はじめに
こんにちは、TIG/DXユニットの真野です。
サーバレス連載の第2弾は、典型的なAWSサービスであるLambdaアプリをGoで開発する中で調べた内容や、Tipsを紹介します。
Lambdaの利用コア数は?
結論⇨ 全ての場合で”2”でした。
(2021/05/22追記) アップデートがあり、最大6vCPUまで上限が上がりました。
以下は2020.03時点の調査結果です。
Goで開発する場合、少しでも性能を稼ぐためgoroutineを使う場面も多いと思います。特にバックエンドのデータストアがDynamoDBである場合は負荷を気にする必要がほぼ無いため、わたしはデータの書き込み部分を良く並列化することが多いです。
そういった場面で概算でどれくらい性能上がるのかな? と推測ができるよう、Lambda上で利用できるgoroutineの個数を調べました。メモリを128MB~3008MBを調整することで、裏のCPUやNW幅も増減する話も聞いたので、メモリサイズを変えて調べました。
Goで利用コア数を調べるには NumCPU を利用するそうです。これをLambdaのお作法に組み込みます。
GoにおけるLambda関数の規約から、最も短いシグネチャは func()
ということで、単に標準出力するだけのものを作成します。
package main |
これを公式の手順を参考ににデプロイします。
起動トリガーは何でも良いですが、今回はKinesis Data Streamをマッピングさせ、AWS CLIで aws kinesis --profile=my_lambda_test put-record --stream-name dev-test-lambda --partition-key 123456789 --data MTIzNDU=
など適当なデータを投入し実行します。
例えば、メモリを1024MB与えて、実際に起動すると以下のようなログがCloudWatchLogsに出力されます。メモリなど設定を変更するたびに、LogStreamが変わるのでご注意ください。
2020-03-26T03:10:39.194+09:00 START RequestId: 65078a85-9db0-45b0-bbf2-81a4eb19a08a Version: $LATEST |
実際に128MB, 512MB, 1024MB, 3008MBでLambdaを動かし、runtime.NumCPU()
の値を取得すると以下の結果でした。
Memory[MB] | NumCPU |
---|---|
128 | 2 |
512 | 2 |
1024 | 2 |
3008 | 2 |
…全部2ですね。
もちろん、利用可能なCPU利用時間はメモリサイズによって変動すると思いますので、Concurrentにgoroutineを動かす場合は、メモリサイズを上げることは有効な対策になると思いますので、ユースケースに合わせてパラメータを検討しようと思います。
ちなみに、隣に座っている同僚が、つい最近メモリサイズごとの処理性能を計測していましたので大体どのくらいメモリを与えるとよいかの指標は近いうちに公開したいと思います。
Lambdaの初期処理のポイント
ドキュメント に記載している通り、Lambda関数外に変数を宣言できますし、init関数を用いる事もできます。Lambda関数は同時に1つしか動かないのでスレッドセーフを気にせずフィールドにおけるそうです。
init関数も良いですが、普通にmain関数内に初期処理を書いています。
var kc *kinesis.Kinesis |
こうすると、Lambdaの実行時間を削減につながる≒課金額を減らせる可能性があるため、初期処理に寄せられるものはドンドン寄せたほうが良い使い方になります。
Lambdaの関数タイプ
Lambdaの関数として以下の8パターンが利用できます。TIn
, TOut
はencoding/json 標準ライブラリと互換性のある(≒Marshal, Unmarshalができるの意だと思います)必要があります。
func ()
func () error
func (TIn), error
func () (TOut, error)
func (context.Context) error
func (context.Context, TIn) error
func (context.Context) (TOut, error)
func (context.Context, TIn) (TOut, error)
このとき、ApiGatewayEventであれば TIn
やTOut
があるのもわかりますが、KinesisEventの場合はTIn
は意味がわかるものの、戻り値 TOut
は何にも使われないはずなので、使ったらどうなるのか気になりました。仮にKinesisEventでTOut
を用いるとエラーになるのでしょうか?
結論⇨ KinesisEventでも TOut
はあってもなくても良い。
4の形式でLambdaを作成し起動してみます。TOut
は何でも良いということで、適当にResponseというStructを作成します。main関数では引数なし・Responseの固定値を返します。
type Response struct { |
同じようにKinesisトリガーにし実行すると以下のようなログが出力されました。
特にResponseの内容は出力されませんし、エラーにもなっていませんでした。
2020-03-26T03:52:06.697+09:00 START RequestId: 27bc00f8-d7de-48d1-8c05-1f69c2c3ab07 Version: $LATEST |
ということで、Lambdaの起動トリガーとなるEvent種別とマッチしないような関数シグネチャを使っても問題ないということがわかりました。Responseが後続連携のSNSなどにうまく渡せると面白いかなと思いましたが、それは未検証です(パット見、Responseをどう取得できるか分からなかったため)
個人的な考えですが、LambdaのHandler関数をテストする時に、戻り値があると色々と検証が捗るため、Kinesis Triggerであっても戻り値 TOut
は指定するようにしています。
errorとLogging
これはLambdaに限らないかもですが、LambdaのHandler関数の中で、以下のようにログ出力とerror をreturnするコードがあり、重複してて嫌だなと思いつつ、気持ちを込めてダブルメンテしていました。そのまま errorをreturnするだけでLambdaサービス側でerrorの内容を出力してくれるのですが、 ERROR
といった文字列などカスタマイズしたい場合は2度手間せざるおえなかったです。
↓の例では一箇所ですが、こういったハンドリングが複数あると見落としも怖いと思うこともありました。
if err := Hoge(ctx, hogeInput); err != nil { |
これの対応としてhttpのMiddlewareのような関数を宣言すると良いかもしれません。func (context.Context, TIn) error
パターンで作ってみています。
type lambdaHandlerFunc func(ctx context.Context, ke events.KinesisEvent) error |
上記のようなerrLogという関数を、ロジックが実装された handle
をWrapすると事前・事後の処理をうまくWrapできます。
lambda.Start(errLog(handle)) |
この辺はガンバりすぎると一種のアプリケーションフレームワークのように進化を遂げて、いろいろな功罪を生みそうですが、機能をシンプルに保てる体制の見通しがあれば導入しても良いかなと最近考えています。
return errorした場合の errorString null対応
以下のように任意のerrorをreturnしたときのCloudWatchLogs側のログ出力ですが…
func main() { |
以下のように、 BAD REQUEST
の後に errorString null
というのが出力されます。
問題ないといえば無いですが、 null
といわれると少し気持ち悪い気持ちがありました。
2020-03-26T10:02:58.888+09:00 START RequestId: 8f41435e-5caa-4feb-a1ea-d1f1d6d56811 Version: $LATEST |
この null
の部分ですが、ドキュメントで探せなかったですが、内部のErrorを示すStructが持つフィールドを見たところ正体はStackTraceのようです。
設定の方法は、コードを読んだ限り通常の error を returnする形では設定できないようで(間違えていればご指摘ください)、panicを発生させると設定されるようです。
func main() { |
上記のLambdaを実行すると、以下のようなログが出力されます
2020-03-26T10:15:05.546+09:00 START RequestId: 8f41435e-5caa-4feb-a1ea-d1f1d6d56811 Version: $LATEST |
panicということで予期せぬエラーの場合にはStackTraceを出してくれるのは助かりますね。
アプリケーションとしてpanicでエラーハンドリングすると、少々Lambda関数のUnitTestが難しくなりそうなので、なかなか導入する気にはなれないですが、どうしてもStackTraceを出したい場合などは検討してみても良いかもしれません。
まとめ
- LambdaのGoから見た論理コア数⇨2固定
- Lambdaのコードは初期処理に寄せる
- 関数タイプは開発/テスト観点など好きなものを使って良い
- Lambda関数のパターンは決まっているのでmiddlewareを用意しても良いかも
errorString null
のnull
はStackTrace項目で、通常はnull
が入るで問題なし
サーバレス連載の2本目でした。次は澁川さんのGoでサーバーレス用の検索エンジンwatertowerを作ってみました でした。