フューチャー技術ブログ

Agentic AI Summit '26 Spring 参加レポート

はじめに

2025年10月新卒入社で、製造・エネルギー事業部所属の古賀です。
2026年3月19日(木)に開催されたGoogle Cloud 主催の「Agentic AI Summit ‘26 Spring」に参加してきました。

本イベントでは、単なるタスクの自動化を行うAIから進化した、自律的に思考し行動する「Agentic AI」をメインテーマとしており、自律型AIがいかに業務プロセスを変革し、ビジネス成果をもたらすかを学びました。

今回は、イベントで発表された多岐にわたる技術を「5つの領域」に整理し、それぞれの領域で「どのような変革が起きるのか」と「それを支える具体的な技術・サービス」を紐づけてまとめました。

1. 業務改革の領域

変革

これまで
現在のAIは非常に優秀ですが、ユーザや組織の文脈を知らないため、毎回ゼロから詳細な背景を説明する必要があります。また、情報のサイロ化が起き、データが様々なシステムに分断されている状態です。そのため、現在のAIは例えるなら「中途入社初日の新人」のような状態であり、プロンプトを出せる限られた従業員しか恩恵を受けられないという問題を抱えています。

これから
Gemini Enterpriseを使用することで、AIを新人から文脈を理解できる「育てるチームメイト」にしていくことが可能です。これにより、個別の作業を自動化する「点の自動化」から、分断されたプロセス全体をカバーする「プロセスの自律化」へと移行することが可能になります。

技術・サービス

Gemini Enterprise
社内外のデータソースと安全に接続できる基盤であり、AIエージェント(自社開発、購入したもの、Google標準)が稼働するプラットフォームとして機能するSaaSプロダクトです。長期記憶(オフィスアプリ等のパーソナライズドデータソース)とパーソナライズによってユーザの過去の行動や好み、特性を記憶し、個別の状況に合わせた提案等が可能になります。さらに、マルチモーダルRAGや各種コネクタを用い、散在する社内データ(CRM、Drive、メール等)にアクセスし、人間と同じように情報を検索・統合できる環境を構築できます。

2. エンジニアリングの領域

変革

これまで
「Gemini 3」モデルでは、アーキテクチャの相談、リファクタリング、テストコード生成、仕様書作成など、開発ライフサイクル全体を支えることが可能です。しかし、LLMでのコード生成はブラウザや専用アプリ上で行われているため、開発環境(IDE)との往復が手間という問題もあります。さらに、人間の処理能力(タイピング速度や思考スピード)が依然として開発のボトルネックになるという構造的な限界が存在しています。

これから
人間がコードを書き、AIがそれを支援する時代から、AIが自律的な部下としてワークフロー全体を主導する時代へとシフトしています。これにより人間の役割は「コードを書くこと」から「何を開発するか」「AIが立てた計画の承認」「最終的な成果物のレビュー」へとシフトし、圧倒的なスピードとスケーラビリティでの開発が可能となります。

技術・サービス

Gemini Code Assist(支援型)
エンジニアが使い慣れたIDE(開発環境)とAIを統合し、シームレスな体験を提供するサービスです。開発者が開いているファイルやプロジェクト構造(コンテキスト)を自動で認識し、的確な提案を実施します。またインライン補完やチャットベースでのコード生成・解説が可能です。

Antigravity(自律型)
エージェント主導の開発プラットフォームです。VS CodeベースのUIを使用しており、Gemini 3だけでなく、ClaudeやOSSモデルなどマルチモデルに対応しています。また、フロントエンド用、バックエンド用など複数のエージェントを立ち上げ、並列で同時開発を進行できます。さらに、エージェントが自律的にブラウザを立ち上げ、描画崩れやロジックの動作確認を自動で実施(動画やスクリーンショットで人間に報告)することが可能です。

3. エージェント運用の領域

変革

これまで
企業において複数のAIエージェントが開発・導入されるマルチエージェント時代を迎えるに伴い、「本当に使われているのか」「ROIは出ているのか」「現在のエージェントが最適か」などの懸念が生まれています。また、従来のBIツール(ダッシュボード)では、定型的な指標の確認は可能ですが、想定外の事象に対する深掘り分析には、データアナリストへ依頼が必要となり「タイムロス」が発生していました。

これから
エージェントの行動を可視化し、評価と改善のサイクルを回すこと、そして得られた対話データをビジネスインサイトに繋げることが成功要因の一つとなってきます。さらに、構造化データだけでなく、画像・動画・PDFやグラフデータなどの非構造化データを駆使し、誰もがデータからインサイトを得られる「データの民主化」を実現し、データを統合的に扱える基盤を構築することが不可欠になります。

技術・サービス

Vertex AI Agent Builder
AIエージェントの開発から運用までをエンドツーエンドで支援する統合プラットフォームです。AgentOps機能が含まれており、プロンプトとレスポンスの文脈からAIが自動で採点基準を生成する「適応型ルーブリック」による回答品質の評価や、安全性・ハルシネーションの監視などを行えます。これによって継続的な改善のループを回し続けることが可能です。

BigQuery Agent Analytics
AIエージェントの行動ログ(ユーザとの対話履歴など)をリアルタイムでBigQueryに収集し、Gemini Enterpriseのような分析用エージェントを使って高度な分析を行うための機能です。開発時に数行のコードを追加するだけでログ収集が始まり、その後は自然言語で問いかけるだけでAIが自律的にSQLを生成し、対話ログから顧客のペインポイント(VoC)を直接検知するだけでなく、「なぜAIが答えられなかったのか」といったエラー原因の特定(AgentOps)までを行ってくれます。

4. 顧客体験の領域

変革

これまで
従来の顧客接点は、ユーザ自身が手動で情報を入力して検索や購買を行う「機能的」なサイトが主流でした。検索やコマースのプロセスは断片化されており、消費者が期待するパーソナライズされた結果や代行アクションに十分に応えられていませんでした。

これから
これからは、AIがユーザに寄り添う「没入型(イマーシブ)」な顧客体験への移行が実現します。断片化された検索やコマースはシームレスな体験へと変わり、AIエージェントがユーザに代わって自律的に情報収集や代行(購買)アクションを実行します。

技術・サービス

Gemini Enterprise for Customer Experience(GECX)
断片化された検索やコマースをシームレスな顧客体験へと変える統合ソリューションスイートです。CX Agent Studioを含めた様々な要素で構成されており、自社データに基づく正確な回答を導く次世代検索エンジン(Vertex AI Search)や、会話データの分析と可視化を行うCustomer Experience Insightsが含まれています。

CX Agent Studio
エージェント構築・テスト・デプロイを担う基盤です。自然言語による指示だけでAIがフローを自動生成するローコード開発により、開発期間を短縮します。また、他社SaaS等と連携した実務アクションの実行や、自然な「割り込み」に対応する高品質な音声対話機能も備えています。さらに、不適切な発言やプロンプトインジェクションを防ぐガードレール機能といったエンタープライズ品質の安全性を標準搭載しつつ、推論プロセスの可視化や「Quality AI」による全対話の自動評価を行えます。

ADK Gemini Live API Toolkit
リアルタイム音声AIエージェントの開発ツールキットです。これまで開発の壁となっていた複雑なストリーミング通信の制御を簡略化し、AIが話している途中でユーザが「割り込み」できる、人間のように自然な双方向の会話を実現します。また、ネイティブオーディオモデルが声のトーンから感情を読み取る機能や、スマートフォンのカメラ映像をリアルタイムに処理するマルチモーダル機能も備えています。

5. セキュリティの領域

変革

これまで
攻撃者による生成AIの利用が一般化し、フィッシングメールの巧妙化や、脆弱性分析の自動化など攻撃手法が高度化しています。そのため、従来の人間主体の監視・対応では、AIによる高度な攻撃スピードに追い付くことが困難になりつつあります。

これから
AIエージェントを活用してSOCのワークロードを低減し、検知・対応の質を向上させる「Agentic SOC」への移行が求められます。現在はアラート発生時のトリアージ・調査・マルウェア解析の支援を実現していますが、将来的には、調査結果への対応、自動ルールチューニングまでをAIが一貫して実行し、ライフサイクル全般をAIが自律的に実行する世界に変わっていくことになります。さらに、AIを防御に活用するだけでなく、AIモデルや学習データそのものを守るための保護策も不可欠になります。

技術・サービス

トリアージ・エージェント
アラート発生時の初期調査を自動化するAIエージェントです。これまで人間が約30分かけて行っていた約20ステップの調査を、約1分で完了させることが可能になり、アラートが陽性か偽陽性かの一次判定を迅速に行えます。

Model Armor
生成AIアプリケーションを脅威から守るためにGoogle Cloudが提供している保護機能です。プロンプトインジェクションのブロックや、不適切な回答を抑制するためのフィルタリング機能を持っています。組織全体のガバナンス基準を適用でき、感度のチューニングも可能となっています。

まとめ

業務改革やエンジニアリングの現場では、AIが自社の文脈を理解して自律的なチームメイトとして働き、顧客接点においてはAIが主体となってユーザに寄り添う没入型の体験が実現しつつあります。 一方で、こうした自律型AIをビジネスで確実に機能させるためには、エージェントの行動を可視化して継続的に改善を回す「運用基盤」と、AIモデルやデータそのものを脅威から守る強固な「セキュリティ体制」が両輪として不可欠であると学びました。

今回の学びを活かし、自律型AIをどのように日々の業務に適応させ、新しいプロセスをデザインしていくかについて、考えていきたいと思います。