フューチャー技術ブログ

高校生だけじゃもったいない 仕事に役立つ新・必修科目「情報Ⅰ」のレビューに参加しました

秋のブログ週間2023、4週目・16本目の記事です。

中山心太氏の最新作、高校生だけじゃもったいない 仕事に役立つ新・必修科目「情報Ⅰ」のレビューに参加し、お礼に献本をいただきました。ありがとうございました。読んだ感想としては発表されたタイミングでツイートしたのがそれにあたります。結構レビューではがんばってコメントを入れました。レイアウトの都合で入りません、と言われたものもいくつかあったのですが、その反映されなかったコメントも交えて本書の紹介をしようと思います。

コンピュータが基礎教養になるというのはどういうことか、というのは最初のP19で紹介されている問題の解法の解説で明らかになります。大学で学ぶような理論であっても、プリミティブな手でも解けるシンプルな計算や数のカウントといった簡単な手順に落とし、それをCPUのパワーで繰り返すことで高速かつ大量のデータに対して解決できるようにするのがコンピュータを使った問題解決です。この例では1つ1つはとてもシンプルな事象なので、それを手でシミュレートしています。これを繰り返すことでかなり複雑な予測でもコンピュータでできそうだという気持ちにさせてくれる本です。

そのように導入部から説得力のある形で始まるのですが、作者はChatGPT本も数ヶ月前に出しており、そちらも精通しています。最後にはそちら方面の情報のキャッチアップも行えるような構成になっております。情報Iの教科書を読み進めていく上ではガイドとして道を示してくれる本だと思いますし(僕は実際は読んではないですがITパスポートなどの学習にも使えそうという感想)、他の本を読まなかったとしても、単体で「自分の仕事にどのような影響があるのか?」というのを考える大きなきっかけを与えてくれる本かと思います。それだけではなく、P200のような神Excelがなぜダメなのか、なぜこれがDXではないのか、というのが理解できるようになってくるでしょう。

神Excelの方は説明はあっさりしたものですが、おろらく、後続の事務処理にはまったく手を入れる意思がなく(もしくは権限がない)、紙の申請書を回すフローをそのまま使うために「印刷したら過去の方法と互換性が生まれる」という方式になっており、仕事の流れ自体は全く変わっていない(もしくは増える)ため、本来のDXで得られるはずのメリットが享受できないということを説明しようとしていたのでは、と思います。

「ITは基礎教養」とか「これからはインターネット」とかふわっとしたものではなく、学ぶことによって何がどう変わるのか、というのをきちんと伝えてくれる良い本かと思います。システム開発をするにあたって、予算の都合で機能(スコープ)を削っていくというのはよくある話ですが、やはりどこを新しくすることでどのようなビジネス上のメリットを得るのか、どこが費用対効果が大きいのかというのをきちんと考え抜くスキルはITにかかわるけど本業がIT出ない人にもとても大切になり、かなり大きな金額のITプロジェクトの成否を決めるポイントになります。

なお、著者のところてん氏は本に入りきらなかった内容をブログ公開しているのですが、これらも面白いです。

ITを仕事にしている人にも読み物として面白く、そうじゃない人には今後のビジネスを大きく飛躍させるのか、逆に時代遅れにしてしまうのかの分水嶺となる考えを学べる良い本だと思いますので多くの人に手に取ってもらえると良いのではないかと思います。実際、かなり売れているようです。

著者のところてん氏にはこのブログ原稿を見てもっと本文を引用してもいいのよ、と言われたのですが、本文を読む楽しみを最大化して欲しいのでこのままにしておきます。