秋のブログ週間2021の1日目の記事です。
はじめに
TIG DXユニット真野です。小さいですが複数チームのマネージャーをしています。
フューチャーではフューチャー流「コロナ時代」の子育てワークスタイル | 未来報にあるように、2020年の2月からリモートワーク率が急激に上昇し(体感)、同年4月からは全社フルリモート体制になりました。私もまともに出社したのは事前に郵送で送ればよいはずの年末調整書類を直前までサボって物理的に配送したのと、チームの座席エリア開放のために放置していた書籍類を回収にした2回くらいの記憶です。
リモートワークを行う前からGoogle WorkspaceやらSlack Enterprise Gridを導入したりやらGitLab(GitHub)などの頼もしい非同期コミュニケーションツールが整理されていたし、ナレッジはこういった技術ブログに投稿する雰囲気があったので割とすぐ順応できているなと記憶があります。
そんな感じで業務は円滑に回り、プレイングマネージャーちっくに自分の仕事を進行する分には良いのですが、圧倒的にメンバーとのコミュニケーションは減りました。もちろんタスクやアーキテクチャや開発手法の説明は積極的にGoogle Meetを使って時間を確保するようにしましたが、メンバーその人自身に向き合う時間がどうしても減ったためか、どうも距離感を感じるようになりました。一言でいえば期待値のちょっとしたズレを感じるようになりました。
そのため、定期的にコミュニケーションやフィードバックを目的に、1 on 1 をすることに決めました。実際に運用を開始して1年以上経過しています。その結果としていくつかナレッジらしきものが貯まってきたのでまとめて紹介します。
1 on 1とは
1on1ミーティングとは? 意味やメリット、話すことがない場合の対処法や事例など|企業のご担当者様(アデコ)から引用します。
1on1ミーティングは、もともと米国のシリコンバレー企業が取り組みはじめたマネジメントの手法です。半導体メーカーの巨人、インテルがはじめたといわれていて、同社においては上司と部下の関係性構築のうえで欠かせない取り組みとなっています。
1on1ミーティングは、部下が主役となり、上司と1対1で行います。頻度は週1回から月1回ほどで定期的に開催し、部下は業務の課題や悩みを上司と共有するというスタイルです。上司は部下の話を真摯に聴き、フィードバックを行います。
名前の通り、1対1で話す面談のようなものです。お悩み相談も実施しますが、自分(リーダー)から見てのフィードバックや、メンバー自身の成長を促すような、振り返りの場としての機能も持たせます。最初は距離感がつかめない場合もあると思いますので、適度に雑談を聞いたりもします。
同僚の高野さんがたまにOne on Oneって言ってきて、ワンワンワン🐶かなって見間違えすることも多いですが、1 on 1と記載することが周囲では多いなという印象です。
書籍としては実践!1on1ミーティング (日経文庫) が読んでいてとても学びになりました。個人的には1 on 1の開催手法を学ぶ以外にも、コーチングとしての大事なことも知れた気がしています。
規模感、どれくらいの頻度、回数なのか
私が実施している概況です。特筆すべき点は無いと思います。
- 受け持っているメンバー
- 徐々に増えていますが最初は3名程度
- 2021年10月では10名に対して1 on 1を継続しています
- 頻度
- 基本的には1回/月・人
- なれるまでは隔週
- 本当に細かく見たいときは週次にしていますが、割と大変なのですぐ隔週にします
- 時間
- 1回あたり30分にしています
- どんなに早くても25分間は何か話すようにしています
- 延長はほぼ無いですが、たまに盛り上がると2,3分オーバーします(タイムマネジメントが悪いですね、良くないですね)
- ツール
- Google Meetをつかっています。何でも良いと思います
実施のコツ
相手をするのが人間であるため、ケースバイケースのことが多いですがなるべく汎用そうなネタをまとめました。
初回は開催の意図をしっかり伝える
お初のメンバー(特に新人さん)は、1 on 1が何か(雑談するの? とか)分かっていない方も多いので、どのような意図・目的で実施しているかしっかり伝えます。
私がよく伝える内容は以下です
- 1 on 1 を開催する意図とは?
- こまめなフィードバックをしたい
- 半期ごとの評価時に行うフィードバックをもっと刻みたい
- 「あの時、実はこうして欲しかった」みたいに伝える人もいるけど、「その時に言ってよ」と過去の自分が思ったのも影響している
- 私のビュー(視点)からはこういうふうに見えていると伝えたい
- 良くも悪くも事実だと思うので、やったことが伝わってない場合は見せ方を変えるなどに活かしてほしい。活かしたくないなら無視して欲しい
- アドバイスをできる範囲で。一方で自分過去の武勇伝を語っても仕方ないので、なるべく自分で考える切っ掛けを与えようと思う
- 振り返りの場としても活用して欲しい
- キャリア志向にそったタスクアサインにも活かしたい
- もちろん、不満や業務上の聞きにくい質問もOK。それで時間が潰れたら別途枠を用意する
- こまめなフィードバックをしたい
1 on 1の会議通知はリーダー(自分)から設定する
- 1 on 1はリーダー(自分)が実施したいはずなので、その気持ち通り自分で設定します
- おそらく私がメンバーの立場で、自由に会議通知を入れてねって言われたら多分面倒くさがって入れないので、そういう人を予防する目的です
- そして、おそらくリーダーの方がカレンダーが会議通知で埋まっているので、探す手間をメンバーにおわせない方がヘルシー
- そもそも、リーダーの方がおそらく突然の会議など差し込みが多く予定が変動的なので、自分で管理した方が楽だという結論を得ました
- もし差し込みが入った場合は自分でリスケするだけです
- Google Calendarの場合は繰り返し設定を入れれば良いので簡単です
1 on 1時の見せ方
- 私のカメラはONにしています。特に「自分のビューからこう見えているよ」と伝えるときは、どのような表情で言っているか重要かもしれないためです
- もう何年もすると、カメラON/OFFとか気にならなくなる人類が増えそうですよね
- メンバー側は不要だと思います(ON/OFFを気にしたことがない)
- VS Codeでとっている面談メモを画面にリアルタイム表示する
- 自分の顔を大画面でずっと見たくないだろう…、というネガティブな感情が生まれた背景ですが、便利で良いです
- 何かしらテキストに起こすと、話が脱線しても元に戻りやすくて非常に良いです
- 私がメモを取るようにしています。基本的にはメンバーには手ぶらで参加できるようにしています
- メモは「●●さん_1on1メモ.md」とかってタイトルにして、どんどん追記するようにしています
- この取得したメモは、毎回終了後にSlackのDMに送ってシェアするようにしています
- ついでに、なんか一言を添えて共有すると親近感も湧くかなと思っています
画面共有でメモ表示はけっこう重要かなって思っています。あと、重要ですがSlackとかTwitterは見ないようにしています。脇見、内職は当然厳禁。
毎回、立ち上がりは前回メモを読んでいる
- 前回作成したメモは、次の会でも見るようにしています
- その時に考えた反省点とか、改善プランとかがどうなった? みたいなところから話すようにしています
- 自分も過去に話した内容を思い出すということで、ワンクッション置くのは良いTipsだなと思います
- その時に考えた反省点とか、改善プランとかがどうなった? みたいなところから話すようにしています
- 「前回はこういうこと話したよね」からの、これは解決したけど別の事案がでて大変だったよーとか
- 何かしらアクション(目標)を立てていたら、少しでもできたかどうかを観測します
- 抽象度が高い目標を経てても隔週~1ヶ月だとなかなか改善が難しいので、大体はより具体的な目標設定にすることが多いです
事前準備
基本的にはメンバーに準備をさせないというポリシーをとっています。
- 業務の邪魔をしたくない
- 手ぶらで、気軽にがポリシー
そして正直運営側の自分もほぼ準備していないです。たまに明らかにこうした方が良いなって思うことがあれば事前にメモに追記しておきます。
- 準備していないから、1 on 1をリスケする、といった本末転倒なことにならないようにします
- 何もなくても前回のメモがあるため、少なくてもその内容を読み合わせるだけで変わった点を話してもらって、一緒に悩んだり考えたりできます
何回か、事前にGitHubのPull Requestの内容や、Slackなどでの議論内容を探して読み込んでいましたが、なぜかあまり役立たずほとんど見なくなりました。なんというか断片的な情報を元にして話すと、一面的すぎてあまり役立たなかったです。
ペース配分を無理しない
1 on 1立ち上げ時から、現実的な頻度や時間でもって 継続できること に何よりこだわりました。そのため、1人に対して30分・月次がベースラインにしています。前提としてリモートワークを促進させるDaily Stand-up Meetingなどで一定の情報交換があるので、月次が可能かなと思います。関わりが薄い場合は隔週頻度にしたほうが良いかなと思います。
特に月次だと足りないと思うタイミングは以下です
- 新規参画者の場合(特にカルチャーの違うチームからのジョインや・他社からの転職者)
- この場合は、月次だと遅すぎるので、最初の1ヶ月は週次が良いかなと思います
- 自分が直接関わっていないチームのメンバー
- 業務上の関わりが限定的で、Slackチャネルを見れるとか、週1のミーティングで同席する程度だとします
- この場合は月次だと色々タイミングを逃すことが多いかも知れないので、いったん厚めに取ることをお勧めします
OJTメンバーに対して
逆に1 on 1はOJT中のメンバーに対しては実施しないポリシーです。
- OJT面談はOJT自体の取り組みとして開催しているはず
- OJTトレーナーと異なるアドバイスをして、混乱させてしまうと申し訳ない
どちらかといえば、もしOJT中のメンバーに対してフィードバックをしたい場合は、OJT面談に自分も参加した方が良いと思います。
1 on 1に別の人が参加してきたいと言って来た時
基本的には1対1の面談だと思っているので、自分とは別のリーダー役が参加したいと言ってきた場合は、別枠を確保してそちらで話したほうが良いでしょう。
特にメンバー1人に対して、1 on 1をするリーダーが1名であるという縛りは無いため、必要に応じて複数人で実施するのもありかなとは思います。色々な人が関わってメンバーのキャリア形成に寄与していきたいですね。
業務(仕事)についての話題にならないか
1 on 1面談なのに、「あのタスクの背景は~」とか「タスクAを終わらせてからタスクBに着手しよう」といったバリバリ業務の内容の方が盛り上がることがあります。正直、これはこれでありかと思います。つまり本業務に対する同期コミュニケーションが不足していたということが分かったということだからです。
この場合は以下の手順を取ります。
- 1 on 1面談としては業務の話の方が優先度が高い(盛り上がる)のであればその時間に当てる
- リーダーとして意思決定や、メンバーに対するインプットが不足しているのであれば、別途リーダーである自分自身の振る舞いを改善する
- その翌週など別の開催日に改めて 1 on 1面談を実施する
- もっとメンバーにとって中長期的にプラスな内容を話せるようになるまで繰り返す
雑談にならないか
雑談ですが、やはり適度に入れた方が有効です。お互いのキャラクターが分かったほうが、発言の真意が掴めやすいので適度に差し込みます。
注意としては、初回~2回目くらいまでは雑談を入れないことです。最初に雑談成分が多めだと、そういう趣旨の話だと勘違いされる恐れがあるためです。
適度に回数をこなした3回目以降に織り交ぜていく方がベターかなと思います。
鑑定魔法
たまに用いる、状態を把握する質問です。自分自身が普通に気になるということでもあります。
- 「成長実感を感じていますか?」
- 業務で学びのポイントが減っていると、仕事のクオリティも下がる可能性があるので注意です
- 純粋にロールを変えることもあれば、見方を変えたり立ち位置を変えられないかといったこともアドバイスします
- 技術的には、多少オーバーエンジニアリングにトライしてみるなども有効打です(ちょっとしたツールなどは特にお勧め)
- 「今後、伸ばしたい領域があるか」
- 技術面なのか、ソフトスキル面なのかなど
- 目線が直近の部分に向きすぎている時にバランスを取る時に使ったりもします
あまり心を開いてくれなさそうなメンバーに対して
うまく心理的安全性をリーダーである自分自身が作れないと感じるときがあります(過去1例)。その時は別途メンター役を別の同僚に依頼します。
1 on 1 だからといって、全てリーダー自身が解決する必然性もないですし、うまく周りを巻き込みましょう。どうしても相性ってあるかなと思います。
- メンターを依頼するのはあり
- Nヶ月などスポットの依頼だと気軽にOKしてくれやすい気がします
もし、メンバーの状況によってはメンタルケア的なものが重要な場合もあります。もし、話していて状態がよろしくなければ、まず以下のどの状態かは見極めるようにします。
- コンフォートゾーン
- ストレッチゾーン
- パニックゾーン
参考→ コンフォートゾーンとは?成長のために理解すべき3つの領域|モチラボ
パニックゾーンにちょっと踏み込んでいるなと感じたら、任せたロールの一部を巻き取ったり移譲したりとスコープ調整をします。これまたメンターと話してもらったりすることも検討します。万が一こういった状態でしたら、超特急で対応するようにしています。パニックゾーン寄りになるパターンは、新しいチームにジョインしたタイミングとかが多いので、そこの見極めは気をつけるとベターかなと思います。
急ぎは禁物
なるべくすぐに成長してほしいな~という考えから、改善ポイントを大量に伝えたい状況も多々あります。
ただ、これはリーダーから見たときの押しつけになっていないか注意を払う必要があります。他のトピックにも書きましたが本人がその課題/改善点に自分から実感を持って気がつくことが非常に重要です。それでないと、先々週(先月)も同じことを言ったのに改善していないな…となりお互い不幸な時間が続いてしまいます。もちろん状況次第ですが、焦らず、じっくりとメンバー側の考えを引き出すように心がけます。
また、メンバーのランクアップ志向を見極めることはけっこう重要だなと思います。例えば、今期、来期などなるべく早くランクアップしたいと考えているのであれば、ややインプットを多めに伝えても良いかなと思います。一方でランクアップより地力をじっくりと自分のペースで高めたい人には、その人のペースで伝えてあげた方が響くと思います。相手の志向に応じて使い分ける、言ってみれば当たり前のことなんですが私は最初全然できていなかったので引き続き注意して臨んでいます。
話すときの態度
- できる限り(限界はあるけど)客観的に仕事ぶりを見ての所感を伝える
- この時、良いところは”褒める”。可能な限り正しい評価関数であるために
- 何か改善ポイントを伝えるために、2,3個褒める
- どのような成果出したというよりは、どこに悩みがありそうか(伸びしろがありそうか)を探す
- 改善点は感情を込めず伝える。あくまで悪いところではなく、”伸びしろ” であることはけっこう強調しする
基本的にはメンバーの中長期的な成長を見出すコーチングとしての側面が強いと思うので、そこを踏み間違えない。
また、成長があまり感じられない場面もあります。本人の意思が大事だなと感じます。
- 本人の意欲があるならいろいろ一緒に考える
- リーダー側が張り切って「●●なところがあるから、こうしたら?」が全く響かない時があるので、無理強いはしない
- 注意として、本人から改善の言葉がでたとしても、実はあんまり前向きじゃないときもある
- むしろ強みを伸ばす方向に持っていって自信を持ってもらって勢いを付けたほうが良いこともあるのでバランス
- 確実に成長しそうな方面に持っていくのもあり
- 全てはつながっているし、遠回りしても良いと思う(一ヶ月単位で人間は変わるものだと考える)
また、基本的な姿勢は 傾聴 だと思うので、できる限りうまく問いかけて、その考えを聞くということを心がけます。
継続に向けての心構え
1 on 1 ですが、開始する前は時間かかりすぎじゃね? って思っていました。今は次のように考えています
- 時間は 天引き だと考える
- 午前の朝会に連続するとちょうどよい
- メンバー1人1人に、時間を取るという姿勢そのものが重要
- 何を話すかではなく、時間をとるという行為そのものが重要だって誰かが言っていて、励まされています
- うまいこと言えなくてもセーフ
- メンバー1人に対して、隔週開催で月1hも投下できないとすると、そもそもチーミングが崩壊している気がする
- チーミングを見直すキッカケになる?
- 仮に、あるメンバーが離脱すると考えるとリスクが大きい。リスクヘッジとして1人に対して月1~2回で0.5h開催は悪くない投資
実施してみてどうなったか
対話を通してリーダーである自分自身も色々な着眼点を得ることができているなと思います。
- 自分・メンバーの評価のすれ違いは減った
- 半年ごとの評価でのズレはほぼなくなった
- 副作用として、業務上インプットや基礎スキルが不足している状態も素早く分かり、タスク組み換えなど本業務の推進にも役立っています
特に期待値のすり合わせは抜群です。
メンバーに対して●●な仕事が希望を言えば来週中くらいに徐々にできて欲しいなとモヤモヤするときがあったんですが、本人としてはかなりマイペースで数ヶ月ではなく数年スパンでそういった仕事ができれば良いと考えているなど、成長を目指す点は同じかも知れないですが、スピード感という点で様々な考えがあることに気が付きました(当たり前の話ですよね)
総じて、もはやこれを実施していない時がどのような状態か想像できないほど不可欠だなと感じています。
まとめ
フルリモートワークになって1.5年くらいですが、その中で1 on 1ミーティングを継続してみて自分が大事だなと思った点をまとめました。
扱うのは人間であるため、奥深い領域ですが、うまく1 on 1ミーティングを活用してお互い成長したいですね。
秋のブログ週間2021の1日目の記事でした。