第21回言語処理若手シンポジウム (YANS2026) 参加報告

参加レポート NLP 論文紹介 YANS
目次

はじめに

はじめまして。フューチャー株式会社 AI戦略推進グループ(AIXG)の境田と申します。2025年4月に入社し、自然言語処理(NLP)に関わる業務に携わっています。

2026年8月16日 (日) から18日 (火) にかけて、仙台国際センターで開催された第21回言語処理若手シンポジウム (YANS2026) に、当社はプラチナスポンサーとして協賛しました。NLPチームのメンバーが現地参加し、スポンサーセッションでの会社紹介や企業ブースの出展、ランチ懇親会の開催に取り組みました。

本記事では、シンポジウムの様子と、当社が贈呈したスポンサー賞、そして注目した発表についてご報告します。

なお、昨年のYANS2025の参加報告は 第20回言語処理若手シンポジウム (YANS2025) 参加報告 にまとめています。あわせてご覧ください。

言語処理若手シンポジウム (YANS) とは

YANS (NLP若手の会) は、自然言語処理・計算言語学およびその関連分野において、若手研究者・技術者の研究開発を促進し、参加者の相互交流と成長の場を提供することを目的として、年に1度開催されているシンポジウムです。

今年のテーマは 「若手のその先へ」。自然言語処理研究の歩みと、それを支える研究者・技術者の中長期的なキャリアについて理解を深める場、というコンセプトが掲げられていました。プログラムに並んでいたチュートリアルや特別企画セッションにも、このテーマが色濃く反映されていたように感じます。

直近3年の推移は次のとおりです。

開催年 参加者数 発表件数 スポンサー団体数
2024 411名 196件 24団体
2025 570名 257件 28団体
2026 571名 248件 37団体

参加者数・発表件数は昨年と同水準ですが、スポンサー団体数は28から37へと大きく増えています。自然言語処理に取り組む企業が増え、若手との接点を求める動きが強まっていることが、数字にも表れているように思います。

3日間のプログラムは以下の構成でした。

  • 1日目 (8/16) ハッカソン
  • 2日目 (8/17) オープニング / チュートリアル(1) / ポスターセッション(1)(2)(3) / スポンサーセッション / ナイトセッション
  • 3日目 (8/18) ハッカソン報告会 / ポスターセッション(4)(5) / チュートリアル(2) / 招待ポスター / 特別企画セッション / クロージング

スポンサー参加

フューチャーはプラチナスポンサーとして参加し、スポンサーセッションで発表するとともに、スポンサーブースで会社を紹介しました。ブースにお越しいただいた方には、生成AI基盤モデルの開発やLLMの業務適用といった当社のNLPやAI関連の取り組みをご紹介しました。

ノベルティには当社のロゴ入りのポーチやエコバッグをご用意しました。立ち寄ってくださった方の中には、すでに当社の社名や事業内容をご存じの方も多く、認知が着実に広がっていることを実感しました。改めてブースに足を運んでくださった皆様に感謝申し上げます。

ランチ懇親会

3日目の8月18日 (火) のお昼に、学会会場近くの施設をお借りしてランチ懇親会を開催しました。

当日はAIXGのメンバーによるライトニングトーク2本と、座談会を行いました。

  1. 実用化へ繋がったコンテンツ編集特化LLMの研究開発プロジェクトについて 〜企業で研究と社会実装の両輪を回す働き方のリアル〜
    メディア業界のコンテンツ編集業務に特化したLLMの研究開発プロジェクトを例に、初期検討から論文化、実用化に至るまでの軌跡を紹介しました。実際のプロジェクトならではの難しさと、そこから学術的な価値を生み出す面白さの両面をお話ししました。
  2. 研究と社会実装のあいだ:ITコンサルタントが歩むグラデーション・キャリア
    「進学か就職か」「研究かビジネスか」は二元論で語られがちですが、どちらかを選んだらもう一方を諦めなければならないわけではありません。ビジネスの前線で顧客課題に向き合う中での心境の変化を経て、社会人博士という挑戦に至るまでの過程をお話ししました。

参加者は学部生から博士課程の方まで幅広く、終了予定の時刻を過ぎても当社社員と熱心に話し込んでいる学生の方もいらっしゃいました。

開催後のアンケートでは、回答者全員から「満足」以上の評価をいただき、その大半が「大変満足」でした。印象に残った点として最も多く挙がったのは社会人博士に関する話題で、博士課程に進んでも企業でキャリアを築く選択肢があると分かった、研究と業務の関係性を具体的に聞けた、といった声をいただいています。

大会テーマが「若手のその先へ」でしたので、企業で研究を続けるという選択肢について、実際にその道を歩んでいるメンバーから直接お話しできる場になったのではないかと思っています。

スポンサー賞と注目した発表

当社は今年もスポンサー賞を1件贈呈しました。あわせて、選考の候補に挙がった発表を1件紹介します。

[S5-P31] LLM-as-a-Judgeにおける絶対評価と相対評価の整合性はスコア帯でどのように変わるか?(スポンサー賞)

山下 伊織、木山 朔、伊藤 大陽、小町 守(一橋大学)

この研究では、LLMに品質評価をさせる際の「1件ずつ点数を付ける絶対評価」と「2件を並べて選ばせる相対評価」の評価結果の食い違いに着目し、その発生率や要因がスコア帯によってどのように変わるのかを分析しています。評価形式によって結論が逆転すること自体は知られていますが、この研究では複数のLLMとタスクで検証し、逆転の要因について、スコア帯に応じて傾向の違いがあることや、スコア帯横断的な要因とLLM・タスクにも影響される局所的な要因に分けられることを報告しています。

選定理由は以下の通りです。

本研究は、LLM-as-a-Judgeの絶対・相対評価の不整合をスコア帯ごとに分析し、その要因を広く影響するものと局所的なものとに切り分けて示しました。当社でも業種の異なる多様な顧客向けの開発において、既存の自動評価指標では捉えきれない品質の評価にLLM-as-a-Judgeを用いる機会があり、スコアの解釈は運用上の重要な課題です。実務に直結する指針を与えた研究として、スポンサー賞に選定いたしました。

副賞として、開催地にちなんで牛タンの食べ比べセットを贈呈しました。

[S2-P30] Activation Steeringにおける文章崩壊の抑制に向けた初期検討

西山 天、川田 拓朗、北田 俊輔、永井 大地、彌冨 仁(法政大学)

この研究では、LLMの内部状態にベクトルを足し込んで出力を制御するActivation Steeringについて、生成される文章の崩壊を抑える手法を検討しています。

従来手法は1トークンを出力するたびに同じ強さでベクトルを足すため、目的の概念以外の表現にまで影響が及んでしまったり、介入が不要な箇所にまで作用し、無用な反復や意味の破綻した文章を招いてしまいます。この研究では、介入する位置と強度をトークンごとに決める機構と、元の内部状態を極力保ったまま、目的の概念へ変換する機構を組み合わせた手法を提案しており、2つの機構の適用順を誤ると出力が崩壊することも報告されていました。介入の「どこに・どれだけ」と「どう」を分けて整理した枠組みが明快で、参考になる発表だと感じました。

さいごに

YANS2026では、スポンサーセッション、ブース、ランチ懇親会を通じて、多くの学生・若手研究者の皆様とお話しできました。ご来場いただいた皆様、そして運営に携わられた委員の皆様に、この場を借りて御礼申し上げます。

今回紹介した2件は、いずれもLLMを実務で運用する際に壁となる「評価」や「制御」の課題を扱った発表でした。実務でLLMを組み込む際は、出力の良し悪しを測る仕組み自体が信頼できるか、意図した制御が思わぬ副作用を生んでいないかといった点が見落とされやすいと感じます。

発表全体のトピックを見ても、「NLPモデルの評価・安全性・信頼性」に分類される発表が非常に多く見られました。LLMの活用が広がったからこそ、いかに評価し、いかに制御するかへの関心が高まっているのだろうと感じました。

AIXGでは一緒に働く仲間を募集しています!NLPエンジニア/リサーチャーAIアーキテクト/コンサルタントAIエージェント開発者といったポジションがありますので、ピンときた方はぜひ覗いてみてください。

博士課程の方向けのResearch Internや研究アルバイトも通年で受け付けています。新卒採用キャリア採用も幅広く行っていますので、まずは話を聞いてみたいという方も歓迎です。

来年のYANSでもまたお会いできればうれしいです。一緒に働きましょう!

参考