こんにちは。
フューチャー株式会社TIG/EX(Energy Transformation)ユニットの久保 樹礼(くぼ たつあき)です。
私は2017年フューチャーに新卒入社し、これまでメディア業・アパレル業・防災事業にわたりパートナー企業様の事業効率化・拡大に携わってきましたが、昨年より総合エネルギー業の企業様とご一緒させていただいております。2022年度は、フューチャーの従業員代表も努めさせていただきました(従業員代表活動記事はこちら)
そんな私が、2023年1月にLPガス小売業では必須と言える国家資格「高圧ガス第二種販売主任者」に合格したので、なぜITコンサルタントである私が本資格取得に挑戦したのか、資格取得に向けどのように勉強したのかご紹介します。
第二種販売主任者免状取得に向けて、挑戦しようとしている方の参考になると嬉しいです。
参考までに:
高圧ガス販売主任者免状には、「第一種」と本記事で紹介する「第二種」があります。第二種は、LPガスの販売に係る保安の実務を含む統括的な業務を行う方に必要な免状です。一方で、第一種はLPガス以外の高圧ガス(詳細は一般則第七十二条参照)を対象としています。ガスの種類の違いなので、一種・二種に上下関係などはありません。
「高圧ガス第二種販売主任者」受験の動機
第二種販売主任者受験の動機は、パートナー企業様の現場や実務をより詳しく知りたいと考えたからです。
当然、経営とITをデザインするフューチャーですから、パートナー企業様の実務に詳しいですが”まだ足りない!!!”と感じたからです(笑
私は昨年より、総合エネルギー事業を営むパートナー企業様と共に、LPガス託送の配送最適化に挑戦しています。
その中で、実際にLPガスの充填基地に訪れ、ボンベを担がせていただいたり、配送員の方々と会話させていただいたりと現場に触れる機会をいただきました。
しかし配送最適化に向けた議論をパートナーと重ねる中で、自身の配送現場の理解不足をしばしば痛感していました。
そんな最中、現場担当者様と会話させていただいた折、「IT知っている人はすごいと思う。私も自身の業務を動かしているシステムがどうやって作られているのか、理解を深めようとITパスポート挑戦してみたが本当に難しいと実感した」とおっしゃられていました。
私が現場の知識を求める一方で、配送現場の方もこちら(IT)の理解を深めたいと必死なことを改めて認識し、この方と同じレベルで託送について語りたい! と思いました。LPガス現場の方々と同じ視点で語るためには、何が必要か、どんな手段があるかと調べた時に見つけたのが国家資格「高圧ガス第二種販売主任者」でした。
本資格合格後に得られる「第二種販売主任者免状」は、パートナー企業様社員や、LPガス小売業社員であれば皆保有している資格です。私は「高圧ガス第二種販売主任者」資格取得に挑戦することで、より深い知見を習得し、またパートナー様と同じ目線で会話したい思い受験しました。
第二種販売主任者免状を得ると、LPガスの販売事業所の統括的な業務主任者に選任されることができます。
業務主任者に選任されるためには、免状を取得していることの他に高圧ガスの販売に関する実務経験を6ヶ月必要としますが、条件を満たすことでLPガス販売事業では欠かせない人材となることができます。
LPガスの販売事業所において、LPガスの販売に係る保安の実務を含む統括的な業務を行う方に必要な資格で、工業用のLPガスの販売主任者(高圧ガス保安法)として、また、一般家庭等で生活の用に供するLPガスを販売するLPガス販売所の業務主任者又は業務主任者の代理者(液化石油ガス法)として選任されることができ、LPガスの販売に関する保安に携わることができます。
実施した勉強方法
私が実施した勉強方法は以下です。
高圧ガス販売主任者第二種試験は、法令・保安管理がありそれぞれ60点以上で合格となります。
法令試験問題では、高圧ガス保安法・液化石油ガス法関係法令があり、法の目的や対象範囲、法の各項目に対する問題です。
保安管理技術試験問題では、LPガス販売に係る保安技術に対する問題です。
例えば法令では、以下の記述が正しいかどうかの判断。
高圧ガス保安法は、高圧ガスによる災害を防止して公共の安全を確保する目的のため、高圧ガスの製造、貯蔵、販売、移動及び移動を規制することのみを定めている。
例えば保安管理技術では、以下の記述が正しいかどうかの判断。
マイコンメータSは、遮断弁の復帰操作を行った後、マイコンメータより下流のガス漏れをチェックし、ガス漏れを検知した場合に再遮断する機能を有している。
のような出題形式です。具体的には各問に対し、記述が(イ)(ロ)(ハ)(ニ)と用意され、どの記述が正しいのか組み合わせを選択する(例:イ、ハ)形です。
試験の難易度は、私の所感では一夜漬けや1週間程度の学習では到底合格できないと感じるレベル感でした。
私の場合は、パートナー企業の方から誰でも合格するレベルの問題と伺っていたため、学習に入ったのが試験から2ヶ月ほど前からでしたが、かなり苦労しました。おそらく実際にLPガス小売業の現場で働かれている方からすると、現場での知見の量が膨大なため、ある程度簡単に感じるのかもしれません。
まだ実務経験が十分でない方や、未経験である方は十分な学習期間と覚悟が必要です。
本受験は年に一度(11月)のみ実施のため、不合格の場合はまた1年後までお預けです。どうしても合格の確率をあげたい! という方は、事前の講習・試験を受けておくことをおすすめします。講習の受講とその後の試験に合格された方は、第二種試験の際に保安管理技術試験が免除されます。
令和4年の第二種販売試験の合格率は54.6%だったのですが、通常(法令・保安管理)受験の合格率は 37.0% 、保安管理技術免除の方々の合格率は90.0%と、合格率が大きく違います。
たびたび、高圧ガス第二種販売主任者試験の合格率は60%前後と記述されているメディアを見かけますが、講習参加による免除科目を有している方も入れた全受験者の合格率です。
全科目受験された方の合格率は37.0%であることは、資格勉強へ臨む前に認識しておいた方が良いと思います。
数値引用:高圧ガス保安協会>国家試験の合格率の公表(令和4年度の合格率)
また既に高圧ガスに関する他資格を有する方など、他の免除項目もあるため興味のある方は「試験科目一部免除制度」を参考にしてみてください。
受験振り返りと実務への活用
私は試験勉強としては約2ヶ月、免除科目なしで挑んだ受験でしたが、正直なところ受験終わりの時点では、合否に自信はありませんでした。
稀に、ひたすら過去問を解けば合格できる! のような情報を見ますが、今年の試験でも例年出題されていなかった類の問題がありました。過去問を暗記しているだけでは合格できません。実務として普段から高圧ガス周辺に携わっている人でなければ、ある程度の覚悟を持って勉強の臨んだ方が良いと思います。
理想としては、
- 法令(高圧ガス保安法・液化石油ガス法関係法令)全ての理解と暗記。
- 講習テキストの内容を全て理解と暗記。
ただし試験合格を最低限の目的とするならば、
- Step1:法令・講習テキストを流し読み(かなり難しいのでこの時点で全て理解しきらずで大丈夫です)
- Step2:過去問実施
- Step3:過去問回答とその周辺理解のために、再度法令と講習テキストを熟読。
Step2~3の繰り返しが効果的と思いました。
または実際に、LPガス容器やメーターを見に現地に訪れ、具体的なイメージを持つと良いかもしれません。
都市部の場合は都市ガスが普及しているため、LPガス容器を見かけることも少ないかもしれません。地方に出かけた際や、都市部でもラーメン屋や中華屋にもあります。ただし、当然不用意に敷地内へ入ったり、近づいたりしていいものではないため、遠くから眺める程度でお願いします。
合格後の現在、試験内容を全て理解しているかというと、正直今でもなお法令や講習テキストを日々開いています。実業務で普段から高圧ガス周辺に携わっている人と、試験取得に向けた勉強をした私とでは今もなお理解の深さには大きな差があるのは事実です。
しかし資格挑戦前と今では、マイコンメータを見かけた際に何号のメータか、マイコンメータSかEかなど目に付く機会が増えました。
またパートナー企業様と日々会話する中で、何か問題が突き当たった時に「法令の◯◯に触れなかったか、条件があった覚えがある」のように、その勘所は身についたかと思います。パートナー企業様からも「法令にある。久保さん見ておいてよ!」のように、第二種販売主任者免状を取得している信頼から、期待の声も生まれます。
資格挑戦のきっかけとなった現場担当者様にお伝えしたところ、「次は、液化石油ガス設備士に挑戦と、一緒にLPガス配送回ろう!」とお喜びいただきました。
IT業界では、担当のシステムについて仕様に詳しくなることは当然ありますが、そのシステムのインプットである現場がどう動いているのか、どんなルールがあるのか、どんな人がどのような手順で働いているのか。現場を抑えた上で、システム仕様を語ることの重要性を改めて感じる機会となりました。
高圧ガスという危険物を扱うからこそ、試験のための勉強で終わらせず、現場の方と同じ目線・知識であるべきを語り、理想の追及に向けて活用と理解を深めていきたいです。
EX(Energy Transformation)ユニット設立
エネルギーは国家、経済、産業の礎です。
しかし昨今、地政学的リスク顕在化によるエネルギー価格の高騰や、安全保障政策の変化、あるいは気候変動など現在進行形で産業構造・経済・社会に大きなパラダイムシフトが起きています。
フューチャーに2022年11月に発足したEX(Energy Transformation)ユニットに私は所属しています。EXユニットでは最近様々な企業様からお声をいただいております。エネルギーは、その種類から、サプライチェーンの大きさまでとても幅広いテーマで、求められる知見や経験も膨大です。
EX(Energy Transformation)ユニット
弊社のTIG(Technology Innovation Group)ではユニット制があり、その中でEXUは、世界の経済活動や安全保障戦略の礎となるエネルギー業界の在り方を、我々そしてクライアントやパートナーと共にテクノロジーを軸に根幹から変革していく組織です。
そんなエネルギー業界が今、急激に変わりつつあります。
期待をお寄せいただいた企業様に、スピーディかつ大きな価値を提供できるよう、私たちITコンサルタントは深い知見と幅広い技術スキルが必要となります。
技術に強いITコンサルタント集団のイメージが強いフューチャーですが、私はエネルギー業界の現場から経営、トレンドまで抑えたITコンサルタントを目指しています。
今後も現場と同じ目線で問題提起し、経営陣とあるべきを追求し、またエネルギー業界のトレンドにアンテナを貼って未来価値を創造していきます。
エネルギー業界記事一覧
- 【エネルギー業界】LPガス基礎part1 超入門編
- 【エネルギー業界】LPガス基礎part2 供給設備編
- 【エネルギー業界】LPガス基礎part3 充填編
- 【エネルギー業界】電力基礎知識編
- 【エネルギー業界】LPガス基礎part4 バルク配送入門
p.s.
最近はエネルギー×メタバースに興味を持ち、日々情報収集しています。リアルなメタバース空間を実現しようとしている EVERDOME(エバードーム)プロジェクトは、メタバース空間でのエネルギー活用で何かできないかと期待しています。