はじめに
こんにちは! 2021年入社、TIGメディアユニット所属の武田です。
本記事は「業界ドメインに詳しくなろう」シリーズ連載の「メディア業界へのチャレンジ」第2回目です。前回の新聞業界(メディア業界)基礎編では、新聞業界(メディア業界)の変遷や新聞社の使命についてご紹介しました。
今回はさらに新聞業界に深入りし、新聞社の具体的な編集業務やフューチャーの新聞業界への取組みについてご紹介します。
新聞社の編集業務 ~新聞ができるまで~
まずはじめに、一般的な新聞製作の流れについてご説明します。
新聞社ごとに作業順序や部署の呼び方、業務の割り振りは異なる部分もありますが、基本的にどの新聞社も以下のような工程で紙面を制作しています。
1. 取材
まずは記者による取材です。政治、経済、文化、スポーツ、事件など世の中の様々な出来事を取材します。
記者が日常的に行なっている取材の形は、大きく分けて「会見取材」と「懇談取材」の2種類があります。「会見取材」は、報道陣の要請に応じて、あるいは自発的に、当事者が行なう説明の場であり、録音やカメラ撮影が許されます。記者の出席は基本的に自由で、質疑応答もあります。
もう一方の「懇談取材」は、正式な手続きや形式を踏まない取材を指します。録音や撮影がNGということも多く、メモさえも許されない場合があります。1
その他にも「発生もの」と呼ばれる取材もあります。
例えば、事件や事故の当事者や家族、関係者への取材などがそれにあたります。事件や事故の関係者に、喜んで話してくれる人はいないのが当たり前で、取材先で断られたり、冷たく追い帰されたり、非難されたりすることもしばしば起こります。もちろん、いきなり訪ねる失礼は承知の上で記者も取材をしています。
記者は、関係者の辛さや痛みを察しながらも、その出来事の事実や核心を広く世の中に伝えることで、事件や事故の原因や経緯が明らかになり、それが取材に協力してくれた人々への恩返しになると信じて取材活動を続けています。そんな一生懸命な記者の真意や熱意、誠意が伝わって、徐々に心を開き、取材に協力してくれる人もいます。
2. 記事出稿
記者は取材してきた内容をもとに原稿を作成し、デスクに送ります(送稿・入稿)
デスクは、記者が書いた原稿をチェックしてアレンジしたり、削ったり、加筆したり、書き換えさせたりして、最適な形で記事を紙面に載せるための責任者です。取材の指揮をとるのもデスクの仕事で、誰にどこに取材に向かってもらうかを指示したり、記者が取材した内容に対して「もっとこういう話も聞いてきいてくれ」「こういう写真を追加で撮ってきてほしい」とアドバイスをします。
ちなみに、どこの新聞社でも取材記者としての経験を積んだ後に「デスク」という役職を任されることが多いようです。2
デスクが念入りにチェックをした後は校閲に送ります(出稿)
※自社で作成する記事以外にも、共同通信社や時事通信社などの外部通信社からの入稿もあります。
3. 校閲
情報の正確さを身上とする新聞記事に「間違い」はあってはならぬものです。そこで重要になってくるのが、記事の校閲です。
校閲部門は、各部からあがってくる全ての記事を読み、誤字脱字のチェックや、事実確認を行います。事実確認では、記事と一緒に送られてくる照合資料やインターネットなどを駆使して、触れられている情報は正しいか、固有名詞や日付に誤りはないかなど、調べられるものは全て調べます。校閲と聞くと「誤字・脱字を直す仕事」と思われがちですが、実はこの「事実確認」の部分に時間をかけています。
単純な文字の誤りだけでなくコンテンツの内容にまで踏み込み、徹底した事実確認のもと、著者ですら気づかないような間違い、表現上の矛盾点などを発見し修正しています。3
新聞という商品の品質管理を担うのが校閲部門というわけです。4
4. 編集デスク会議
編集デスク会議では、各部のデスクが集まり、「この記事は重要だから大きく掲載する」「この記事は一面トップに」「この記事は小さく」などと、掲載する記事や、その扱い方を決めます。
面白い原稿があれば、取材記者に依頼して、足りない要素を加えて原稿を膨らませてもらうことや、反対に原稿を短く削ったりすることもあります。5
5. 紙面レイアウト
掲載する記事が決まったら紙面のレイアウト作業(割り付けとも呼ばれる)をしていきます。新聞社によって、整理部の記者が行ったり、面担(経済面、社会面などの面ごとの割り付け担当者)と呼ばれる役職が存在したりします。
どの記事を一番強調するか、記事の価値を評価し見出しや本文を削りながら、位置やサイズを調整していきます。「見出し」は記事にとってとても重要です。おそらくほとんどの方は、見出しを読んで興味を持ったらその記事を読み始めるのではないでしょうか。文字の種類やデザイン、大きさ、文字数などでニュースの価値の大小を知らせるとともに、記事の内容が一目でわかるような見出しを付けます。
10人いれば、10通りの紙面ができるといわれているほど、レイアウトには個性がにじみ出ます。新聞社の特徴を出しつつ、そこに自分の個性を活かしていくために、日々、試行錯誤しています。6
6. 印刷
紙面が完成したら工場にデータを送って印刷していきます。工場にデータが送られると、刷版という印刷の原版が作られます。
印刷には輪転機と呼ばれる高さ10メートルにも及ぶ巨大な機械を使います。新聞の印刷に使われるのは巨大なロールになった巻き取り紙と呼ばれるもので、1本の巻き取り紙をのばすと、約16キロメートルにもなります。輪転機は、印刷はもちろん、裁断、ページ折りまでを自動で行ないます。1秒で25部から50部もの新聞を超高速で刷り上げて新聞の形にしていきます。7
輪転機は、かつて必ず新聞社内に置かれていましたが、通信システムの発達に伴い、外部に印刷機能を移している新聞社も出てきました。
大手新聞各社は印刷工場を別会社化し、その専門性を高めながら、連携する他紙の印刷を行なったり、新聞以外の印刷も受注したりといった専業会社として、独自に発展している例も増えています。
こうして新聞の出来上がりです!
フューチャーの新聞業界への取組み
ここからはフューチャーの新聞業界への取組みについて紹介していきます。
昨今のソーシャルメディアの普及に伴う新聞発行部数の減少を鑑みて、新聞社は新聞販売を主軸とした従来のビジネスモデルから、デジタルビジネスへのシフトが急務とされています。そこで大事になるのが、紙やデジタルといった媒体別の対策ではなく読者にとって読みやすいコンテンツをタイムリーに届けることに主眼を置いた「コンテンツファースト」の実現です。そのためには、紙の締切時刻や紙面割の管理を超えた新たな発想への転換が必須でした。それを支えるためのコンテンツ管理システムが「GlyphFeeds」です。
「コンテンツファースト」を支えるGlyphFeeds
GlyphFeedsは、フューチャーが開発したメディア業界向けのコンテンツマネジメントシステムを中核に持つクラウドサービスです。
全てのコンテンツを集約して管理するデータベースを搭載しており、記者が取材して書く記事やカメラマンが撮影した写真などを一括管理できます。
また、編集業務ワークフローを搭載していて、原稿の作成から編集まで、多様な編集業務をGlyphFeedsの画面1つで行うことができ、記者、デスク、校閲、整理、デジタル担当者などの全アクターによる統合編集が可能な上、PCやタブレットなどの端末と通信環境さえあれば、どこからでも行えます。従来は、媒体毎に「個別編集」を行っており、修正反映が大変でしたが、「統合編集」では、同一素材を派生させて利用しており、一括で修正反映が可能です。
コンテンツを適切なタイミングで新聞紙面やデジタルサイト・ニュースアプリ等に届けることで、コンテンツの価値を最大化できます。
GlyphFeedsは新聞社に不可欠な「可用性」にも強みを持ちます。クラウド基盤を利用し世界レベルでの冗長構成をとっているため、仮に日本で大きな災害が起きたときでも取材・報道活動を継続できます。どんな災害時でもニュースを届けなくてはならない使命を持つ新聞社にとって、非常に大きな意味を持ちます。
コンテンツの価値を再定義する
また、GlyphFeedsには一般公開用のコンテンツ活用APIも搭載しており、既存媒体向けの掲載編集に加えて、コンテンツを活用した新規サービス創出にも寄与します。
日刊工業新聞社プロジェクトでは、コンテンツを活用した新規サービスとして、1つ1つの記事や画像を商品として売り出すECサイトを構築しました。これにより、紙面などに掲載されなかったコンテンツにも価値を見出すことができるようになりました。
まだまだGlyphFeedsの魅力は伝えきれませんが、過去にもGlyphFeedsについて紹介された記事がございますので、ぜひこちらも御覧ください。
私たちで未来を創造する
2022年から始まった読売新聞社プロジェクトでは、単なるGlyphFeeds導入だけではなく、新たな業務領域にも踏み込み、新聞社各社が利用できる業界標準のプラットフォーム構築に取り組んでいます。
マルチベンダーで複雑化したシステムの集約による維持管理コストの低減や、業務フローの効率化で取材記者や編集記者の作業負担を軽減する働き方改革など、新聞業界全体の課題解決を目指します。
さらに、今後はGX(グリーントランスフォーメーション)も視野に入れ、環境へのアプローチも積極的に行っていきます。
今後のGlyphFeedsの成長にぜひご期待ください!
さいごに
新聞社の編集業務、そしてフューチャーの新聞業界への取り組みについて紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
少しでも新聞業界、GlyphFeedsに興味を持っていただけたら幸いです!
次回からは2回に渡り、新聞社のビジネスモデルの現状とこれからについて紹介する予定です。
新聞社の未来はどうなっていくのか・・・新聞業界のDXに携わるフューチャーの視点で新聞社の未来について考察していきます。
お楽しみに!
アイキャッチ画像は AbsolutVision on Unsplash を利用させていただきました。
- 1.メディアポ「新聞記者の仕事 いろいろな取材のかたち」:https://www.homemate-research-newspaper-office.com/useful/12659_facil_062/ ↩
- 2.メディアポ「新聞記者のステップアップ「デスクから支局長」」:https://www.homemate-research-newspaper-office.com/useful/12670_facil_073/ ↩
- 3.毎日ことば「新聞校閲は時間との闘い」:https://mainichi-kotoba.jp/blog-20181020 ↩
- 4.メディアポ「新聞紙面の校閲」:https://www.homemate-research-newspaper-office.com/useful/12683_facil_086/ ↩
- 5.メディアポ「掲載する新聞記事は編集デスク会議で決定」:https://www.homemate-research-newspaper-office.com/useful/12677_facil_080/ ↩
- 6.メディアポ「新聞紙面のレイアウト作業」:https://www.homemate-research-newspaper-office.com/useful/12680_facil_083/ ↩
- 7.メディアポ「新聞の印刷から搬送」:https://www.homemate-research-newspaper-office.com/useful/12684_facil_087/ ↩