の追及はNG
- 人の話を遮らないようにする
チームビルディングのためのふりかえりの感想・効果
自分の感想:
- チームメンバーから様々な意見が出て、楽しい!
- ふりかえりで結論を出さなくても良いため、ファシリテーターとして気が楽である。
- まずは、他人の意見を傾聴して受け止めることの大事さを身に染みて感じられた。
チームメンバーの感想:
- 業務でもっとこうしたいというふりかえりを書いたら、チームメンバーから自分では思いつかないようなアイデアを頂けた。
- 他のメンバーから自分に対するGoodを共有してもらうことで、自分の強みに気づけた。
効果:
- ポジティブな雰囲気でふりかえりができ、様々なアイデアが出てくるようになった。
- より良い仕事をチームとしてするために、お互いに何ができるか話し合いができた。
- チームメンバーの「持ち味」を語ることで、お互いが得意なことを理解したうえで役割分担ができるようになった。
- チームメンバーの「行動の背景」を知ることで、他のメンバーに対して自分がどのようなアクションを取れるか考えられるようになった。
ふりかえりは、Web会議で行っています。
誰かがふりかえりを挙げると、議論/対話がはじまったり、Web会議のリアクション機能を使ったリアクションが起きたりします。
▼リアクションのイメージ
(新しい会議中のリアクション機能が Google Meet で利用可能にから画像を引用)
さいごに
まとめ
ふりかえりを始める前は、チームメンバーは意見を出してくれるだろうか…という不安もあったのですが、チームメンバーに恵まれて、皆が積極的に意見を出してくれました。
ふりかえりで考えたこと、思ったことを共有することで、フルリモートでチームビルディングをするうえでのデメリットを解消することに取り組みました。
結果、最初に挙げた2つのポイントを完全にではないですが押さえられるようになったと思います。
メンバー同士で協力しあって問題を解決する
メンバー同士でお互いの考えや思っていることを理解し合い、お互いの問題に対する共通認識を持つことができました。また、お互いの「持ち味」「行動の背景」を理解することで、どうやって協力して問題を解決できるか?を建設的に話し合うこともできました。
価値観を認めあう
チーム全員が率直に自分の意見を言える場所ができ、お互いの考えや感じていることを理解することで、相互理解が深まりました。また、1人1人が安心して意見を言える場所があることは、チームビルディングの基盤強化にも役立ちました。
参考書籍の紹介&要点&感想
今回のふりかえりをするにあたって、勅使川原 真衣著『働くということ 「能力主義」を超えて』を参考にしました。この本では、個人の能力に依存して仕事をするのではなく、組織としてどのように個人を活かして仕事をするか?について述べられています。
業務をするうえで、うまくいかないことは山のようにあると思います。
うまくいかない時に、個人の能力不足を原因とするのではなく、組織としてどう個人の能力を引き出せるか、そしてメンバー同士でカバーできるか…。他者を選ぼう、変えようとするのではなく、いかに自分のモードを変えるか…。等々のヒントが書いてあります。
最後に、この本の中で私が一番好きな箇所を引用して〆させていただきます。
「自分たち各々が持ち味を持ち寄って、すでにこんなふうにあんなふうに、どうにかやってきたよね」ということを吐き出してもらい、耳を傾け、承認し合う=行為を理解し合う、ということです。これが、個人の能力から他者との「関係性」にフォーカスしていく際に、地味で、一見ばかばかしく、また牧歌的にも思えることなのですが、根源的に必要になる営みです。もう、すでに在るよね、有るよね、いろいろやってきたよね、とハグし合うような気持ちが、組織開発をうまくいかせるエッセンス。方法論だけ、「組み合わせればいいんでしょ?」といった調子でやっていても、うまくいかないんです。他者と働くとは、「他者の合理性」を承認し合うために、吐露できる場があってはじめて為せるのです。
今回は、ふりかえりを実施してみて、足りないものを嘆くのではなく、既にあるもの(お互いの「持ち味」「行動の背景」)を認め合うことの大事さを理解できました。そして、こういうふりかえり方法もありかも?と思いました。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
本記事のアイキャッチ画像はMicrosoft Designerで作成しました。