フューチャー技術ブログ

CNCF連載2025

CNCF とは

Cloud Native Computing Foundation の略で、コンテナオーケストレーションとして知られている Kubernetes を中心とした OSS を管理している Linux Foundation 傘下の非営利団体です。2015 年に Google などが中心となり、コンテナオーケストレーションツールである Kubernetes のバージョン 1.0 リリースと同時に設立されました。

2025 年で Kubernetes リリースから 10 年経過し、クラウドネイティブ技術の普及も随分進んだ気がします。コンテナ、CI/CD、オーケストレーション(ここは ECS や CloudRun なども)、ログやメトリクス収集などのオブザーバビリティなどは導入してもニュースにもならなず、それぞれの組織やプロダクトに自然に導入されているように思えます。

コミュニティ活動の支援も活発で年に数回ほど、KubeCon と呼ばれるカンファレンスを世界各地で実施しています。

直近ではKubeCon + CloudNativeCon Japan 2025が東京で 6/16 ~ 6/17 に開催されます。実はこれが日本での初開催となります。おめでたいですね!

CNCF が提唱するクラウドネイティブとは

CNCF が提唱するクラウドネイティブ技術とは、CNCF のリポジトリで以下のように定義されています。

クラウドネイティブ技術は、パブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウドなどの近代的で動的な環境において、拡張性あるなアプリケーションを開発・実行するための能力を組織にもたらします。この手法の代表例として、コンテナ・サービスメッシュ・マイクロサービス・イミュータブルインフラストラクチャ・宣言型 API があります。
これらの技術により、回復性・運用性・可観測性のある疎結合システムが実現します。これらを堅牢な自動化と組み合わせることで、エンジニアは影響の大きな変更を頻繁かつ予測どおりに行うことができ、最小限の労力で作業できます。

一言でいうと、クラウドの利点を最大限に引き出した、アプリケーションの設計・開発・運用することかなと思います。

プロジェクトについて

CNCF では多くの OSS をホスティングしてします。プロジェクトは成熟度レベル別に 3 つ分類しています。キャズムのイノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティに似ているなと思われる方もいらっしゃるかと思いますが、公式サイトにも、それに相当したコンセプトであると記載されています。

  • Graduated(卒業)
    • 「成熟した」プロジェクトとして認められたものについては Graduated になります
    • Kubernetes、Prometheus、Envoy、containerd など
    • 2025 年には、CubeFSin-totoがこのレベルに昇格
  • Incubating
    • Sandbox から利用数などが増加すると Incubating になります
    • オープンソースの Kubernetes セキュリティプラットフォームである、Kubescape が 2025 年 2 月に昇格
  • Sandbox
    • CNCF のプロジェクトとしては「early stage」として位置付けられています
    • 2025 年には、物理サーバ上に PaaS を構築するCozystack、複数の k8s クラスタ管理する KubeFleet などが追加されました
Graduated、Incubating、Sandboxの3段階

他にも、Archive というステータスがあり、2025 年 6 月 13 日時点で 16 プロジェクトが存在していました。

プロジェクト数の推移は公式サイトのメトリクスページから確認できます。

Graduated が 31、Incubating が 36、Sandbox が 143 という内訳のようです。

プロジェクト数の推移

チャートを見ると分かる通り、右肩上がりでまだまだ勢いがある領域だと感じられます。

CNCF Annual Report 2024

2025 年 5 月 19 日にCNCF Annual Report 2024 という、年次報告書が公開されました。せっかくなので NotebookLM に読み込ませ、面白かった内容をサマリで紹介します。

  • CERN が、CNCF プロダクトである、Prometheus、Argo、FluentD、CoreDNS、Harbor などを導入し、数千のノード(!)かつ、500 以上のクラスターを管理している(!)とのこと、トップエンドユーザー賞を受賞
  • 北米の、KubeCon + CloudNativeCon North America 2024 では、プラットフォームエンジニアリング、大規模なクラウドネイティブ AI、セキュリティが主要な焦点だった
  • 中国の、KubeCon + CloudNativeCon + Open Source Summit + AI_dev China 2024 では、クラウドネイティブ AI (CNAI) が主要テーマとなり、大規模言語モデル (LLM) や機械学習ツールがクラウドネイティブインフラで稼働している事例があった
  • Kubernetes とクラウドネイティブのスキルを証明する新しい認定資格として、Kubernetes and Cloud Native Security Associate (KCSA)、Certified GitOps Associate (CGOA) など、合計 6 つが導入されました
  • OpenTelemetry は貢献者ベースを拡大し続けており、最近プロファイリングを新しいシグナルタイプとして追加し、golang コンパイル時計測機能の追加に取り組んでいる

CNCF 連載とは

2020 年2023 年にも開催した、技術ブログのリレー企画です。フューチャーでは月に 1 回程度のペースで、何かしらの技術テーマを元にブログリレー(ブログ連載)を行っています。6 月は先に紹介した KubeCon + CloudNativeCon が日本で初開催されるということで、それを記念に開催するとなりました。少しでも盛り上がりに繋がればと思っています。

メンバーは基本的には社内で参加を募り、有志で集まってもらいました。どのプロダクトを選ぶかは完全に各々の自由です。「どれを選ぶべきか分からないんだけど..」という声も最初はよく聞かれました。アイコンを並べるだけでなかなかの情報量です。

CNCFプロジェクトのアイコン一覧

そのたび、Graduated か Incubating のページか、Sandbox のページ から、プロダクトのアイコンを見て「ジャケ買い」しましょうと伝えています。CNCF のアイコンは、少しでも目立って覚えてもらおうという気持ちからか、デザインが良いです。各自の感性にビビッときた気鋭のプロダクトが選ばれるでしょう。

スケジュール

さいごに

私自身は、クラウドマネージドサービスを優先的に技術選定することが多く、CNCF プロジェクトの OSS を直接的に利用することが少ないですが、いざ調べてみると魅力的なプロダクトが数え切れないほど多数あり、調べていくとあっという間に時間が溶けました。

このブログ連載が、CNCF のプロジェクトのエキサイティングな世界に触れるきっかけとなれば幸いです。