フューチャー技術ブログ

DM文化についてSlackで話した

Slack、便利ですよね。フューチャーでも2020年の本格導入以降、多くのプロジェクトで使われており、もはや仕事に欠かせない空気のような存在です。

先日、Slack利用ガイドラインを考えるチャンネルで、Slackの「困った使い方」について話しました。オープンな文化を守るために大事だと思ったので、ブログにまとめました。

探せばありそうな残念な光景

発端は、mizchiさんのとあるXのポストでした。これをきっかけに、こんな感じの会話をしました。

Aさん: @channel を連投する人がいて、結局ミュートされて機能不全になるの、不謹慎ながらちょっと笑ってしまいました。幸い、自分の周りにはそこまでの人はいなかったし、DM(ダイレクトメッセージ)を多用して情報の非対称性を作るなどで、社内政治する人も見たことないです。

Bさん: 昔、大きめのプロジェクトで @channel を連投に近いことをする人ならいたかも…。あと、DMでいつの間にか物事が決まっていて、情報の透明性が低いパターンも経験しました。今思えば、自分の立場を守るための社内政治だったのかもしれません。

Cさん: DMで物事が決まるの、どういう対処したんですか?

Bさん: 「何か話しにくいことでもあるのかな?」と思って、少人数のチャンネルを作って誘導したり、「その話、どこで決まったんですか?」と粘り強く聞き続けたりしました。そうしたら、自然と減っていきましたね。

さらに、別のメンバーからはこんな経験談も。

Cさん: 「大人数のプロジェクトチャンネルで困ったことの質問を連投したら、リーダーから『質問でチャンネルを埋めないで』と指摘されたため、5人くらいのDMグループを作って、質問し合っている」という話を聞いたことがあります。

どちらもDM使いすぎ問題です。原則、Slackではテキストベースのオープンなやり取りが基本だと思っているため、ここに躓くと発展性が厳しいように感じます。さらに最後の内容は、リーダーの指示が良くなかったかもだけではなく、「リーダーから指摘されたから」という他責のような話にも聞こえ、対応もそれでいくのかーという感じとなり、うえーん、健全じゃないやつーとなりました。

DM増殖の謎を解く

なぜオープンなチャンネルからDMへ情報が流れていってしまうのでしょうか。原因は大きく2つありそうです。

1. 心理的安全性、足りていないかも

「こんな初歩的な質問をしたら、怒られるのでは?」

気持ちはわかりますが、この空気がチームに蔓延すると、オープンな場の発言が激減します。いわゆる心理的安全性の欠如。心理的安全性とは、「このチーム内では、対人関係のリスクをとっても安全であるという、メンバーに共有された信念」と定義されています。

リーダーが何気なく質問を咎めるような雰囲気を作ってしまうと、チームの学習機会は失われ、有益な情報がDMに消えていきます。本来、リーダーがすべきことは、 どんな質問でも歓迎される雰囲気を作り、メンバーの成長を促すこと であるはずなのに、逆にチームの足を引っ張ってしまっています。

2. チャンネルを気軽に作れていないかも

一方で、こんな意見もありました。

Bさん: pj-future-generalのような場所で気軽に質問が飛び交い続けるのも辛い、という偉い人の気持ちも少し分かります。社内外の多くの関係者と大量のやり取りをする認知負荷が半端なく、重要な情報を逃さないために流量を絞りたくなるので。ただ、代替手段(気軽に質問できるチャンネル)を提供しないのか、あるいは不足しているのは問題ですよね。

Dさん: 以前、チャンネルの乱立を懸念して、チャンネル作成権限を一部のメンバーに絞っていた時期がありました。その結果、誰でも手軽に作れるDMグループが多用される文化が一部に残ったのかもしれません。

文化ではなく、Slackの物理的な設定に起因した話だとすると悲しいですね。この場合は、誰でも手軽に作れるDMグループに流れてしまうのも一定の理解があります。権限がある人に雑談チャンネルを増やして~ってお願いするのもなにか気が引けるものですし。しかし、DMは後から検索しづらく、メンバーの追加も面倒。結果、情報のサイロ化が加速してしまいます。

この問題を解決するには、チャンネル作成のハードルを下げ、目的に応じてサクッと作れるようにするのが効果的です。

  • #pj-future-general: プロジェクト全体の重要アナウンス用(投稿者を限定)
  • #pj-future-random: 雑談用
  • #pj-future-help: 気軽な質問・相談用
  • #pj-future-neko: 猫の写真を共有する会

こんな風に分割すると、自分に関係ある情報だけを受け取りやすくなります。

DM文化と戦うために、取るべき行動

もし自分の周りでDM化が進んでいる場合、どうすればよいのでしょうか。Slackの会話から見えた、泥臭いアクションを紹介します。

1. 透明性を求めて粘り強く問い続ける

  • 「その話、どこで決まったんですか? やり取りのログが見当たらなくて」

非常にシンプルかつ愚直ですが、こうした日々の活動によって「議論はオープンな場でやろう」という考えを暗に伝えることができ、物事を密室で決めることへの抑止力となります。全てに言えることですが、きな臭さを放置して良いことはありません。納得するまで問い続ける姿勢、重要です。

2. オープンな場へ、優しく誘導する

DMで議論が始まったら、こう提案します。

  • 「この話、他のメンバーにも関係ありそうなので、#pj-future-help チャンネルに移動しませんか?」

相手を責めるのではなく、あくまで「みんなのために」という前向きな姿勢でオープンな場へ促していきましょう。

3. 権限の委譲。信頼は責任感を育む

私たちの会話は、最終的に「チャンネル作成権限」の話に行き着きました。

  • 「OJTを卒業したメンバーなら、誰でもチャンネルを作って良い。権限があって、初めて責任感が芽生える。仲間を信じようぜ」

「無駄なチャンネルの乱立が怖い」という気持ち以上に「DMグループが乱立し、情報がサイロ化する」という弊害の方が、チームにとって痛いです。

Slackの公式ドキュメントでも、チャンネルの目的を明確にし、オープンなチャンネルを基本とすることが推奨されています。

メンバーを信頼して、チャンネル作成権限を広く解放する。”権限” は “責任” を産み、自律的チームに育ってきます。もし本当に不要なチャンネルができても、そのうちアーカイブすればいいだけの話でもあります。

まとめ

Slackは素晴らしいツールですが、ポテンシャルを最大限に引き出すためには、組織としての文化・ルール設計が欠かせません。

  • 心理的安全性、やっぱり大事
  • コミュニケーションはオープンにすることでチームの学習量を増やす
  • DMで議論して決まった内容は掘り下げて、オープンな場に誘導
  • チャンネル作成のハードルを下げ、もっと自由に

もし、あなたのチームのコミュニケーションに少しでも淀みを感じたら、この記事が何かを変える小さなきっかけになれば嬉しいです。

@channel 利用の是非など、もっと詳細なSlack利用ルールに興味がある方は、Slack利用ガイドラインも見ていただくと幸いです。