フューチャー技術ブログ

「言語化」を考える

秋のブログ週間2024の3週目の記事です。

はじめに

2023年4月キャリア入社の曽田です。前職でシステム開発(通信・情報業界メイン)に従事した後、現在はTIGにてメディア業界向けクラウドサービス「Glyphfeeds」の開発に携わっています。

皆さまは業務上資料(ドキュメント)作成を行う機会はどれほどありますでしょうか?

フューチャーではコンサルティング業の例に漏れず、対顧客/社内を問わず資料作成の機会が多くあります(ex. 議事録・顧客向け説明提案資料 etc.)。また、当社の取り組みとして評価の一環として社員全員が年末にプレゼンテーションを行う機会があり、誰もがドキュメントの作成に頭を悩ませることになります。

そこで、私自身の経験も踏まえつつ仕事における言葉について深堀していきます。

仕事における言語化

上記で挙げた議事録やプレゼン資料をはじめとして、日々の業務ではドキュメントを通してコミュニケーションをする機会が業界問わず多くあります。その上で、コミュニケーションを通して仕事を推進するためにはいかに自分の意図を相手に伝え、それを受けて相手に行動してもらう かが重要なポイントです。

簡単な例として、新規顧客に自社サービスを提案するシチュエーションを考えてみましょう。

提案においてはプレゼンテーション用のパワーポイントを作成するケースが大半だと思いますが、受注獲得に向けて顧客にアピールできるポイントを挙げてみると

  • 顧客側の課題に対する自社サービスのマッチング度
  • 自社サービスの優位性

…をイメージできるのではないでしょうか?

そして上記のポイントを顧客に伝え、納得してもらい受注に成功する(=ビジネスの成功に繋げる)ためにはパワーポイント上に適切に伝えたい内容を盛り込む必要があります。この「適切さ」が非常に難しく、端的かつ明確な「言葉選び」、いわゆる「言語化能力」が重要となると考えています。
(冗長な文章や唐突なデータを出されても読み手には理解が困難です)

言語化する上で重要なポイント

「言語化」が意味するものは何でしょうか?

実は言語化という言葉自体は広辞苑のような一般的な辞書の中では定義されておらず、現代になってから生まれた言葉であることが窺えます。

言語化とは? わかりやすく解説(実用日本語表現辞典)を引用すると以下のように解説されています。

言葉で表現すること。感情や直感的なものを説明・伝達可能にすること。

ここで重要な部分は「感情や直感的なものを伝える」です。言葉になっていないもの(感情・思考)をいかに相手に伝えるかが言語化において最も重要だと言えます。そして、個人的に言語化能力を担保する要素として重要だと考えているポイントとして下記2点が挙げられます。

  • 自分自身の考え・伝えたいことを明確にする
  • 自分の言葉に対する聞き手の受け取り方を考えられる

前者は自分自身の考え・相手に伝えたい内容を明確にする整理力が、後者は自分の言葉が相手に伝わるか否か・どう伝わるかを考慮する想像力がカギです。

それぞれについてより深堀してみます。

整理力

頭の中にある自分自身の考えを伝えるためには、考えを整理して言葉に変換する必要があります。ここでは自分の思考を垂れ流しにしている状態から、

  • 伝えるポイントを絞る
  • 冗長な文章を端的な言葉に変換する

というプロセスを通して自分の考えを整理し、言葉の形で表す手順を踏むことになります。

想像力

自分の考えを整理した言葉が必ずしも相手に伝わるわけではありません。相手に確実に伝達され、かつ言葉を受けて行動してもらうには

  • 自分の言葉に対して相手がどのように受け取る可能性があるか
  • 相手が求めている事項に対して自分の言葉がどれだけ響くか

といった受け手側の思考を考慮して言葉や文章の書き方を選択する必要があります。「言葉が自分自身にしか理解できないものになってないか?」という疑問を頭の片隅に置きつつドキュメントを作成する姿勢が求められます。

言語化能力を磨くためのTips

ここまで言語化のポイントについて述べてきましたが、実際に自分自身が正しく言葉を選べるようにやってきたこと・日頃心掛けている習慣について数点挙げてみます。

活字に慣れる(書籍・記事を読む習慣)

かなり感覚的な話になりますが、言葉の受け取り方に対する感覚に意識的になるには相応量の言葉に触れておく必要があると個人的に考えています。その手段として、書籍や堅めな記事(評論)に日常的に触れる習慣を付けることは(時間はかかりますが)決して悪くないアプローチだと考えています。

世に出ている書籍・記事上の文章の大半は伝えるためにニュアンス・正確さなどを考え抜かれた形で出されたものなので、自身が言葉を「選ぶ」際の選択肢として活用することが出来るのではないかと思います。また、語彙の充実も読書の見逃せない効用だと言えるでしょう。

※ここで注意ですが、決して文中の表現を覚えて真似するという意図で読書をしないことが重要です。一朝一夕ではなく積み重ねで身につく技術であるため、教養を身に付けるという気軽なスタンスから始めてみるのをお勧めします(個人的な話ですが、大学時代にフランス文学を専攻しており多くの本を読んできたことが間接的に活きているのかもしれない、と最近感じるようになりました。外国文学の翻訳は「言葉の選択」という観点で最も注意が払われている媒体の一つであるため、余暇の過ごし方の一つとして読んでいただくのも良いと思います)。

資料作りは内容の構成と見た目の明快さに気を配る

資料作成において、まずは整理した内容を伝えるためのストーリー・構成を考える部分から始めるように心がけています。資料作りの技法は書き始めると非常に長くなるので参考文献の紹介(後述)のみにとどめますが、現状分析・目標・解決策という構成でストーリーを組み立て、そこに当てはめる形で必要な要素を記述する逆算型での作成を理想としています。

また、特にPowerPoint資料においてはSmartArtを活用して出来る限り内容を構造化し読者がスムーズに理解できるスライドを作成するように心がけています。SmartArt、ひいてはPowerPoint全体に言えることですが、長文とは非常に相性が悪いので先述した端的にまとめる言葉選びが重要になります。下記にスライドのイメージを載せてみます(新規機能追加の手法比較を顧客に説明するケース)

▼スライドイメージ
スライド例2.png

先述した端的な言葉選びに加えて、推奨案を暖色系(赤色)、非推奨案を寒色系(青色)のSmartArtで表現するなど色彩の使い方も視覚的な分かりやすさという面で良いアクセントになります。

作成した資料を第三者に見てもらう時間を空けて見直す

頑張って作成した資料は冷静に見直す必要があります。特に勢いよく仕上げた場合、自身の目だけでは悪い面が見つけ辛いため、締切直前の資料だとしても上司などの第三者に確認してもらいブラッシュアップ してもらうことで資料の質は格段に高くなります。

また、時間に多少余裕がある場合は一晩置いて翌日に改めて見直すこともおすすめです。書いている最中には気付かなかった構成の不備や言葉のニュアンス違いなどが見つかるケースが往々にしてあります。この「一晩寝かせる」感覚は企画の考案といった業務の立ち上がりのケースでも活用できる思考法だと思います。

さいごに

この寄稿を機に、日々の業務において何気なくやっていた資料作りやコミュニケーションの過程を文字通り「言語化」することになったのですが、難儀した一方で改めて学び直す部分が多かったです。自分自身の考えを整理し伝えるという行為は、フューチャーで日々行われているシステム開発や顧客折衝の場に留まらずあらゆる業界において活用できる普遍的な技術と言えます。

言語化能力自体は一朝一夕で身につくものではなく、締切が短い資料などの素早いアウトプットが求められるケースだと言語化の手順を踏む余裕がなく上手く言葉に表すことが出来ない場合も往々にしてあります。ただ、難しい仕事と同様に言語化もトライアンドエラーの繰り返しで上達していくものだと思います。

この記事が皆さまにおける新たな気付きや振り返りのきっかけとなれば幸いです。

長文となりましたがここまでお読みいただきありがとうございました!

Appendix:参考文献の紹介

  • 外山滋比古「思考の整理学」
    仕事に限らず、「考えること」に対するTipsが柔らかい文章で述べられています。自分自身も大学入学直後に書籍部で購入したのを覚えており、社会人の今改めて読み直してみても新鮮で気付きを与えてくれます。
    先述の「一晩寝かせる」という表現も本書の「発酵」・「寝させる」の内容を拝借しています。
  • 中川邦夫「ドキュメント・コミュニケーションの全体観」上巻/下巻
    フューチャーに転職して以来資料作成の機会が格段に増えたことをきっかけに、体系的な資料作りを学ぶために読みんでいます。資料作成の過程をフレームワークとして捉えているのが特徴的で、コンサル業における資料作成の教科書的な立ち位置によく挙げられている書籍ですが、個人的には業界を問わず普遍的に利用可能な考え方が述べられていると思います。文章の「見やすさ」という面でも実務に流用できるレベルで分かりやすく読みやすいです。

アイキャッチ画像は、「写真AC」さんのビジネス資料の疑問 - No: 30648442を利用させていただきました。