フューチャー技術ブログ

【メディア業界】新聞社のビジネスモデルの現状とこれから

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はじめに

こんにちは! 2021年入社、TIGメディアユニット所属の菅野です。

本記事は、「業界ドメインに詳しくなろう」シリーズ連載の「メディア業界へのチャレンジ」第3回目です。
前回のフューチャーのメディア業界への取組み編では、新聞社の具体的な編集業務とフューチャーが開発したコンテンツ管理システムGlyphFeedsについてご紹介しました。

今回は少し視点を変えて、新聞業界のビジネスモデルの現状と課題、課題打破に向けた新しいビジネスモデルへの挑戦についてご紹介したいと思います。

新聞社はどのように収益を得ている?

皆さんは新聞社がどのように収入を得ているかご存知でしょうか?

ご存知の方も多くいらっしゃると思いますが、新聞社は新聞そのものの「販売収入」と、新聞紙面に掲載される広告の掲載料金による「広告収入」の2本柱によって収入を得るビジネスモデルとなっています。その他にも、雑誌や書籍の出版、イベント開催、不動産経営によって収入を得ている新聞社も存在します。

最近流行りの「サブスクリプションモデル」を他業界に先駆けて取り入れた新聞業界は、このビジネスモデルで数十年間安定的な収入を得てきました。
…しかし今、新聞社に危機が訪れています。

新聞社に迫る危機

新聞社の総売上高の推移を見てみましょう。新聞社の収入の2本柱である販売収入、広告収入が徐々に減少しており、特に広告収入に関しては2020年度には2004年度の約3分の1まで低迷していることがわかります。なぜ、年々収入が減少しているのでしょうか?

※引用:「日本新聞協会」1

新聞社の2大収入柱が崩れかけている原因は皆さん想像されている通り、インターネットの発達です。Yahoo! ニュースやGoogleニュースなどのニュースサイト、NewsPicksやグノシーなどのキュレーションサイトの台頭によりメディアの情報量が爆発的に増え、簡単に早く欲しいコンテンツを得る事ができるようになっただけでなく、YouTubeやTwitterといったSNSの普及により誰もがコンテンツメーカーとなれる時代へと変化しました。

こうしたインターネットの発達によるメディアの変化により、新聞購読者の減少や高齢化、新聞広告からWeb広告へのシフトチェンジといった事象が起こり、新聞社の2大収入柱が崩れかけてしまっていると推測できます。2

それでは、この危機を乗り越えるためにはどうすれば良いのでしょうか?

【補足1】 新たなメディアが台頭しても、『新聞』にしかない使命があります。新聞の使命に関しては「メディア業界へのチャレンジ」第1回目、新聞業界(メディア業界)基礎編にて詳しく語っているので是非ご一読ください!

今こそビジネスモデル転換のとき!

メディアの変化に伴い、新聞の購読者離れや新聞広告の低迷をもたらしたことに対し、今日多くの新聞社は生き残りを賭けてデジタル化対応を進めています。

しかしながら「電子的に提供される情報=タダ」という意識が深く根付いており、新聞各社がデジタルサービス(電子版新聞)を開始しても有料会員が伸び悩んでしまい収益化になかなか繋がっていないのが現状です。

各社が新たなビジネスモデル転換に苦しんでいる中、強みである充実したコンテンツや膨大なデータを軸に新たなビジネス領域を開拓する動きが出てきています。

今回はFutureとも関わりがある、「日刊工業新聞社」と「日本経済新聞社」について触れていきます。

日刊工業新聞社の取り組み:コンテンツECサイト

日刊工業新聞社は2022年2月14日に「TREK!」という名前で、記事・写真・動画等のコンテンツ販売サービスを開始しました。商品の検索から決済、著作権利用の手続きまで、すべてオンライン上で完結できるのが特徴で、新聞業界において先駆けたサービスとなっています。

各新聞社が現在とっている、記事や画像といったコンテンツを新聞紙面や電子版に向けて出版・配信するというビジネスモデルでは収益が頭打ちであり、また新聞や電子版に掲載されないコンテンツはお蔵入りになってしまうという課題が有ります。しかし日刊工業新聞社は「TREK!」によって、1つ1つを価値ある商品として販売し新たな収益を生み出すという画期的な事業を展開しています。

【補足2】 「メディア業界へのチャレンジ」第2回目、新聞業界(メディア業界)Futureの取り組みにも記載されていますが、TREK! にはFutreが関わっています。

興味がある方は第2回の記事をご一読ください!

引用:TREK!3

日本経済新聞社の取り組み:データ活用

次に、日本経済新聞社の取り組みについて紹介します。日本経済新聞社は、読者が求めている時間帯に重要なニュースや解説を紙面に先駆けて電子版で配信するデジタルファーストを軸として持っている新聞会社です。デジタルファーストを達成するために、電子版購読者の行動をリアルタイムで分析し、コンテンツ強化やデジタルサービス新規開発を行いました。そして、日本経済新聞社は、データ分析システムを内製開発し電子版新聞への記事コンテンツのアクセス数など様々な顧客データを集め可視化する仕組みを整えました。

また、社内にモニターを設置して常にコンテンツへのアクセス状況を把握できるようにし、社内の誰もがデータ活用できる環境になるよう工夫しています。データの可視化によって早朝に多くのコンテンツが読まれていることがわかり、読者のビジネス活動時間に合わせて新聞紙面に先駆けて重要なニュースや解説を電子版で配信する「デジタルファースト」へのビジネスモデルへのシフトチェンジができました。

※引用:「NIKKEI2021」4

また、電子版購読者のアクセスデータを活用したコンテンツ強化やデジタルサービス開発の充実により、紙の新聞ではアプローチできなかった女性や20代の若者といった読者層が電子版有料会員として増加しており、日経新聞社の電子版有料会員数は2021年から2022年の1年間で約3万7千人増加3し収益化に成功しています。

さいごに

新聞社のビジネスモデルの現状とこれからについてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。新たなビジネスに挑戦し続けている新聞社を今回は2社のみ紹介しましたが、他にも多くの新聞社が危機的状況から脱却するために日々奮闘しています!

次回はさらに未来の新聞社のビジネスモデルについてご紹介できればと思います。
10年後20年後、新聞社がどう進化するか…? お楽しみに!

アイキャッチ画像は Photo by Matthew Guay on Unsplash です。


  1. 1.日本新聞協会 新聞社の総売上高の推移:https://www.pressnet.or.jp/data/finance/finance01.php
  2. 2.PRTIMES 博報堂DYメディアパートナーズ「メディア定点調査2022」時系列分析: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000115.000038657.html
  3. 3.TREK!:https://trek.nikkan.co.jp/
  4. 4.NIKKEI2021:https://www.nikkei.co.jp/nikkeiinfo/corporate/Nikkei_profile2021_jp.pdf