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フューチャーアーキテクト開発者ブログ

たくさんあって混乱しがちなIoT関連の団体とOSSをまとめました

  • 山本力世

1. はじめに

「IoT」は、昨今、聞かない日はないくらい、バズワード化した単語になりました。
同時に、様々な国や企業が、 IoTの標準仕様 を抑えることによって、市場において有利なポジションを築くために、それぞれがIoT団体・プロジェクト・OSSプロダクトを支援展開しています。
2016年12月9日現在、押さえておきたいIoTに関係する団体・プロジェクトとオープンソースソフトウェアの概要を紹介したいと思います。

2. 団体・プロジェクト

今回紹介するIoT関連の団体とプロジェクトの一覧です。

団体名 略称 設立 設立主体 参加団体数 特徴
1 Plattform Industrie 4.0 - 2013/4 ドイツ産業界(情報、機械、電気)、ドイツ連邦政府 - ドイツの国策的プロジェクト
2 Industrial Internet Consortium IIC 2014/3 米国情報産業界(GE、Cisco、AT&T、IBM、Intel、OMG) 259 米国情報産業が中心の団体
3 Open Connectivity Foundation OCF 2016/2 Canon、Cisco、Electrolux、GE Digital、Intel、Microsoft、Qualcomm、Samsung、LG、Haier など 284 家電系企業が中心の団体
4 Open Mobile Alliance OMA 2002/6 各国のモバイル通信関連企業 72 携帯キャリアが中心
5 oneM2M OM2M 2012/7 各国の情報通信系標準化団体 230 包括的なデバイス周辺の規格を策定
6 デバイスWebAPIコンソーシアム - 2015/4 NTT DoCoMo、ソフトバンクモバイル 27 国内のGotAPI推進団体
7 OpenFog Consortium - 2015/11 ARM、Cisco、Dell、Intel、Microsoft、プリンストン大学など 46 デバイスからクラウドに渡る分散技術
8 IoT推進コンソーシアム ITAC 2015/10 国内の産官学 2605 国内の最大IoT団体
9 ロボット革命イニシアティブ協議会 RRI 2015/5 国内の情報、機械、電気、ロボット団体など 178 国内の最大ロボット団体

順番に説明していきます。

2-1. Plattform Industrie 4.0 (Industry 4.0)

Industrie 4.0は第4次産業革命の意味ですが、これは、第1次(蒸気機関による機械化)、第2次(電力による大量生産)、第3次(ITによる自動化)の次のフェーズ(CPSによる新生産システム)というところから名付けられています。
ドイツ政府主導の戦略的プロジェクトで、製造業の高度デジタル化を推進し、マスプロダクトにおいてもカスタマイズ可能にし、さらにコストも削減を狙うというものです。
実世界(Physical System)の情報とサイバー空間(Cyber System)を結びつけたものを、Cyber Physical System(CPS)と名付け、この概念が本プロジェクトでは中心に置かれています。これはIoTに似通った世界観ですが、IoTの括りよりも大きな括りの考え方になります。
実際に実現していく際のソリューションやソフトウェアなどについては、プロジェクトメンバーの中核に位置しているシーメンスとSAPが大きな役割を担っています。

2-2. Industrial Internet Consortium (IIC)

GE、Cisco、IBM、Intelなど、米国の情報系産業の中心企業が多く参加している団体です。
モデリング言語で有名なUML、言語非依存の分散オブブジェクトのフレームワークであるCORBA、そしてソフトウェアの開発手法であるMDAなどで有名な標準化団体であるOMGが事務局を担当しています。
どちらかというと製造業に主眼をおいたIndustrie 4.0よりもターゲットとする範囲が広く、米国企業が中心ということでIoTを使った新しいビジネス作りや新技術の開発に主眼をおいてます。
多くの標準化団体と連係をしていますが、IIC自身は標準化団体ではありません。
当初はPredixを擁すGEとハードベンダー達といった感がありましたが、現在は日本企業も数多く参加している団体でもあります。

2-3. Open Connectivity Foundation(OCF)

2016年2月に発足した、旧Open Interconnect Consortium (OIC) の後継団体になります。旧OICは、Intelを中心に発足した団体です。
現在は、AllSeen Alliance (AllSeen) がこの団体に合流しました。AllSeenは、Qualcommを中心に発足した団体です。
以前は、別組織としてIntelとQualcommが対立していたような構図でしたが、両団体が合流することで、規格の分断ではなく統合が進むものと思われます。
今後、それぞれの団体が推進していたIoTプラットフォーム(AllSeen AllianceのAlljoyn、OICのIoTivity)を徐々に統合していくようです。



図1. OCFの変遷

2-4. Open Mobile Alliance(OMA)

世界のモバイル通信関連企業が加盟している、携帯電話関連の標準規格策定を行う団体です。
前身団体の Wireless Application Protocol (WAP) フォーラム、Open Mobile Architecture Initiative と Location Interoperability Forum(LIF)、MMS Interoperability Group(MMS-IOP)、SyncML Initiative、Wireless Village Initiative が合流して設立されました。
日本からも、NTT DoCoMo、KDDI、ソフトバンクモバイルなど、主要な通信キャリアなどが参加しています。



図2. OMAの変遷

2-5. oneM2M(OM2M)

元々はヨーロッパの標準化団体が中心に策定されてきた標準規格を世界に広げるために、世界の各地域の複数の標準化団体によって設立された団体です。
特定の技術や通信プロトコルに依存しない、抽象度の高い標準化を進めています。標準化された各規格に対して、実際によく利用されている技術や、OCFのAlljoyn、IoTivity、OMAのLWM2MなどのIoTデバイスシステムと連係可能なものになっています。
現在は、標準仕様の第2版が公開されています。

2-6. デバイスWebAPIコンソーシアム

OMAにて標準化された Generic Open Terminal API Framework Version 1.0(GotAPI) の利用・拡張などを中心とした国内の団体です。弊社も企業会員となっています。
現在では、本団体のメンバー企業が中心となって、GotAPIを利用したプラットフォーム「Linking」が提供されており、このプラットフォームに繋がるデバイスについても複数社から販売されています。

2-7. OpenFog Consortium

クラウド(雲)、デバイス、そしてその間に位置するフォグ(霧)を中心とした、フォグコンピューティングにフォーカスした団体です。
従来のクローズドシステムや昨今のクラウドコンピューティングの次のアーキテクチャを検討していく団体になります。

2-8. IoT推進コンソーシアム(ITAC)

2015年10月に設立された、参加団体数2600を超える(2016年12月現在)、日本発の産官学連携のコンソーシアムです。
活動は、技術開発WG(通称:スマートIoT推進フォーラム)先進的モデル事業推進WG(通称:IoT推進ラボ)、専門WGの3種類のワーキンググループ(以下WG)で行われています。
スマートIoT推進フォーラムでは、IoT関連技術の開発・実証・標準化などを行い、IoT推進ラボでは、先進的なモデル事業の創出、規制改革などの環境整備などを行っており、弊社会長の金丸も支援委員として参画しています。
専門WGは必要に応じて設置されるのですが、現在は、IoTセキュリティWG(2016/1~)データ流通促進WG(2016/1~)の2つのWGが設置されています。
今年、IICとOpenFog Consortiumと相互に連係する署名を取り交わしています。

2-9. ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)

ロボット革命実現会議にて、日本の国家戦略として「ロボット新戦略」が提案され、この戦略のための組織的プラットフォームとして本組織が設立されました。
国内のロボット・機械系団体・企業が数多く参加しています。

[まとめ]各団体の連携状況

現在、上記の各団体は、この図のような連携関係にあります。
それぞれの団体がテーマとするレイヤーやドメインが微妙に異なるので、相互で連携をしていくことで標準化作業などの無駄な重複などを避けていくという意味合いもあります。

3. オープンソースソフトウェア

今回紹介するIoT関連のOSS一覧です。

ソフトウェア名 主な開発主体 公開時期 対象 特徴
1 AllJoyn Qualcomm (OCF) 2011 家電・ウェアラブルなど Windows 10 は既に対応済
2 IoTivity Intel, Samsung (OCF) 2014/12 家電・ウェアラブルなど OCFが推進していくプラットフォーム
3 Eclipse IoT Eclipse Foundaion 2012 (iot.eclpse.orgとして) 様々な領域 ソフトウェアは主にJavaで構成されている
4 SensorBee Preferred Networks 2016/3 IoT機器などからのストリームデータ 日本発のIoT向けストリーム処理OSS Go言語で開発されている

順番に説明していきます。

3-1. AllJoyn

旧AllSeen Allianceが推進している、IoT Frameworkです。
既に、本規格に準拠した家電が複数の有名家電メーカーから販売されています。
今後、旧OICが推進しているIoTivityへ徐々に統合されていくものと思われます。

3-2. IoTivity

旧OICが推進している、IoT Frameworkです。
今後、旧AllSeen Allianceが推進しているAllJoynを徐々に統合していくものと思われます。

3-3. Eclipse IoT

IDEで有名なEclipseですが、IoTに関するプロジェクトについても多数擁しており、現在、26ものIoT関連プロジェクトがあります。
比較的、有名なものとしては、MQTT/MQTT-SNクライアントの「Paho」、MQTTブローカーの「mosquitto」、oneM2M実装の「OM2M」、IoTゲートウェイの「kura」などがあります。
Eclipse IoT内でIoTプラットフォームに必要な要素技術をほぼ網羅しています。
詳細については、次のホワイトペーパーを参照してみてください。

参考:White Paper: The Three Software Stacks Required for IoT Architectures

3-4. SensorBee

Prefered Networks社が開発した、IoT向けの軽量なストリーム処理エンジンです。
Go言語で書かれています。

参考:SensorBeeとは何か?

4. まとめ

今回紹介した団体でいうと、コンシューマー系IoTについてはOCF、エンタープライズ系IoTについてはIIC、国内では、IoT全般についてはITAC、製造・機械系IoTについてはRRIなど得意とする領域が微妙に異なります。
そのため、フォーカスしたい内容によってウォッチする団体を選択することが重要となります。
また、2016年11月にはファーウェイなど中国を中心としたEdge Computing Consortium (ECC)という団体が設立されるなど、新しい動きにも注目していきたいところです。
OCFへ集約されていく流れなどは、10数年前のモバイル業界で言うところのOMA設立のような状況が、ちょうど今、IoT業界で起きているような状況となっています。
紹介したOSSでは、コンシューマー系のIoTについてはIoTivityに収斂していき、より包括的なプラットフォームとしては、Eclipse IoTも存在感を出していくものと思われます。SensorBeeもIoTにフォーカスしたストリーミング処理エンジンとして今後の動向に要注目です。