はじめに

春の入門祭り2025 2日目です。
こんにちは。フューチャー株式会社の 棚井龍之介 です。
ちょうど1ヶ月ほど前に、Gemini、社内利用スタート! という記事を Future Tech Blog に投稿しました。記事内容を見返すと、「2.0 Flash Thinking Experimental」に「1.5 Pro with Deep Research へ投げるプロンプトを生成してもらう」 との記述がありました。現在、手元の Gemini を開いてみると、Deep Research は Deep Research with 2.5 Pro へとバージョンアップされています。ほんの1ヶ月程度で記事が古くなっており、生成AIの改良・発展速度に改めて驚かされたのと、またその一方で、Geminiを業務利用し始めてから「アウトプットまでのプロセス」が一変したため、ブログ執筆時点から「色々変わったけど、まだ、1ヶ月しか経っていないのか。」という思いもあります。
リアル書店、Amazon、図書館を利用して生成AI関連の本を読み漁っていたところ、こちらの書籍にて面白い記述を見つけました。
- これからのAI、正しい付き合い方と使い方 「共同知能」と共生するためのヒント, イーサン・モリック (著), 久保田 敦子 (翻訳)
- きみに冷笑は似合わない。 SNSの荒波を乗り越え、AI時代を生きるコツ, 山田尚史 (著)

「これからのAI、正しい付き合い方と使い方」本では、生成AIから最も恩恵を受けるのは「もともとの能力が最も低かった人たちである」と説明されています。
第6章, p.233
知識労働では、労働者間で能力に非常に大きな差があることが知られている。例えば、上位75パーセンタイルのプログラマーと下位25パーセンタイルのプログラマーとの間には、プログラミングの品質についての複数の指標で27倍もの差がつくと度重なる調査で分かっている。(略)しかし、AIによってこれらの状況が一変する可能性がある。
実験をいくら重ねても、AIから最も引き上げてもらえるのは、もともとの能力が最も低かった人たちである。AIはしょぼい人を優秀な人に変える。(略)最もスキルに乏しい人たちがAIの恩恵を最も受けるが、最もスキルの高い人たちも得るものはあった。
私自身のアウトプットを振り返っても、著者の指摘はその通りだなと実感しています。例えば「これまでに触れてこなかった技術領域」の知見が急遽必要になったとき、従来であれば「キャッチアップの速さ」が差別化ポイントにつながりましたが、現在は生成AIにプロンプトを投げるだけで「自分が欲しい情報を、自分が欲しい形で」得られるようになりました。
では、「必要な知識は欲しくなったタイミングで獲得できる」時代において、新社会人やビジネスパーソンは何を学ぶべきなのか?と疑問に思ったところ、「きみに冷笑は似合わない。」本では 「ボトルネックを探すこと」 が重要になると指摘されていました。
第1章, p.57
ここで言うボトルネックは、システム全体の生産能力を制約する最も遅いプロセスやリソースを指し、改善の焦点となる部分だ。それは初期段階では人間の介入を待つ部分になるだろうし、高度に自動化された後では、相対的に最も遅い部分となる。
「ボトルネックを探すスキル」を伸ばすための具体的なトレーニング方法として、本書では「ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か, エリヤフ・ゴールドラット (著), 三本木 亮 (翻訳)」と「Factorio」が紹介されています。モノは試しに、というノリで、Factorio をプレイしてみました。まず結論から申し上げると、面白くてどハマりしたのと、「この状況、なんか既視感があるな」で学びの連続でした。
Factorioとは

Factorioは工場を建設、防衛していくゲームです。(公式wiki)
ゲームスタート直後は「手動」での鉱物採掘や森林伐採を行い、生産資材や生活道具を整備していきます。資材が一定量集まれば、搬送ベルトや自動採掘機を開発して、採掘作業から搬送までを「自動化」できます。リソースには限りがあるため、生産装置をどのように配置するか、搬送ルートをどのように設計すれば効率的な生産が可能になるのか、ユーザ自身で「適切な配置」や「トレードオフ」を考えながらゲームを進めていきます。
ゲームの特徴として「生産高、生産性」がはっきりと分かるため、例えば「手動」生産していた資材を「自動」生産可能にすると、生産性の大幅アップを目に見えて実感できます。また、初期段階では最適だった搬送ルートが、工場規模の拡大によって「最適ではなくなった」場合に、「既存の生産環境をなんとか活かそうとする」のか、または「一度取り崩して、改めて作り直す」のかなど、まるで「システムリプレイス」を思い起こさせるようなタイミングもあります。現実の業務では「1つの未来」しか選べませんが、ゲームではセーブポイントを作成して、両方の未来を体験できます。
本ブログの執筆時点にて、Windows / MacOS / Linux のいずれの環境でもプレイ可能です。システム要件の詳細は、Steamの「こちら」をご確認ください。
Factorioには無料のDemo版と、有料の通常版があります。

私は本ブログ執筆用にDemo版をインストールして、クリア後に通常版を購入しました。
Factorioプレイ
ゲームプレイ中のスクリーショットを大量に取得してブログに載せる予定だったのですが、ゲーム自体に熱中してしまい、フォルダを見返すと以下3枚しか取得していませんでした。
①ゲームスタート

②ゲームオーバー

③ゲームクリア

「きみに冷笑は似合わない。」本では、このゲームの欠点は「面白すぎて、のめり込んでしまうこと」とあり、本当にその通りだなと身をもって実感しました。
ゲーム内ではミッションが与えられるので、その達成を目指して資源発掘や工場生産を進めていきます。最初は小規模な土地に密集させて、少しづつ生産ラインを拡大しながら並行して自動化を進めていき、資源の枯渇や不足があれば新しい土地を探すプレイスタイルはまるで「開拓者」のような感覚です。スクリーンショットの「②ゲームオーバー」とあるように、外敵からの侵攻に銃や自動機関銃で備えること(ただし、外敵防御に集中しすぎると、肝心の工場建設が遅延する。他にも、拠点開発前に敵地へ攻め込んで、事前に安全を確保しておくことも可能)や、自然の川や防壁があると地上での防衛コストを下げられるなど、こだわれるポイントがありずっと楽しめます。
また、工場生産ラインの「ボトルネック」を解消すると、アウトプットが一気に増えてまさに「自動化の凄さ」を手軽に実感できるのが、このゲームにハマるポイントです。特に、手動作業の完全自動化 は、ユーザ体感としては「マウスカーソルとプレイヤーを俊敏に動かしながら、在庫状況と生産ラインの充足度をチェックし続ける」状況から、「放置していたら、勝手に完成している」に変わりますので、この感動には計り知れないものがあります。ソフトウェアエンジニアのイメージとしては、「一連のコマンドをシェル芸にして、aliasから一発で呼び出せるようにする」や「CIを充実させて、Push後の自動テスト、リリースまでを自動化する」ことを、工場シミュレーションで実現するようなものです。このような思考方法が実業務に活かせれば、全体フローから「ボトルネック」を特定して、例えばAIなどで自動化するプロに近づけそうな感覚を受けました。
他にも、一度ガッチリと構築した生産ラインを「資源枯渇」により組み直した方が良いとなったとき、まだ使えるからとそのまま残しておくのか、はたまた完全に取り壊すのかについてはまさに「経路依存性」の問題です。また、遠隔拠点から資源を運ぶ「鉄道」を引く際には、一度引いた線路はそう簡単に変更できないため、事前に資源分布を調査して線路延長の計画を作っておくなど、「拡張性を意識した調査・設計」に役立つ思考法です。ゲームを上手く進めるための試行錯誤が、そのまま仕事に活かせそうな傑作のゲームだと思いました。
おわりに
本ブログでは Steam 配信ゲームの「Factorio」を紹介しました。
みなさんも、このゲームを通して「ボトルネックを見つける力」を鍛えて、AI時代にチャンスを掴むのはいかがでしょうか!
以上、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。