はじめに
はじめまして。2023年4月に新卒入社し、流通サービス事業部に所属している高橋です。
これまで主にシステム構築フェーズを経験してきましたが、直近ではデータ分析プロジェクトに分析メンバーとして携わりました。
本記事では、データ分析のプロジェクトを進める中で「実務上どのようなポイントで悩みやすいのか」「分析をスムーズに進めるために何に気を配るべきか」といった視点で、自分なりの学びをまとめました。
本プロジェクトにおけるデータ分析の位置付け
データ分析において最も重要なことは、単に「分析すること」ではなく、「解決すべき課題に対して、どの領域で、どのような分析を行うか」という事前の設計にあります。
今回の取り組みは、ある領域で実績のあるシステムを異なるビジネスドメインへ適応させ、オペレーションの効率化を目指すものでした。この最適化を実現するためには、前述した「設計」の精度が成否を分ける鍵となります。
そのため、本プロジェクトは大きく分けて次の2つの要素で構成されていました。
- 既存ロジックの新領域における適応可能性の検証
- 検証の効果を正しく評価するための「分析対象」の選定
特に「2」については、単に手元のデータを処理するのではなく、「ビジネスインパクトがどこにあるのか」「どのデータを抽出して評価すべきか」をゼロから検討する必要があり、データ分析を通じた意思決定が強く求められるパートでした。
なぜ「分析対象の選定」が重要だったのか
結論から述べると、拠点によって状況が正反対であり、全てのデータをひとまとめに集計すると本来解決すべき 「歪み」が平均化されて見えなくなってしまうからです。
本プロジェクトの背景には、複数の拠点を展開するビジネスモデル特有の「需要と供給のミスマッチ」という課題がありました。
- 高需要拠点:商品の売れ行きは好調な一方、在庫不足による機会損失が発生している
- 低需要拠点:商品があまり売れず、余剰在庫がコストを圧迫している
仮に、これら「不足」と「余剰」のデータを一括りで分析してしまうと、数値上は過不足が相殺され、あたかも「ちょうど良い状態」であるかのような結果が出てしまいます。
こうした不均衡を解消し、実効性の高い改善を実現するためには、全方位を漠然と分析するのではなく、「どこを分析対象として定義し、どのデータで課題を可視化すべきか」という設計が、プロジェクトの成否を分けるポイントとなりました。
「検証対象」定義の難しさと学び
本プロジェクトにおいて、対象となる店舗や商品群の大枠は早い段階で決まっていました。
しかし、実務レベルで「検証の切り口をどう定義するか」という点には、想像以上に丁寧な検討が必要でした。単に「どこを分析するか」だけでなく、どのデータを用い、どの条件で切り出すのが検証として最も意味があるのか。この「切り出し方」の定義をいかに精密に行うかが、今回の大きな学びとなりました。
試行錯誤の中で見えてきた、検証対象の定義や分析において欠かせない視点を、4つのポイントで詳しくお伝えします。
1. データ構造の早期合意
初期の検証段階ではスピードが重視されますが、使用するデータの定義や粒度の合意を後回しにすることはリスクが伴います。
「このデータを使う前提で進めて良いか」という認識合わせが不十分だと、後続の工程で大きな修正コストが発生してしまいます。
本格的なデータ分析に着手する段階で、どのデータをどの粒度で使うかをクイックに合意しておくことの大切さを痛感しました。
2. データ分析におけるターゲットの定義と対象範囲の設定
限られた期間で成果を検証するためには、膨大なデータの中から「どこを対象とするか」を戦略的に決める必要があります。
今回は、漠然と課題を探すのではなく、規模感や変動率などのデータに基づき、ビジネスへの影響が最も大きい領域を分析によって特定しました。
実効性を証明するため、以下の2軸で対象を絞り込んでいます。
- 高インパクト領域の特定
- 全体の成果への貢献度が高く、改善が直接的な利益向上につながりやすい領域を抽出
- 検証の妥当性の確保
- 十分なデータ量が確保でき、分析結果の有効性を正しく評価できるセグメントを定義
このように、分析を通じて「どの範囲で検証するのが最も効果的か」という合意形成の根拠を作ることが、プロジェクト初期における極めて重要なステップであると学びました。
3. 分析意図の明確化
分析を進める際、複数の条件を組み合わせてデータを段階的に絞り込んでいく作業が発生しました。
ここで重要だったのは、単なる計算作業として進めるのではなく、「なぜこの条件で絞り込むのか」という分析意図を正しく理解することでした。
実務において特に意識すべきだと感じたのは、以下の2点です。
- データの「業務的な意味」を定義する
- 「この条件で抽出されたデータは、実務上のどのような状況を表現しているのか」という背景を常に意識する
- 判断軸を明確化する
- 単に数字を示すのではなく、「どの数値を用いて意思決定を行うか」を、関係者と合意しながら進める
「何のために算出しているのか」という意図が抜けると、アウトプットは「ただの結果報告」に終わってしまいます。
分析工程の全ステップにおいて、ビジネス的な意味付けを徹底することが、精度の高い検証には不可欠だと実感しました。
4. 分析結果は「計算結果」ではなく「意図」を出力
分析結果として出力する成果物は、単なる数値の羅列では不十分です。
「何のための数値か」「どの条件で絞られたものか」がひと目で伝わらなければ、意思決定の判断材料にはなりません。
例えば、特定の対象を抽出する場合、以下のように「数値が絞り込まれていくプロセス」をセットで提示することが重要です。
具体例:新商品プロモーションの対象選定
単に「対象は150件です」と報告するのではなく、絞り込みのステップに「意図」を添えて出力します。
| 項目(具体的な集計内容) | 数値(件数) | 定義・分析の意図(抽象的な背景) |
|---|---|---|
| 取扱全商品 | 1,000 | 【全体像の把握】 分析対象の最大範囲を定義し、規模感を合意する。 |
| 供給安定商品 (機会損失未発生) |
800 | 【ノイズの除去】 欠品や入荷不安定なデータを除外し、施策効果を正しく測定できる母集団を作る。 |
| 新規取り扱い商品 | 150 | 【戦略的抽出】 分析の主目的である「新規品」へフォーカスし、意思決定の直接の対象を特定する。 |
このように、数値の関係性が ① > ② > ③ となるプロセスを明示することで、読み手は「なぜこの150件なのか」という根拠を即座に理解できます。
「プロセス」が信頼を生む
単に「結果は150件です」とだけ伝えるのと、「1,000件の全体像からノイズを除き、戦略対象である150件に絞り込みました」と伝えるのとでは、情報の信頼性が全く異なります。
「分析資料は単なる計算結果の提示ではなく、意図を表現するための成果物である」という意識を持つことは、読み手の疑問を先回りして解消し、スムーズな意思決定を促す鍵になると実感しました。
さいごに
今回のプロジェクトでは…
- 検証対象をどう定義するか
- どのデータを活用し、何を判断の軸にするか
…といった、分析以前の設計部分に多くの学びがありました。
データ分析というと手法やロジックに注目が集まりがちですが、実務ではむしろ…
- データ構造の合意
- インプットデータの整理
- 分析意図の共有
…といった「土台」となる部分が、プロジェクトの成否を左右することを強く感じました。
本記事が、データ分析に携わる方の参考になれば幸いです。
参考リンク
詳細なデータ分析手法や実装面については、下記に記載されておりますので、あわせてご覧ください。